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My byli vmeste   Op.127-3  
  7 Stikhi Aleksandr Bloka
私たちは一緒だった  
     アレクサンデル・ブロークの詩による7つのロマンス

詩: ブローク (Aleksandr Aleksandrovich Blok,1880-1921) ロシア
      Мы были вместе

曲: ショスタコーヴィチ (Dimitry Shostakovich,1906-1975) ロシア   歌詞言語: ロシア語


My byli vmeste,pomnju ja...
Noch' volnovalas',skripka pela,
Ty v eti dni byla moja,
Ty s kazhdym chasom khoroshela.

Skvoz' tikhoje zhurchan'je struj,
Skvoz' tajnu zhenstvennoj ulybki
K ustam prosilsja poceluj,
Prosilis' v serdce zvuki skripki...

私たちは一緒だった、私は覚えている
夜を打ち破り、ヴァイオリンは歌っていた
いつもいつも、あなたは私のもので
どんなときも、あなたは美しかった

しずかなささやきの言葉の流れも
女らしい微笑みの中にも
そしてくちづけを求める口元にも
私の心の中にはヴァイオリンの歌が満ちていた


ヴァイオリンの独奏のつぶやくようなメロディは、ロシアの寒村のおんぼろ小屋の
屋根の上でひとりしみじみと弾かれているかのよう、そうあの有名なミュージカル
「屋根の上のヴァイオリン弾き」の冒頭のシーンを思い出させるようなメロディです。
この歌曲集の作曲が1967年、そして件のミュージカルの初演が1964年です。
ユダヤ人たちに熱い共感を示していた彼のこと、もしかしたらこのミュージカルを
下敷にしてこの曲を書いたのでは?と思わせるほど雰囲気が似ているのですが、まあ
これは深読みのしすぎでしょうね。
でも彼には若い頃、ユーマンスのミュージカル「Tea for Two」の絶妙な編曲作品があったり
しますし見事な劇音楽もたくさん書いていたりもしますから、決してこの世界に無関心と
いうわけでもなかったのだと思います。

静かな悲しみをたたえている曲が多いこの歌曲集にあって、唯一安らぎに満ちた音楽です。
(しかしその安らぎも、過去の思い出を噛み締めることで得られるはかないものであるのですが)


67年10月の初演ではこのヴァイオリンをダヴィッド・オイストラフが弾いていました。その初演のライブ録音が
やはり極め付けともいえる味わいに満ちています。同じヴィシネフスカヤがソロを歌った1974年録音(EMI)の
ヴァイオリンを弾いたウルフ・ヘルシャーも悪くないのですが、やはりオイストラフの思い入れの深さには
及ばない気がします。何でもこの初演、オイストラフは病を押して参加したのだとか。
あのふくよかに歌うようなヴァイオリンのなんと美しいことでしょうか...

( 2006.03.12 藤井宏行 )


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