すきとおってゆれているのは 歩行について |
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すきとほつてゆれてゐるのは さつきの剽悍(へうかん)な四本のさくら わたくしはそれを知つてゐるけれども 眼にははつきり見てゐない ユリアがわたくしの左を行く 大きな紺いろの瞳をりんと張つて ユリアがわたくしの左を行く ペムペルがわたくしの右にゐる 明るい雨がこんなにたのしくそそぐのに 馬車が行く 馬はぬれて黒い ひとはくるまに立つて行く すべてさびしさと悲傷とを焚いて ひとは透明な軌道をすすむ ラリツクス ラリツクス いよいよ青く 雲はますます縮れてひかり わたくしはかつきりみちをまがる |
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( 2019.04.29 藤井宏行 )