Ich stand in dunkeln Träumen Op.2-3 Vier Lieder |
僕は暗い夢の中にいた 4つの歌 |
Ich stand in dunkeln Träumen Und starrte ihr Bildnis an, Und das geliebte Antlitz Heimlich zu leben begann. Um ihre Lippen zog sich Ein Lächeln wunderbar, Und wie von Wehmutstränen Erglänzte ihr Augenpaar. Auch meine Tränen flossen Mir von den Wangen herab - Und ach,ich kann's nicht glauben, Daß ich dich verloren hab! |
僕は暗い夢の中にいた 彼女の肖像画を見つめていた するとその愛らしい顔立ちは ひそやかに息づき始めた 唇のまわりが動いて 素晴らしい微笑が現れた そして対の瞳には 悲哀の涙がきらめいた 僕も涙を流し 頬を伝って滴り落ちた ああ、僕は信じることが出来なかった 君を失ってしまったことを! |
シューベルトの『白鳥の歌』で名高い「彼女の絵姿”Ihr Bild”」と同じ詩です。グリーグの曲は第一行を物憂く始め、夢の情景を感動を込めてドラマティックに盛り上げ、”Und ach,ich kann's nicht glauben”に冒頭と同じ旋律を回帰させて、夢から覚めた寂しさを表現するという構成になっており、なかなか聞き応えがあります。この詩には他にクララ・シューマンや、ヴォルフも最初期に作曲しています。
演奏はフィッシャー=ディースカウ&ヘル(エンジェル)、Monica Groop&Ilmo Ranta(BIS)。フィッシャー=ディースカウの活動晩年の録音は最近「ペール・ギュント」組曲、ピアノ協奏曲と組んだ廉価盤でひっそりと初CD化されています。彼が同じ頃にヘルと組んで録音したヴォルフの初期歌曲集やメンデルスゾーンの歌曲集に、ハイネの同じ詩を用いたものがいくつか入っているのは興味深いです。
( 2006.02.17 甲斐貴也 )