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Trübes Lied    
  Japanischer Frühling
重苦しい歌  
     歌曲集「日本の春」

詩: ベートゲ (Hans Bethge,1876-1946) ドイツ
    Japanischer Frühling 11 Trübes Lied (OZI (663-687)) 原詩:万葉集 ,

曲: ベン=ハイム (Paul Ben-Haim,1897-1985) ドイツ→イスラエル   歌詞言語: ドイツ語


Die Blüten rieseln nieder.
Dichter Nebel Verbirgt den See.
Die wilden Gänse rufen Erschreckt
am heiligen Teich von Iware.

Düstere Träume schatten um mein Haupt.
Mein Herz ist schwer.
Wenn übers Jahr die Gänse Von neuem rufen,
hör ich sie nicht mehr.

木の葉は舞い散り
濃い霧が湖を覆っている
野生の鴨は驚いたように鳴いている
この聖なる磐余(いわれ)の池に

陰鬱な夢が我が頭を翳らせ
我が胸は重い
一年の後、再び鴨の鳴き声が響こうとも
もはや私は聞くことはないのだ


第2曲目は天武天皇の第3皇子、大津の皇子の歌です。彼はわずか24歳で謀反の疑いをかけられ、死を命じられたと歴史にありますが(686年)、その辞世の歌といわれているのがこの和歌です。ベートゲがこの詩に付けたタイトルがこのベン-ハイムも使っているTrübes Lied。これは直訳すると「重苦しい歌」にでもなるでしょうか。

   ももづたふ 磐余の池に鳴く鴨を今日のみ見てや雲隠りなむ

これだけの長さの歌をベートゲはなんと膨らませているんでしょうか。磐余(いわれ)という固有名詞がなかったら絶対に元歌は特定できそうもない脚色の仕方です。ちなみにこの詩、万葉集の巻3、416番目の歌ですが、当人の作った歌ではなくのちに誰かの手によって作られた歌という説もあるようです。ショスタコーヴィチが付けた激しくもドラマティックなものに比べると、このベン=ハイムによる作品は静かに悲しみを噛み締めるような雰囲気になりました。同じ悲劇の主人公でも、ヒロイックに死を迎えるというよりは、なよっと世をはかなんで死んでいくといった感じです。

( 2006.06.03 藤井宏行 )


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