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Lungi    
 
はるかに  
    

詩: カルドゥッチ (Giosuè Carducci,1835-1907) イタリア
      Auf Flügeln des Gesanges 原詩: Heinrich Heine ハイネ,Buch der Lieder - Die Heimkehr(歌の本〜帰郷)

曲: トスティ (Francesco Paolo Tosti,1846-1916) イタリア   歌詞言語: イタリア語


Lungi,lungi su l'ali del canto
Di qui lungi recare io ti vo':
Là,nei campi fioriti del santo
Gange,un luogo bellissimo io so.

Ivi rosso un giardino risplende
Della luna nel cheto chiaror:
Ivi il fiore del loto ti attende,
O soave sorella dei fior.

Le vïole bisbiglian vezzose,
Guardan gli astri su alto passar;
E fra loro si chinan le rose
Odorose novelle a contar.

Oh che sensi d'amore e di calma
Beveremo nell'aure colà!
Sogneremo,seduti a una palma,
Lunghi sogni di felicità.

はるか、はるかに、歌の翼に乗って
ここからはるかに、きみを連れて行こう
そこは聖なるガンジスの花咲く野原
ぼくの知っているとても美しい場所だよ

赤く輝いている庭は
月の光に照らされている
蓮の花たちはきみを待っている
おお、花の可愛い妹であるきみを

スミレの花はうなづき合い
頭上の星を見上げている
そしてスミレの間ではバラの花が頭を垂れて
香り高い知らせを伝えてくれる

おお、どれほどの静かな愛の思いを
この空気の中で吸い込めるのだろう
夢みよう、椰子の木の下に座って
長い長い、幸せの夢を


メンデルスゾーンの美しいメロディで知られたハイネの詩「歌の翼」には、G.カルドゥッチ(1835-1907)によるイタリア語訳につけた、これまた美しいメロディのトスティの作品があります。
こちらはイタリア語の詩よりイメージを膨らませて訳してみました。もっともあまりドイツ語の原詩と違ってはいないようです。ただ松本美和子さんのトスティ歌曲集大成でしかまだ私は聴く機会を得てはいませんが、ここではガゼル(カモシカ)が出てくる第4節は歌われていませんでした。
Emily EzustのLied and Song Textsのページではカルドゥッチの訳した全5節が載せられていますが、歌のスタイルは1-2節と3-5節をそれぞれひとつの組とした有節歌曲に近いつくりなので、第4節はトスティが曲を書く際に削除し、作曲の段階でこの4連にされたのだと思います。

ベルリーニの歌曲を思わせるような端整なたたずまいが魅力的なこの曲、メンデルスゾーンの曲とも遜色ない(比べること自体が無意味ですが)名歌曲だと思います。トスティには魅力的な歌曲があまりにたくさんありすぎてこの曲もどうしても目立たなくなってしまいがちですが、松本さんの集大成で聴くと他の有名曲とできばえに決して差があるわけではありません。そんな知られざる佳曲のひとつとして取り上げることにしました。イタリア歌曲とハイネの詩というのもちょくちょく見かけるのですが、とりわけここではトスティとハイネのコンビネーションというところに興味を惹かれます。

( 2006.07.27 藤井宏行 )


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