序詞 |
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わたしたちは 氷砂糖をほしいくらいもたないでも きれいにすきとおった風をたべ 桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます またわたくしは はたけや森の中で ひどいぼろぼろのきものが いちばんすばらしいびろうどや羅紗や 宝石いりのきものに かわっているのをたびたび見ました わたくしは そういうきれいなたべものや きものをすきです これらのわたくしのおはなしは みんな林や野はらや鉄道線路やらで 虹や月あかりからもらってきたのです ほんとうに かしわばやしの青い夕方を ひとりで通りかかったり 十一月の山の風のなかに ふるえながら立ったりしますと もうどうしてもこんな気がしてしかたないのです ほんとうにもう どうしてもこんなことがあるようでしかたないということを わたくしはそのとおり書いたまでです ですから これらのなかには あなたのためになるところもあるでしょうし ただそれっきりのところもあるでしょうが わたくしには そのみわけがよくつきません なんのことだか わけのわからないところもあるでしょうが そんなところは わたくしにもまた わけがわからないのです けれどもわたくしは これらのちいさなものがたりの幾きれかが おしまい あなたのすきとおったほんとうのたべものになることを どんなにねがうかわかりません |
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( 2019.03.24 藤井宏行 )