Green Op.58 Cinq mélodies “De Venise” |
グリーン 5つのメロディ「ヴェネツィア」 |
Voici des fruits,des fleurs,des feuilles et des branches Et puis voici mon coeur qui ne bat que pour vous. Ne le déchirez pas avec vos deux mains blanches Et qu'a vos yeux si beaux l'humble présent soit doux. J'arrive tout couvert encore de rosée Que le vent du matin vient glacer à mon front. Souffrez que ma fatigue à vos pieds reposée Rêve des chers instants qui la délasseront. Sur votre jeune sein laissez rouler ma tête Toute sonore encore de vos derniers baisers ; Laissez-la s'apaiser de la bonne tempête, Et que je dorme un peu puisque vous reposez. |
ここにほら 果物が 花が 葉と枝が それからほら ぼくの心が震えてる 君だけのために どうか引き裂かないでおくれ これを君の白いふたつの手で そして君の美しい目に この慎ましい贈り物が心地よく見えて欲しい! ぼくはやって来たんだ 朝露に濡れながら 朝の風は凍りつかせたんだ ぼくの額を 許しておくれ 疲れ切ったぼくが君の足元で安らぐのを 夢見ることを 甘美な時がぼくの体を癒してくれるのを 君のうら若き胸の上に 横たえさせておくれ ぼくの頭を まだ高鳴っているんだ さっきの君のくちづけのせいで 静めさせておくれ この心地よい嵐を そして少し眠らせて欲しい 君も休んでいるのだから |
ヴェルレーヌの詩の中でも、とても美しい恋の歌。フォーレはここに穏やかで、しかし美しいメロディをつけました。淡々と鳴るピアノの伴奏に乗せて、のびやかに、しかし秘めた熱情を歌います。同じ詩につけたドビュッシーのものが非常に熱く、ヴェルレーヌの詩のなまめかしさを最大限に引き出しているのに対し、こちらにあるのはすがすがしい抒情です。
恋人のもとに朝から寒い中やってきていきなりのくちづけ。そして恋する人の胸に頭を休めて夢をみるという描写は確かに相当にエロティックですが、そこにこんな穏やかな曲を付けたフォーレ。
カミーユ・モラーヌの穏やかなハイバリトンで聴くのが一番素敵でしょうか。この曲は女声でない方が味わい深いように思います。
( 2006.05.13 藤井宏行 )