Seule! Op.3 Deux mélodies |
ひとりぼっち! 2つのメロディ |
Dans un baiser l'onde au rivage Dit ses douleurs; Pour consoler la fleur sauvage, L'aube a des pleurs; Le vent du soir conte sa plainte Aux vieux cyprès, La tourterelle au térébinthe Ses longs regrets. Aux flots dormants,quand tout repose, Hors la douleur, La lune parle,et dit la cause De sa pâleur. Ton dôme blanc,Sainte-Sophie, Parle au ciel bleu, Et,tout rêveur,le ciel confie Son rêve à Dieu. Arbre ou tombeau,colombe ou rose, Onde ou rocher, Tout,ici-bas,a quelque chose Pour s'épancher... Moi,je suis seule,et rien au monde Ne me répond, Rien que ta voix morne et profonde, Sombre Hellespont! |
くちづけしながら 波は岸辺へと その嘆きを告げ 野の花をなぐさめようと 朝焼けは涙を流す 夕暮れのそよ風はその悲しみを 古い糸杉に語り キジバトはテレビンの木に 尽きない後悔を話す 眠っている波は、あらゆるものが静まるときに 青い空に語りかける 月は語りかける、なぜこんなにも 自分が青ざめているのかを あなたの白い屋根は、聖ソフィアよ 青い空へと話しかける そして夢見心地の空は告白する 自分の見ている夢を神様へと 木も墓も、ハトもバラも 波も岩も この世のすべてのものは持っている 心を打ち明ける相手を 私だけがひとりぼっち、この地上の誰も 私に答えてはくれない ただひとつ、あなたの深く陰鬱な声を除いては 暗黒のヘレスポントスの海よ |
ゴーティエの詩によるフォーレの歌曲、「水夫の歌」や「漁師の歌」、「悲しみ」と取り上げてきましたが、最後はこの曲「ひとりぼっち」です。春に幸せそうなものも悲しそうなものもまわりのものすべてが互いに寄り添い合っている中、ひとり孤独を噛み締める(単なるいじけのようにも読めなくはないですが)主人公は何を思うのでしょうか。
糸杉というのはヨーロッパの歌曲ではよく取り上げられる題材です。写真でみると閉じた傘みたいにとんがってあまり詩情を感じさせる姿ではないのですが、ヨーロッパでは普通に見られる樹木なのでしょう。
テレビンの木というのは松脂を取るマツ科の樹木。その木の枝に止まったキジバトの鳴き声がまるで木に語りかけるように聴こえているのでしょうか。
最後に呼びかけているヘレスポントというのがどうしても意味が取れなかったのですが、その前の節で呼びかけている聖ソフィアというのはどうみてもコンスタンチノープル(現在のトルコの大都市イスタンブール)にあるキリスト教の大聖堂。ですからきっとこの街の面している向こうにアジアの見える海、ヘレスポントス海峡ではないかと推測した次第です。知る人もいない異国の地での昼間の青い空の下で輝く教会の屋根の情景と、夜の暗闇の中で波の音だけが陰鬱に聴こえてくる情景との対比、そして夜の海だけが自分の心に響いてくる深い孤独。何だか久保田早紀のヒット曲「異邦人」にも通じる感傷のようではあります。
メロディも気品を失わないながらも通俗的な感じを漂わせとても聴きやすいものです。
( 2006.05.16 藤井宏行 )