Es treibt mich hin,es treibt mich her Op.24-2 Liederkreis |
私をあちこちせき立てる リーダークライス |
Es treibt mich hin,es treibt mich her! Noch wenige Stunden,dann soll ich sie schauen, Sie selber,die schönste der schönen Jungfrauen; - Du armes Herz,was pochst du schwer! Die Stunden sind aber ein faules Volk! Schleppen sich behaglich träge, Schleichen gähnend ihre Wege; - Tummle dich,du faules Volk! Tobende Eile mich treibend erfaßt! Aber wohl niemals liebten die Horen; - Heimlich im grausamen Bunde verschworen, Spotten sie tückisch der Liebenden Hast. |
私をあちこちせき立てる! あと少し経てば彼女に会えるのだ、 彼女はきれいな女の子たちの中でも最高に美しい。 かわいそうな心臓よ、なにをドキドキしているのだ! “時”というやつはなんと怠け者なんだ! のんびりとろとろ進むのがやっと、 あくびをしながらのろのろ道を歩く。 急ぐのだ、この怠け者が! 荒れ狂うほど急ぐ気持ちが私をせき立てながら捕らえる! 女神ホーラーたちは一度も恋をしたことがないのだろうよ、 ひそかに残酷な結託を交わして 恋する男のあわてぶりを陰湿にあざ笑っているのだから。 |
Sehr rasch(非常に速く)、8分の3拍子、ロ短調。
とうとう彼女と会うことになり、その時間がなかなか来ないことにいらだつという内容である。最終節ではいらだつ自分を客観視してみじめさを自嘲し、いかにもハイネらしい。
切迫したピアノに乗り、歌は速いテンポでいらだちをまくしたてる。彼女の姿が思い浮かぶ第1節半ばで甘い空想の響きが聴かれる(「よりゆっくりと(langsamer)」と指示されている)以外はひたすらいらだちと自嘲に徹しているのはハイネの詩への適切な読みだろう。第2節で歌声の上行音型のあとをピアノが遅れて追いかける箇所など、のろのろ進む”時”の先を行く主人公のはやる気持ちを見事にあらわしているように思う。ピアノ後奏の前のめりのリズムは哀感を漂わせている。下は嬰イ音から上はト音までほぼ2オクターヴの広い音域を速いテンポで行き来するので歌い手は大変だろう(もちろんピアニストもいそがしいが)。
なお、第3節第2行のホーラーたち(Horen)はギリシャ神話でゼウスとテミスの間に生まれた3姉妹。秩序と季節の女神たちである。
( 2006.07.15 フランツ・ペーター )