Les Matelots Op.2 Deux mélodies |
水夫の歌 2つのメロディ |
Sur l'eau bleue et profonde Nous allons voyageant, Environnant le monde D'un sillage d'argent, Des îles de la Sonde, De l'Inde au ciel brûlé, Jusqu'au pôle gelé... Nous pensons à la terre Que nous fuyons toujours, A notre vieille mère, A nos jeunes amours; Mais la vague légère Avec son doux refrain Endort notre chagrin. Existence sublime! Bercés par notre nid, Nous vivons sur l'abîme Au sein de l'infini; Des flots rasant la cîme, Dans le grand désert bleu Nous marchons avec Dieu! |
青く広大な水の上 われらは旅を続けるのだ 世界中を巡っていこう 銀色のしぶきと共に スンダの島々や 空が燃えるようなインドから 凍てつく極地まで! われらは故郷を思う いつも遠くにある故郷を そこには年老いた母が そして若い恋人がいる だが軽やかな波は 優しい揺り返しと共に われらの郷愁を癒してくれる これぞ最高の生き方だ! 寝床を波に揺すられながら われらは深い海の上に暮らす 無限の広がりに抱かれて 波のてっぺんをかすめながら この広い青い大海原を われらは神と共に歩むのだ! |
フォーレの初期作品、ヴィクトル・ユゴー同様にこれも中期以降に彼が詩を全く取り上げていない高踏派詩人・ゴーティエの詩につけた曲です。同じ高踏派詩人とされる人たちでも、シルヴェストルやルコント・ド・リールなんかは中期になってもそれなりに歌にしているのと対照的なのですが、どこが違うのか?はフランス詩に詳しくないので分かりません。ゴーティエはゴーチェと表記されて幻想文学の世界ではとても有名な人のようですが、ベルリオーズの歌曲集「夏の夜」をはじめとして、フランスの作曲家たち(グノー、デュパルク、ショーソン、アーンなど)もよく曲を付けています。歌曲の詩人としては普通ゴーティエと表記されていることが多いように思えるのが面白いところです。
中期以降は取り上げなくなってしまったとはいえ、それでもフォーレのゴーティエの詩に付けた歌曲はどれもフォーレらしからぬ濃密なロマンが不思議な魅力を醸し出しています。初期作品には意外に多く、この曲を皮切りに「ひとりぼっち」Op.3-1、「漁師の歌」Op.4-1に「悲しみ」Op.6-2といったところがゴーティエの詩です。
この歌でもテーマとなっているのは海の男の世界の描写、こんな内容の歌はフォーレには他にありません。そういう意味で非常に異色で面白い歌なのですが、それだけに録音も少なく、私はEMIの全集にあるスゼーの歌でしか聴いたことはありません。
元気の良い船乗りの歌でありながらどこか気品があるように感じられるのは、微妙なコード進行の揺らぎにあるのでしょうか。最初期の作品にしてはフォーレらしさの芽がほのかに感じられる音楽ではあります。
( 2006.03.31 藤井宏行 )