Morgens steh' ich auf und frage Op.24-1 Liederkreis |
朝起きると自問する リーダークライス |
Morgens steh' ich auf und frage: Kommt feins Liebchen heut? Abends sink' ich hin und klage: Aus blieb sie auch heut. In der Nacht mit meinem Kummer Lieg' ich schlaflos,wach; Träumend,wie im halben Schlummer, Wandle ich bei Tag. |
朝起きると自問する、 すてきな恋人は今日こそ来るだろうか。 夕方私は崩れ落ちて嘆く、 彼女は今日も来なかった。 夜中は苦しみのあまり 眠ることもなく、目は冴えたまま。 夢見心地で、半ば眠っているかのごとく、 昼間はふらふら歩くのだ。 |
シューマン(Robert Alexander Schumann : 1810. 6. 8-1856. 7. 29)の9曲からなる「リーダークライス(Liederkreis)」Op. 24は、ハインリヒ・ハイネ(Heinrich Heine)の詩集「歌の本」(Buch der Lieder)の中の「若き悩み(Junge Leiden)」というタイトルのもとでさらに「リート(Lieder)」という見出しの付いた9編の詩に、ハイネのオリジナルの順番通りに作曲されたシューマン最初の歌曲集である。いわゆる歌の年として知られるシューマンが突然歌曲創作に集中した1840年の作品で、2月24日(29歳)に完成した。
・シュライアーPeter Schreier(T)&シェトラーNorman Shetler(P):1972年1月:BERLIN Classics:声の清冽さ、語りのうまさ、自嘲的、皮肉な表現のうまさでシュライアーは最もこの歌曲集にふさわしい歌手に思える。シェトラーも細部まで目の行き届いた説得力のある演奏を聞かせている。
・F=ディースカウDietrich F-Dieskau(BR)&クルストHertha Klust(P):1956年9月:EMI CLASSICS:ハイネの毒を表現するのに演技派F=ディースカウはうってつけである。後にデームスやエッシェンバッハと組んだ、より完成度の高い演奏があるものの、この歌曲集に特に必要と思われる青臭いほどの若さ、奔放さが最も自然に出ている1回目の歌は、クルストの洗練されすぎない、まっすぐなピアノとともに魅力的である。
・ベーアOlaf Bär(BR)&パーソンズGeoffrey Parsons(P):1989年9月:EMI CLASSICS:ポルタメント(ずらして次の音になめらかに移る)が多いが、シューマンの表現には問題ない。ベーアの若々しい表現はこの曲集によく合う。パーソンズの熟練の演奏はシューマンの絡み合う音の世界を素晴らしく表現している。
・珍しいところで、スゼーGérard Souzay(BR)&ボールドウィンDalton Baldwin(P)の若かりし頃の演奏(1956年4月:TESTAMENT)は、流麗な歌声がハイネのひねくれた世界を描く意外性があり、なかなか良かった。
第1曲について
Allegretto、4分の2拍子、ニ長調。
朝起きると今日こそは彼女が来るのではと期待に胸ふくらませるが、寝る前には結局来なかった彼女を思い、恋の悩みに苦しむという内容である。
ピアノ左手と右手が交互に打つ音は、恋人を待つ心のときめきであり、後半ではふらふらした歩みの描写でもあるのだろう。歌声部は簡素で民謡風ながら詩の展開を見事に反映させ、第2節第3行のアーチ状の音型など、半ばまどろんでいる様をうまく表現している。第1節最後の「今日も(auch heut)」は繰り返され、さらにリタルダンドで強調され、うじうじ思い悩む様子が浮かんでくる。
( 2006.07.15 フランツ・ペーター )