Meerfahrt Op.96-4 Vier Lieder |
航海 4つの歌曲 |
Mein Liebchen,wir saßen beisammen, Traulich im leichten Kahn. Die Nacht war still und wir schwammen Auf weiter Wasserbahn. Die Geisterinsel,die schöne, Lag dämm'rig im Mondenglanz; Dort klangen liebe Töne, Und wogte der Nebeltanz. Dort klang es lieb und lieber, Und wogt' es hin und her; Wir aber schwammen vorüber, Trostlos auf weitem Meer. |
恋人よ、僕らは一緒に座っていたね 軽やかな小舟でくつろいで 静かな夜、僕らは 水路を先へと進んでいった 美しい亡霊の島が 月光におぼろに照らされていた そこでは愛らしい楽の音が響き 霧が舞い踊り揺れていた 響きは愛らしく、さらに愛らしく そこここに霧の舞いは揺れる だが僕らは通り過ぎ 望みもなしに沖へと進んでいった |
メンデルスゾーン、フランツ、それに若き日のヴォルフも作曲している詩ですが、それらがいずれも神話的題材の擬古典的絵画のようなのんびりした曲調なのに対し、ブラームスの作だけは陰鬱で神秘的な雰囲気です。わたしにとってもこの解釈は非常に納得がいくのですが、それというのもこの詩の情景に象徴派の画家ベックリーンの有名な「死の島」を思い起こすからです。
高名なラフマニノフの交響詩を始め、他に描写音楽をほとんど残していないマックス・レーガーによる管弦楽作品「アーノルト・ベックリーンの絵による音詩」など、この絵を題材とした音楽作品はいくつか知られています。そのようなものは残していないものの、ブラームスはベックリーンを尊敬しており、会見したこともあったそうです。この曲の作曲された1884年は、何枚か残されている「死の島」の製作時期のすぐ後でもあり、ブラームスが「死の島」の情景を念頭にしてこの歌曲を作曲したという仮説もそれほど無理はないと思いますがいかがでしょうか。少なくともわたし個人の中では、「航海」はブラームスの「死の島」となっています。そこでブラームスの訳詩のみ「精霊」を「亡霊」に変えてみました。
( 2006.02.17 甲斐貴也 )