Nuit d'étoiles L 4 |
星の輝く夜 |
Nuit d'étoiles, sous tes voiles, sous ta brise et tes parfums, Triste lyre qui soupire, je rêve aux amours défunts. La sereine mélancolie vient éclore au fond de mon coeur, Et j'entends l'âme de ma mie Tressaillir dans le bois rêveur. Nuit d'étoiles, sous tes voiles, sous ta brise et tes parfums, Triste lyre qui soupire, je rêve aux amours défunts. Je revois à notre fontaine tes regards bleus comme les cieux; Cettes rose,c'est ton haleine, Et ces étoiles sont tes yeux. Nuit d'étoiles, sous tes voiles, sous ta brise et tes parfums, Triste lyre qui soupire, je rêve aux amours défunts. |
星の輝く夜 この空のヴェールの下で このそよ風と香りの下で 悲しい竪琴が 溜息をついている 私は過ぎ去った恋を夢に見る 透き通った憂鬱が 心の奥底に花を咲かせ 私には聴こえる、愛する人の魂が 夢の森の中で震えているのが 星の輝く夜 この空のヴェールの下で このそよ風と香りの下で 悲しい竪琴が 溜息をついている 私は過ぎ去った恋を夢に見る 2人の噴水の前で私は思い出す お前の瞳が大空のように青いことを このバラがお前の吐息であることを そしてこの星たちがお前の瞳であることを 星の輝く夜 この空のヴェールの下で このそよ風と香りの下で 悲しい竪琴が 溜息をついている 私は過ぎ去った恋を夢に見る |
ロマンティックで溜息が出るほど美しいのがドビュッシー最初期の歌曲の特質ですが、この曲もなんと表現したら良いのでしょう。星空の下で過ぎ去った昔の恋を思い出している情景が、優しくも美しいメロディで描写されます。
ドビュッシーはこの曲をわずか18歳のときに書きました。若い頃にはまってたくさんの歌曲を書いた詩人、テオドール・バンヴィルの詩が、また彼の初期の音楽のスタイルに見事にはまっています。
彼の作品は通俗一歩手前のきわどさが魅力、と以前私は書いたことがありますが、この曲はそれを踏み越えて完全に通俗の世界に浸りこんでいるように感じます。間違いなくポピュラーソングとしてリメイクしても売れることでしょう。
詩もそんなに深遠なものではなく、ある意味クサい表現に満ちていますので本当にポピュラーソングのよう。
(転調が多いので下手な人には歌えないのでしょうけれども)
ですからあんまり「おクラシック」のスタイルでやらない方が味があるかも知れません。
彼のほとんど最初の歌曲作品とも言えるためか聴ける録音はあまり多くはないようです。中で特筆すべきはVirginレーベルより出ているソプラノのヴェロニク・ジャンスのフランス歌曲集(Virgin)、そのCDのタイトルになっているがこの「星の輝く夜(星月夜)」。さすがタイトルに選ばれるだけのことはあります。
実に素晴らしい。もともとバロック歌手としてならした人ですのであんまり濃密なヴェルカントにしていないのがこの場合良いのでしょう。
全集にあるアメリンクの歌(EMI)は悪くはないのですが、彼女の歌っている他の曲に比べるとインパクトが薄いように思えました。
全集の冒頭を飾っているので、初めて聴いたときは大変なインパクトだったはずなのですけれど...私はドビュッシーの歌曲自体、このEMIの全集が初体験というかなりとんでもない聴き始め方をしていますので、けっこうこの全集は印象深いです。今回ドビュッシーを改めてまとめて聴く中再聴して、また色々と新たな発見をしています。
あとはネットで見つけたこの曲の興味深い演者としてはクリスティーネ・エルツェがいます(Berlin Clasics)。
まだ聴いてはいないのですが、現代ものの歌唱では素晴らしい味のある人。けっこう良さそうです。
でもめぼしい録音はそんなものでしょうか。いい曲なんですけれど...
( 2006.07.24 藤井宏行 )