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Il pleure dans mon coeur   L 60  
  Ariettes Oubliees
私の心は涙で濡れる  
     忘れられた小唄

詩: ヴェルレーヌ (Paul Verlaine,1844-1896) フランス
    Romances sans paroles - Ariettes oubliées 3 Il pleure dans mon cœur

曲: ドビュッシー (Claude Achille Debussy,1862-1918) フランス   歌詞言語: フランス語


Il pleure dans mon coeur
Comme il pleut sur la ville;
Quelle est cette langueur
Que pénètre mon cœur?

O bruit doux de la pluie
Par terre et sur les toits!
Pour un coeur qui s'ennuie,
O le bruit de la pluie!

Il pleure sans raison
Dans ce coeur qui s'écoeure.
Quoi! nul trahison?...
Ce deuil est sans raison.

C'est bien la pire peine
De ne savoir pourquoi,
Sans amour et sans haine,
Mon coeur a tant de peine!

私の心は涙で濡れる
町にそぼ降る雨のように
このやるせなさはなんだろう
胸にじんわりと広がってくる

おお、雨のしたたる音は
地面に、そして屋根に響く!
この悲しむ心のために
雨が歌ってくれているのだ!

わけもなく流れる涙
行き場のない私の心
何故!何かの報いなのか?
わけのわからないこの悲しみ

いっそうつのるこの苦しみは
理由がなぜだかわからないから
愛も、憎しみも棄てているのに
私の心は苦しみに満ちる


堀口大学の名訳「ちまたに雨の降るごとく、わが心にも涙ふる」でヴェルレーヌのものとしても非常に良く知られた詩です。そんな大文学者の真似しても仕方がないので、私は歌詞対訳であることを意識してできるだけ直訳に近くしてみました。少なくとも各行同士の意味を対応させてあります。
この詩にもフォーレの付けた歌曲(「憂鬱」)がありますけれども、私は個人的にはこのしたたる雨の中、悶々と悲しんでいる感じが良く出ていて好ましいのはドビュッシーの曲の方です。ドビュッシーの歌曲としても有名なものの方で、クレール・クロワザなど往年の名歌手の絶唱といえるような見事な演奏も残っています(岩波文庫のフランス名詩選でも、この詩にはドビュッシーの歌曲があることが言及されていました)
冒頭のピアノのけだるいメロディからして非常にインパクトがありますが、そこに纏わり付くように入ってくる声のうら寂しさ。「このやるせなさは」の部分で耐え切れなくなって叫ぶような歌になりますが、それをまた沈めるような雨を表すピアノのメロディの再現。
私の訳では何だか血を吐くような叫びのイメージが強くなりましたけれども、実際の曲はもう少しやり場のない悲しみにふさぎこんでいる感じです。

( 2006.05.20 藤井宏行 )


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