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Les roses d'Ispahan   Op.39  
  Quatre mélodies
イスファハンのバラ  
     4つのメロディ

詩: ルコント・ド=リル (Charles-Marie-René Leconte de Lisle,1818-1894) フランス
    Poèmes tragiques  Les roses d'Ispahan

曲: フォーレ (Gabriel Fauré,1845-1924) フランス   歌詞言語: フランス語


Les roses d'Ispahan dans leur gaine de mousse,
Le jasmins de Mossoul,les fleurs de l'oranger,
Ont un parfum moins frais,ont une odeur moins douce,
O blanche Leilah! que ton souffle leger.

Ta levre est de corail et ton rire leger
Sonne mieux que l'eau vive et d'une voix plus douce.
Mieux que le vent joyeux qui berce l'oranger,
Mieux que l'oiseau qui chante au bord d'un nid de mousse.

Mais le subtile odeur des roses dans leur mousse,
La brise qui se joue autour de l'oranger
Et l'eau vive qui flue avec sa plainte douce
Ont un charme plus sur que ton amour leger!

O Leilah! depuis que de leur vol leger
Tous les baisers ont fui de ta levre si douce
Il n'est plus de parfum dans le pale oranger,
Ni de celeste arome aux roses dans leur mousse.

L'oiseau,sur le duvet humide et sur la mousse,
Ne chante plus parmi la rose et l'oranger;
L'eau vive des jardins n'a plus de chanson douce.
L'aube ne dore plus le ciel pur et leger.

Oh! que ton jeune amour ce papillon leger
Revienne vers mon coeur d'une aile prompte et douce.
Et qu'il parfume encor la fleur de l'oranger,
Les roses d'Ispahan dans leur gaine de mousse.

苔むした枝に咲くイスファハンのバラも
モスルのジャスミンも オレンジの花さえも
こんなに素敵な香りはしない 甘い匂いはしない
おお、純白のレイラよ おまえの軽やかな息遣いほどには

おまえの唇は珊瑚のよう そして軽やかな笑い声は
泉のせせらぎよりも やさしくそして愛らしい
オレンジの木を揺するいたずらなそよ風よりも
苔の巣のそばで歌う小鳥よりも素晴らしい

だが、苔むしたバラのかすかな香りや
オレンジの木のまわりをそよぐ風や
しとしと音を立てる泉の方が
おまえの気まぐれな愛よりは確かな喜びをくれるのだ!

おお、レイラよ、軽やかに飛び去ってしまった
甘いくちづけをくれたおまえの唇を失ってからは
もはややつれたオレンジの木も香ることはなく
苔むしたバラからも、かぐわしい匂いはしなくなった

鳥も濡れた羽と苔でできた巣の中にこもり
もはやバラとオレンジの木の周りで歌わなくなった
庭の泉ももはややさしい歌をなくしてしまった
朝焼けも昔の済んだ空のようには輝かないのだ

おお、軽やかな蝶のような若々しいおまえの愛が
すばやく、柔らかい羽で私の心に舞い戻ってきてくれたなら
そしてまたオレンジの木の花の香りが
苔むした枝に咲くイスファハンのバラの匂いが戻ってきてくれたなら



詩をよくよく読むとこれってなくした恋の歌なんですね。でもメロディも詩の言葉も恐ろしく耽美的。この歌詞に詠み込まれた古都イスファハンのある国、ペルシャゆかりの恋愛詩人ハーフィズのスタイルを模しているのでしょうか。バラの花もまた、この古い都にはゆかりの深い風物です。
ということで調べてみると、どうもこの詩はペルシャの悲恋物語「ライラとマジュヌーン(Layla and Majnun)」を下敷にしているようです。美女ライラに恋焦がれてついにはマジュヌーン(狂人)となってしまう王子カイスの物語。ペルシャでも数多くの詩人に詠まれてきたのだそうです。
面白いのはこの物語から着想して、ロック・ギタリストのエリック・クランプトンが作ったのが名曲「いとしのレイラ(Layla)」、ペルシャの古典文学を介してフォーレとクランプトンに繋がりがあるなどとはよもや思ってもみないことでした。

原詩は6連からなるようですが、フォーレが付けたのはそのうち4連、上の3連と5連は歌には織り込まれていません。全部揃った方が起承転結がはっきりして私としては好ましく思えましたので、全部書き写して訳しましたが曲を聴かれるときはご注意ください。
最初の2連は恋人の美しさをひたすら讃えるところ。冒頭のピアノ伴奏の物憂げにも美しい旋律に導かれてゆったりとやさしく歌われます。その次の「おお、レイラ!」のところではお約束どおり雰囲気は暗転しますが、それでも物憂げなゆったりとした曲調はそう大きくは変わりません。そして最後の「おお、軽やかな蝶のような」で再び冒頭の歌のメロディが戻ってきて、溜息をつくように終わります。恋をなくした悲嘆というよりは、懐かしい思い出に浸りながら眠りについているようなそんな歌です。

男心を歌う曲なのですが、聴いていて心地よいのはソプラノの歌声。ロス・アンヘレスやアメリンクの声で歌われるこの歌は実に素晴らしいです。

( 2006.03.02 藤井宏行 )


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