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Svetlaja lichnost'   Op.146-4  
  Chetyrekh stikhotvorenijakh kapitana Lebjadkina
輝く人格  
     レビャートキン大尉の4つの詩

詩: ドストエフスキー (Fyodor Mikhailovich Dostoyevsky,1821-1881) ロシア
    Besy(悪霊) 第2部第6章 

曲: ショスタコーヴィチ (Dimitry Shostakovich,1906-1975) ロシア   歌詞言語: ロシア語


On neznatnoj byl porody,
On vozros sredi naroda,
No gonimyj mest’ju tsarskoj,
Zlobnoj zavist’ju bojarskoj,
On obrek sebja stradan’ju,
Kaznjam, pytkam, istjazan’ju,
I poshel veshchat’ narodu
Bratstvo, ravenstvo, svobodu.

I, vosstan’e nachinaja,
On bezhal v chuzhie krai,
Iz tsareva kazemata,
Ot knuta, shchiptsov i kata.
A narod, vosstat’ gotovyj
Iz-pod uchasti surovoj,
Ot Smolenska do Tashkenta
S neterpen’em zhdal studenta.

Zhdal ego on pogolovno,
Chtob idti besprekoslovno
Poreshit’v konets bojarstvo,
Poreshit’sovsem i tsarstvo,
Sdelat’obshchimi imen’ja
I predat’naveki mshchen’ju
Tserkvi, braki i semejstvo -
Mira starogo zlodejstvo!

彼は平民の家に生まれ
民衆の中で育った
だが皇帝の虐政と
貴族の妬みの餌食となり
自ら苦難を選び取った
刑罰と拷問と苦悩を
そして民衆に説き続ける
友愛と平等と自由を

そして反乱を引き起こしたものの
外国へと逃げねばならなくなった
皇帝の牢獄から
鞭から、焼け火箸から、そして絞首台から
だが過酷な運命から
反乱に立ち上がることを決した民衆は
スモレンスクからタシケントまで
その学生の帰りを待った

みなこぞって彼を待っていた
ためらうことなく立ち上がり
貴族制度を打破するために
皇帝制度を亡くするために
私有財産を共有となし
永遠の復讐を遂げるために
教会と、婚姻と、家族制度に
これら旧体制の因習に対して


これはレビャートキンの4つの詩に入っているものの、私が「悪霊」を斜め読みした限りにおいては彼の作ではなく、革命派の学生シャートフの書いたアジびらの詩であるようです(斜め読みなので間違いはご容赦ください)。確かに前3つの怪しくもヘンテコな詩に比べると内容は至極真面目です。また小説に出てくる順番も3曲目の「家庭教師嬢」よりも前になるのですが、ショスタコーヴィチがこれを4曲の最後に持ってきた意味、そして詩の内容を読むと戦慄すら覚えるのは私だけでしょうか。

この学生シャートフ、当初は革命家たちの思想に共鳴していたのですが、やがて彼らと距離を置くようになり、そして最後は組織の秘密を密告されることを恐れた革命家たちのリーダー・ピョートルの指揮のもと仲間たちに殺されてしまいます。仲間を殺すことによって同じ秘密を共有し、さらに結束を強めようという意図のもとに...

ペレストロイカの流れの中でソヴィエト連邦が崩壊した1991年、朝日新聞の記者の佐藤章氏が、このドストエフスキーを中心軸にして、ロシア革命の起こりからソヴィエトの崩壊までの約100年間を描写した力作「ドストエフスキーの黙示録〜死滅した100年」(朝日新聞社)が非常に読み応えがありました。
この「悪霊」のモデルになった実在の革命家ネチャーエフが起こした殺人事件のことや、ロシア革命を実現させたレーニンが人間らしい心の迷いを捨てて革命推進のためにまさに「悪霊」に取り憑かれたようになっていたこと、そしてまさにこのリンチ殺人のようなことを国家的規模で大々的に行ったスターリンのこと。読み進むにつれて、どんどん深みにはまっていく「悪霊」に取り憑かれた人間たちの作り上げる世界の恐ろしさに戦慄を覚えます。

こんな本を読み、そしてドストエフスキーの小説を読んでから(とてつもなく長くて登場人物が多いので筋を理解するのも一苦労なのですが)、この音楽に戻ってくると、なんだか凄まじいメッセージを伝えているように思えてきます

( 2006.03.24 藤井宏行 )


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