Ici-bas Op.8 Trois mélodies |
この世では 3つのメロディ |
Ici-bas tous les lilas meurent, Tous les chants des oiseaux sont courts, Je rêve aux étés qui demeurent Toujours! Ici-bas les lèvres effleurent Sans rien laisser de leur velours, Je rêve aux baisers qui demeurent Toujours! Ici-bas,tous les hommes pleurent Leurs amitiés ou leurs amours; Je rêve aux couples qui demeurent Toujours! |
この世では、すべてのリラの花もやがて枯れ 鳥たちの歌声もつかの間だ 私は夢見ている いつまでも続く夏を この世では、やさしく触れ合う唇も そのつややかさを失わずにいることはできない 私は夢見ている いつまでも続くくちづけを この世では、すべての人は涙を流す 友情や愛に対してさえも 私は夢見ている いつまでも続くふたりを |
フォーレの歌曲の中でも、シュリュ=プリュドムの詩につけた歌曲は何というか透き通った詩情に溢れて特異な魅力を持ったものが多いように思えます。この曲と「河のほとりで」、そして「ゆりかご」という初期〜中期の3曲がありますがいずれも静かな悲しみをたたえた中にほんのりと憧れを漂わせるところが何ともいえず素敵です。詩人はノーベル文学賞を取ったこともあるフランス高踏派詩人の大物なのだそうですが、フランス本国ではどうか知りませんけれども少なくとも日本では今やフォーレを初めとするフランス歌曲の中でしかその名を見ることはなくなってしまいました。ノーベル文学賞といっても所詮その程度のもの、というよりもどんなに高く評価されたものでもあっさり忘れ去られてしまうという時の流れの無常を表しているのでしょう。そんな背景を知ってこの詩を見ると何とも感慨深いものがありませんでしょうか。
ここでは、永遠に続く愛を、そして幸せを夢見ています。もちろんそんなことははかない夢に過ぎないことは分かっていても詩人は歌わずにはいられないのでしょう。初めの2節は静かにつぶやかれる祈りのような言葉ですが、最後の永遠の愛と友情への希求は力強く、燃え立つように歌われています。
こんな歌はジェラール・スゼーの独壇場といってもいいくらい彼の歌声はハマっています。といってもEMIの歌曲全集CDでの彼の録音以外にはこの歌をほとんど耳にできていないのですけれども...
( 2006.09.08 藤井宏行 )