Schöne Wiege meiner Leiden Op.24-5 Liederkreis |
わが苦悩の美しいゆりかご リーダークライス |
Schöne Wiege meiner Leiden, Schönes Grabmal meiner Ruh', Schöne Stadt,wir müssen scheiden,- Lebe wohl! ruf' ich dir zu. Lebe wohl,du heil'ge Schwelle, Wo da wandelt Liebchen traut; Lebe wohl! du heil'ge Stelle, Wo ich sie zuerst geschaut. Hätt' ich dich doch nie gesehen, Schöne Herzenskönigin! Nimmer wär' es dann geschehen, Daß ich jetzt so elend bin. Nie wollt' ich dein Herze rühren, Liebe hab' ich nie erfleht; Nur ein stilles Leben führen Wollt' ich,wo dein Odem weht. Doch du drängst mich selbst von hinnen, Bittre Worte spricht dein Mund; Wahnsinn wühlt in meinen Sinnen, Und mein Herz ist krank und wund. Und die Glieder matt und träge Schlepp' ich fort am Wanderstab, Bis mein müdes Haupt ich lege Ferne in ein kühles Grab. |
わが苦悩の美しいゆりかご、 わがやすらぎの美しい墓標、 美しい町よ、私たちはお別れしなければならない。 さらば!と私はおまえに叫ぶのだ。 さらば、聖なる敷居よ、 そこはいとしい恋人が歩いたところ。 さらば!聖なる場所よ、 そこは彼女をはじめて見たところ。 きみに会わなければよかったよ、 美しいいとしの女王様! そうすれば 今みたいにこんなにみじめにはならなかっただろうに。 きみの心を動かそうとは思わなかったし、 愛を得ようと願ったりもしなかった。 ただ静かな生活をしたかっただけなのだ、 きみの息吹が吹き渡るところで。 だが、きみは私自身をここから追いやり、 きみの口はきつい言葉を語る。 狂気が私の意識をかきむしり、 それで私の心は病み、傷つくのだ。 そして全身はぐったり弱り、だれて、 杖をつきながら引きずり歩く、 私の疲れた頭を かなたの冷たい墓の中に置くときまで。 |
Bewegt(動きをもって)、4分の3拍子、ホ長調。
いとしい恋人から罵詈雑言を浴び、恋に破れて傷心のまま呆然と町を去ろうとする男の歌である。恋人とはじめて会った場所や歩いた場所を回想しながら未練たっぷりに「きみに会わなければよかった」と訴える。恋を失った主人公にとって生(ゆりかご)は苦悩であり、死(墓)はやすらぎなのである。詩はほとんど他の人に公開するつもりもなく書き綴った日記のように赤裸々で、その感傷的な内容は目を覆いたくもなるが、あえてみじめな部分をさらけだすことがハイネの意図なのだろう。
ゆりかごの動きを模したかのような揺れるピアノの音型に乗り、歌声部は美しい旋律を歌う。第5節後半で狂気が詩人を苦しめるくだりではピアノパートが右手と左手をずらした音型によってメロドラマチックで感傷的な響きを聞かせるが、この狂気のあまり頭の中がくるくる回っているかのようなおおげさな表現はハイネの詩の自虐的な持ち味と見事なまでに一致しているように思える。第6節の後に再度第1節を繰り返し、町に別れを告げて曲を締めくくる。この曲の中で、ゆっくりした速度を指定する時にシューマンはいつものリタルダンドのほかにAdagioを2箇所(”ferne in ein kühles Grab”と、曲の最後の”Lebe wohl!”)使用し、詩に則したテンポの細かい変化を与えている。
( 2006.07.15 フランツ・ペーター )