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Dans ton coeur    
 
きみの心に  
    

詩: ラオール (Jean Lahor,1840-1909) フランス
    L'Illusion - 1. Chants de l'Amour et de la Mort 10 Chanson triste

曲: サン=サーンス (Charles Camille Saint-Saens,1835-1921) フランス   歌詞言語: フランス語


Dans ton coeur dort un clair de lune,
Un doux clair de lune d'été,
Et pour fuir la vie importune,
Je me noierai dans ta clarté.

J'oublierai les douleurs passées,
Mon amour,quand tu berceras
Mon triste coeur et mes pensées
Dans le calme aimant de tes bras.

Tu prendras ma tête malade,
Oh! quelquefois,sur tes genoux,
Et lui diras une ballade
Qui semblera parler de nous;

Et dans tes yeux pleins de tristesse,
Dans tes yeux alors je boirai
Tant de baisers et de tendresses
Que peut-être je guérirai.

きみの心の中には月の光がまどろんでいる
おだやかな夏の月の光だ
人生の気がかりから逃れて
ぼくはきみの光の中に溺れよう

過去の苦しみは忘れてしまうんだ
恋人よ、きみが癒してくれるから
ぼくの悲しい心と思いとを
きみがその腕で抱いてくれることで

ぼくの痛む頭を支えて
おお、ときにはきみの膝の上に寝かせて
きみは歌を歌ってくれ
ぼくたちのことを歌っているような歌を

きみの悲しみに満ちた眼から
きみの眼からぼくは飲み干すのだ
たくさんのくちづけと優しさを
そうすることで、たぶんぼくは癒されるのだから


デュパルクがその若き日に「悲しき歌(Chanson triste)」として書いた同じ詩に、サン・サーンスも曲を付けています。こちらは原題の冒頭から取ってタイトルを「きみの心に(Dans ton coeur)」としていますし、曲想も全くといってよいほど違っているのでそのつながりにはなかなか気が付きにくいですが(私も今回初めて気が付きました)、両者の対比は非常に興味深いところです。

デュパルクの作品がトロトロのロマンティックの中に溺れていく感じだとすれば、サン・サーンスのは凍りつくような月の光の下でこの病に苦しむ青年が息も絶え絶えに語っているような感じ、どちらも魅力的ですが、詩のイメージからするとサン・サーンスの方が合っているような気が私はします。もちろんデュパルクのあの美しいメロディには抗しがたいほどの魅力を感じるのも事実ですが。
ネットで検索してみても、デュパルクの方はびっくりするくらいたくさんの録音がありましたが、このサン・サーンスのはHyperionにあるサン・サーンス歌曲集のみ。もっともこのCDで歌っているバリトンのル・ルーの歌でも十分に音楽の素晴らしさは分かります。

( 2006.04.19 藤井宏行 )


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