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Love's minstrels    
  The House of Life
愛の神の楽師たち  
     歌曲集『生命の家』

詩: ロセッティ,ダンテ・ゲイブリエル (Dante Gabriel Rossetti,1828-1882) イングランド
    Ballads and Sonnets - The House of Life −1.Youth and Change 9 Passion and worship

曲: ヴォーン=ウィリアムズ (Ralph Vaughan Williams,1872-1958) イギリス   歌詞言語: 英語


One flame-winged brought a white-winged harp-player
Even where my lady and I lay all alone;
Saying: “Behold,this minstrel is unknown;
Bid him depart,for I am minstrel here:
Only my strains are to Love's dear ones dear.”
Then said I: “Through thine hautboy's rapturous tone
Unto my lady still this harp makes moan,
And still she deems the cadence deep and clear.”

Then said my lady: “Thou are Passion of Love,
And this Love's Worship: both he plights to me.
Thy mastering music walks the sunlit sea:
But where wan water trembles in the grove
And the wan moon is all the light thereof,
This harp still makes my name its voluntary.”

恋人と私が二人きりで身を横たえていると
炎の翼を持つ者が白い翼の竪琴弾きを連れて来た
「ご覧下さい、この楽師は見知らぬ者です
去れとご命じください、私こそこの地の楽師
私の奏でる調べこそ愛の神と人との親しきものなのですから」
そこで私は言った「お前のオーボエの心奪う響きに乗って
竪琴の紡ぐ嘆きの調べは我が恋人に届いた
彼女はそれを真情からの汚れなきものと聴いたのだ」

すると我が恋人は言った「お前は愛の情熱
その者は愛の崇拝。この方は二つを共に誓ってくださいます
お前の巧みな楽の音はいつも陽光あたる海を歩みますが
樹々の中で蒼い水がさざめくところ
蒼い月の光だけが射すところではいつも
竪琴の奏でる即興曲が私の名を讃えてくれるのです」


 ロセッティの詩の原題は「情熱と崇拝」”Passion and Worship”。最終行の「ヴォランタリー」”voluntary”を「自発性」ではなく「即興曲」にしましたが、英国国教会の礼拝でオルガンが演奏するヴォランタリーという曲種があることがわかったからです。それから発展した器楽曲は他の楽器でも演奏され、我が国で有名なものには伝パーセルの「トランペット・ヴォランタリー」があります。
 他にも”You are”の古表現”Thou art”など擬古典的な手法が見られ、蒲原有明訳のような文語調がふさわしいのかもしれませんが、それに徹するほどの教養も無いので、中途半端に古い言葉を使うのはやめておきました。
 あまり歌にはなりそうにない詩ですが、ヴォーン=ウィリアムスの曲は素晴らしいです。朗唱風に詩を物語り、ピアノ伴奏がアルカイックなオーボエの調べと、華麗なグランドハープのアルジオを模して、ロセッティの絵画そのものの情景を描いていきます。わたしはこの歌曲集で初めて、ヴォーン=ウィリアムスという作曲家を本当に好きになってきました。ロットやボストリッジが「沈黙の正午」のみ録音しているのが不思議なほど魅力的な歌曲集です。
 演奏はテノールでA.ロルフ・ジョンソン&D.ウィルソン(英EMI)、バリトンではナクソス盤のR.ウィリアムス&I.バーンサイドの全曲盤がなかなかの好演と思います。
 余談ですが、前回ご紹介した「生命の家」の原書に掲載されているこの詩には、意外にも単純な誤植と思われる箇所があります(5行目の”Love's dear ones dear”が”Love's dear ones,dear”、6行目”hautboy's”が”hautboy;s”になっている)。ネット上でも同様のものがありますが、これが元なのかもしれません。

( 2006.03.21 甲斐貴也 )


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