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Chanson du pêcheur (Lamento)   Op.4  
  Deux mélodies
漁師の歌(哀歌)  
     2つのメロディ

詩: ゴーティエ (Théophile Gautier,1811-1872) フランス
    La Comédie de la Mort  La chanson du pêcheur

曲: フォーレ (Gabriel Fauré,1845-1924) フランス   歌詞言語: フランス語


Ma belle amie est morte,
Je pleurerai toujours;
Sous la tombe elle emporte
Mon âme et mes amours.
Dans le ciel,sans m'attendre,
Elle s'en retourna;
L'ange qui l'emmena
Ne voulut pas me prendre.
Que mon sort es amer!
Ah! sans amour s'en aller sur la mer!

La blanche créature
Est couchée au cercueil;
Comme dans la nature
Tout me paraît en deuil!
La colombe oubliée
Pleure et songe à l'absent;
Mon âme pleure et sent
Qu'elle est dépareillée.
Que mon sort est amer!
Ah! sans amour s'en aller sur la mer!

Sur moi la nuit immense
Plane comme un linceul,
Je chante ma romance
Que le ciel entend seul.
Ah! comme elle était belle,
Et combien je l'aimais!
Je n'aimerai jamais
Une femme autant qu'elle
Que mon sort est amer!
Ah! sans amour s'en aller sur la mer!


俺の可愛い娘は死んじまった
俺は永久に泣き続けるだろう
墓の下にあの娘は持って行っちまったんだ
俺の魂と恋心を
天国へと 俺を待たずに
行ってしまったんだ
あの娘を連れて行った天使は
俺を一緒に連れて行ってはくれない
なんというむごい運命
ああ、愛もなく 海に出なければならないとは!

白い肌をしたあの娘は
柩の中に眠っている
周りのものはまるで
みな喪に服しているようだ
残されたハトは
なくした伴侶を思って鳴く
俺の魂も泣き
大切なものをなくしたことを感じる
なんというむごい運命
ああ、愛もなく 海に出なければならないとは!

俺の上では、この果てしない夜が
まるで死に装束のように広がっている
俺はロマンスを歌うが
それを聴くのは夜だけだ
ああ、あの娘はなんて綺麗だったのか
俺はどれほどあの娘を愛していたことか
あの娘を愛したほどには
俺はもう誰も愛せない
なんというむごい運命
ああ、愛もなく 海に出なければならないとは!


これもフォーレのロマンスらしからぬ濃密な歌です。このゴーティエの詩はかなり多くの作曲家に取り上げられていて、とりわけ有名なものとしてはベルリオーズの歌曲集「夏の夜」の第3曲目に「入り江にて(Sur les lagunes)」という題名で取り上げられているのが挙げられましょうか。
恋人を亡くしてしまった漁師の嘆きが、はじめは訥々と、しかし次第に激しくなりながら最後は「愛もなく(sans amour)」を何度も繰り返しつつ昂ぶっていくあたりオペラのアリアのようにさえ聴こえます。

フランス歌曲の大御所であったジェラール・スゼーの愛唱曲だったようで、EMIの全集だけでなく若き日のPhilips録音での張りのある声もなかなか聴かせてくれます。またLP時代に繰り返し聴いたカミーユ・モラーヌの録音も、今手元にはないのですけれどもこの曲の歌声だけは耳に強く残っています。「夢のあとに」などと並んでフォーレの歌曲があまりお好きでない方にしっくりくる曲かも知れません。

( 2006.04.06 藤井宏行 )


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