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La Coccinelle    
 
テントウムシ  
    

詩: ユゴー (Vicomte Victor Marie Hugo,1802-1885) フランス
    Les contemplations - 1. Livre premier -- Aurore 15 La coccinelle

曲: ビゼー (Georges Bizet,1838-1875) フランス   歌詞言語: フランス語


Elle me dit: “Quelque chose
Me tourmente.” Et j'aperçus
Son cou de neige,et,dessus,
Un petit insecte rose.

J'aurais dû,- mais,sage ou fou,
A seize ans,on est farouche,-
Voir le baiser sur sa bouche
Plus que l'insecte à son cou.

On eût dit un coquillage;
Dos rose et taché de noir.
Les fauvettes pour nous voir
Se penchaient dans le feuillage.

Sa bouche fraîche était là;
Helas! Je me penchai sur la belle,
Et je pris la coccinelle;
Mais le baiser s'envola.

“Fils,apprends comme on me nomme,”
 Dit l'insecte du ciel bleu,
“Les bêtes sont au bon Dieu;
 Mais la bêtise est à l'homme.”

あの子はぼくに言った「なんだか
くすぐったいわ」 それでぼくは見たんだ
彼女の雪のように白いうなじを、そこに
止まっていたのは赤い色をした小さな虫だった

ぼくはすべきだったんだ、賢明にであれ愚かにであれ
だが、16歳のぼくはウブだった
彼女のキスを求めている口をもっと見るべきだったんだ
彼女の首にいた虫の方よりももっともっと

貝殻のように光るその羽根には
赤地に黒い斑点が見える
小鳥たちも見ていた、ぼくたちをじっと
首を伸ばして、木の枝から

彼女の素敵なくちびるはそこにある
ああ、ぼくはその美しい口に近寄って
そして、てんとうむしを取っちゃったんだ
でもキスは逃げ去ってしまった

「ぼうや、あたしの名から学びなさい」
虫は青空から呼びかける
「虫たちは神様のもの
 だが愚かさは人間のもの」


ほほえましい若い男の子の後悔、よほど残念だったのか、”ぼくはすべきだったんだ(J'aurais dû)”を歌では繰り返し繰り返しつぶやいています。リヒャルト・シュトラウスの「バラの騎士」を思わせるようなお洒落なワルツに乗りながら、この初体験の失敗が可愛らしく描写されます。飛び去っていくテントウムシが呼びかける言葉”Les betes(生き物:創造物)”と”La betise(愚かな振る舞い)”の対比が絶妙。なんでもテントウムシはフランスでは神様のお使いをする虫(La bete a bon Dieu)とも呼ばれているようですので、そういった意味からも含意は深い詩です。でもこういうの、若いって素晴らしいですね。詩人の目もとても愛情に満ち溢れているように思います。そしてビゼーの付けた音楽の描写も見事!

とても素敵な歌だと思うのですが、ビゼーの歌曲自体ほとんど取り上げられることが少ない中、この歌が聴ける録音というのもあまりないようです。中ではチェチーリア・バルトリが指揮者としても有名な名ピアニスト、チョン・ミョンフンのピアノ伴奏で入れたもの(Decca)がとてもお洒落で素敵でした。男の子の心情を歌う歌ですが調べたところほとんど女声で歌われているみたいで、まるでモーツァルトのフィガロの結婚、女の子のことで頭が一杯のお小姓・ケルビーノを彷彿とさせてくれます。こういう可愛い子の大好きな女性の方も多いのではないでしょうか。ぜひ歌ってみてください。

( 2006.03.20 藤井宏行 )


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