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Tristesse   Op.6  
  Trois mélodies
悲しみ  
     3つのメロディ 

詩: ゴーティエ (Théophile Gautier,1811-1872) フランス
    La Comédie de la Mort  Tristesse (1838)

曲: フォーレ (Gabriel Fauré,1845-1924) フランス   歌詞言語: フランス語


Avril est de retour.
La première des roses,
De ses lèvres mi-closes
Rit au premier beau jour;
La terre bienheureuse
S'ouvre et s'épanouit;
Tout aime, tout jouit.

Hélas! j'ai dans le coeur
une tristesse affreuse.


Les buveurs en gaîté,
Dans leurs chansons vermeilles,
Célèbrent sous les treilles
Le vin et la beauté;
La musique joyeuse,
Avec leur rire clair
S'éparpille dans l'air.

Hélas! j'ai dans le coeur
une tristesse affreuse.


En deshabillé blanc,
Les jeunes demoiselles
S'en vont sous les tonnelles
Au bras de leur galant;
La lune langoureuse
Argente leurs baisers
Longuement appuyés.

Hélas! j'ai dans le coeur
une tristesse affreuse.


Moi, je n'aime plus rien,
Ni l'homme, ni la femme,
Ni mon corps, ni mon âme,
Pas même mon vieux chien.
Allez dire qu'on creuse,
Sous le pâle gazon,
Une fosse sans nom.

Hélas! j'ai dans le coeur
une tristesse affreuse.

4月がまたやってきた
今年初めてのバラが
つぼみを半分だけ開いて
微笑みかける、この爽やかな日に
地上は最高に幸せそうに
開かれ、そして広がっている
万物が愛し合い、万物が喜ぶ

ああ、私だけがこの心の中に
深い悲しみを抱えているのだ


賑やかな酔っ払いたちが
ばら色の歌を歌いながら
ブドウ棚の下で祝っている
酒を、そして美人たちを
陽気な音楽は
明るい笑い声と共に
空の中を広がっていく

ああ、私だけがこの心の中に
深い悲しみを抱えているのだ


白い普段着を着た
若い娘たちが
小屋の中へと入っていく
恋人たちと手を取り合って
物憂げな月が
銀色に照らす、彼らのくちづけを
長く続けられるくちづけを

ああ、私だけがこの心の中に
深い悲しみを抱えているのだ


私は、私はもう何も愛さない
男であろうと、女であろうと
私の体も、私の魂も
年老いた私の飼い犬さえも
皆に言うが良い
この青ざめた芝生の下に
名もなき墓を掘ってくれと

ああ、私だけがこの心の中に
深い悲しみを抱えているのだ


この曲、シャルル・トレネやイブ・モンタンといったシャンソン歌手が歌ったとしても全く違和感のないポップなスタイルで書かれています。日本人の好きなシャンソンというと人生を語るけっこう暗く沈んだ曲調のものが多いような気がしますけれども、この曲もそんなクラーいシャンソンみたいな音楽です。春の楽しげな情景の中でひとり悲しみに暮れているのは恋をなくしたからでしょうか?でも第一節の輝かしい自然の描写も、第二節の春のお祭りの様子も、そして第三節の若いカップルたちの描写も春の情景の描き方としてはとても見事です。第四節も真面目に嘆いているんですが、「男も女も愛さない」だとか「飼い犬も愛さない」だとか書いているので、何となく笑ってしまわんでもないのですけれども...
この明るい情景と最後の締めくくりの「ああ、私だけが」のところとの対比がぐっとくるところなのですね。ゴーティエの詩も歌謡曲っぽく濃厚なので、妙にハマッていて面白いところです。

これも私は全集でのスゼーの歌しか聴いたことはないのですが、とてもシャンソンぽくって良いです。というよりもこれを聴いていたから冒頭のようなコメントになったのかも。でもフランスのクラシック歌曲は、マスネやラロ、アーンといった作曲家が見事なサロン風の音楽をたくさん書いており、そんなポップミュージックとの垣根はたいへん低いと思うのです。

( 2006.03.31 藤井宏行 )


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