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AKHMATOVOY   Op.143-6  
  Shest’ stikhotvorenii Marini Tsvetaevoj
アフマートワに  
     マリーナ・ツヴェターエワの詩による6つの歌曲

詩: ツヴェターエワ (Marina Ivanovna Tsvetaeva,1892-1941) ロシア
    Ахматовой  Анне Ахматовой (1916)

曲: ショスタコーヴィチ (Dimitry Shostakovich,1906-1975) ロシア   歌詞言語: ロシア語


O,Muza placha,prekrasnejshaja iz muz!
O ty,shal’noe ischadie nochi beloj!
Ty chernuju nasylaesh’ metel’ na Rus’,
I vopli tvoi vonzajutsja v nas,kak strely.

I my sharakhaemsja i glukhoe: okh! --
Stotysjachnoe -- tebe prisjagaet: Anna
Akhmatova! Eto imja -- ogromnyj vzdokh,
I v glub’ on padaet,kotoraja bezymjanna.

My koronovany tem,chto odnu s toboj
My zemlju topchem,chto nebo nad nami-to zhe!
I tot,kto ranen smertel’noj tvoej sud’boj,
Uzhe bessmertnym na smertnoe skhodit lozhe.

V pevuchem grade moem kupola gorjat,
I Spasa svetlogo slavit slepets brodjachij...
I ja darju tebe svoj kolokol’nyj grad,
-- Akhmatova! -- i serdtse svoe v pridachu.

おお、涙を流すミューズよ、ミューズたちの中で一番すぐれたもの!
おお、あなた、白夜の中の気のふれた子よ
あなたはロシアに黒い雪嵐を送る
そしてあなたの叫びは私たちに突き刺さる、矢のように

そして私たちは投げ出される、静寂の中に、おお!
10万回も誓おう、アンナ
アフマートワ!この名は-巨大な溜息
それは深みに落ちていく、名前のない深みに

私たちは冠を戴いたのだ、あなたと同じ冠
この大地を踏み、同じ空を頭上に戴いている-そのことで
そしてあなたの死すべき定めに傷つけられたものは
死の床にあってももう既に不滅なのだ

メロディに満ちた私の歓呼に聖堂の屋根は燃え上がり
光り輝く救世主を盲人たちは讃える
そして私はこの鐘の響く街をあなたに捧げよう
-アフマートワ!-この心も一緒に


アンナ・アフマートワ(1889-1966)もツヴェターエワと同世代のソヴィエトの女性詩人、彼女は亡命したツヴェターエワと異なりずっとソヴィエトに留まりましたが、スターリン時代には体制の攻撃にさらされてほとんど沈黙を余儀なくされていたといいます。
その抑圧がどれくらい悲惨なものであったかについては、あのヴォルコフの「ショスタコーヴィチの証言」(中央公論)に本当に痛々しい描写がありますので読んでみてください。
彼女の詩にはプロコフィエフが大変見事な曲を付けている歌曲集がありますけれども、残念ながらこちらはまだ詩人の著作権が生きていますので幣サイトでは歌詞の紹介はできそうにありません。またショスタコーヴィチとも付き合いはあったようですが、彼には彼女の詩に付けた作品はないようです。
ツヴェターエワのこの詩は1916年の作だといいますから、まだアフマートワも20代半ば、気鋭の若手詩人として気を吐いていたころに彼女に贈った詩なのでしょうか。詩の長さは他の5つとそれほど変わらないのですが、音楽の方は6分以上演奏にかかる大曲になっていてこの歌曲集の3分の1以上を占めます。
詩の・芸術の不滅といえばショスタコーヴィチも好んでよく取り上げたテーマです。政治に翻弄され、不幸な生涯を送ったソヴィエトの2人の女性詩人、彼女たちをきちんと記憶に留めて置こうとこのような歌曲集の1曲をそれに当て、しかも大変に重たいメロディをつけたショスタコーヴィチの心意気はこの歌を聴き込むほどに痛いほど感じられ、そしてそれはショスタコーヴィチの歌曲群が忘れ去られさえしなければ(むちゃむちゃファンの多い管弦楽作品群に比べると不当なほどに黙殺されているように私には思えますが...)きっと後世に残るのだと思います。
とはいえ...難しい詩です。ほめたたえているのは何となく分かるのですが、誉め方が普通でない。なんだか破滅型の芸術家の破滅的なところを強調して「だから凄いんです」っていうような感じなのでしょうか。意味はよく分からないんですが、詩を読んでいて喚起されるイメージはけっこう鋭いものがあるような気がします。私のへなちょこ訳では喚起されないとは思いますけれども...

( 2006.07.15 藤井宏行 )


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