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苔桃の果(み)拾う女の歌    
  ギリヤーク族の古き吟誦歌
 
    

詩: 伊福部昭 (Ifukube Akira,1914-2006) 日本
      

曲: 伊福部昭 (Ifukube Akira,1914-2006) 日本   歌詞言語: 日本語


詩:著作権のため掲載できません。ご了承ください


先日亡くなった作曲家・伊福部昭の作品からひとつ取り上げようと思って彼の歌曲作品をざっと眺めてみたら、やはりこの曲が目に留まりました。
歌詞がご紹介できないのが大変残念ですが、この詞は野原でコケモモを独り摘みながら今は亡き人を偲ぶという、氏の追悼にはこれ以上はないという曲ですので。
そしてこの曲だけでなく改めて氏の歌曲作品をまとめて聴いてみましたが、私は今まで誤解していました。映画「ゴジラ」の音楽や「シンフォニア・タプカーラ」、あるいは「ピアノと管弦楽のためのリトミカ・オスティナータ」のようなキレの良い音楽を書くイメージで聴いていたので、こんな抒情的で美しい音楽を書いていた、という側面を全く聴き逃していたのです。
この曲を含む「ギリヤーク族の古き吟誦歌」は1946年の作、サハリン(樺太)に住む少数民族ギリヤーク族の伝承歌を、伊福部氏が自由に翻案して歌詞とし、そこに曲を付けたものです。確かに最初の曲「アイ アイ ゴムテイラ」は小気味良いオスティナートが上に挙げたような氏の代表的な管弦楽作品を思わせて楽しいのですが、残りの3曲、この「苔桃の果拾う女の歌」そして「彼方の河び」と「熊祭に行く人を送る歌」はむしろ幻想的な、心の奥底を震わせるようなやさしい歌。
今回氏の追悼ということでちょっと普通でない聴き方をしていること抜きにしても、このやさしげな情緒は心の底にびんびんと響いてきます。遥か昔の日本民族のルーツにつながり、深層にじわりと働きかけてきてくれているようです。
そしてそれはその他の北方民族の伝承詩に付けたどの歌曲でも一緒です。真夜中にじっくりと聴き惚れてしまいました。
日本の声楽・コンポーザーシリーズ(Victor)にある成田絵智子さんのメゾ、三浦洋一氏のピアノによるやさしくも暖かい演奏がとても素敵でした。藍川由美さんの伊福部歌曲も素敵ですが、しっとりした声のメゾやアルトの方がこれらの音楽にはよりハマるように私には思えました。

さて、この歌曲集は興味深いことに、氏の70歳の記念に4人の作曲家、芥川也寸志・松村禎三・黛敏郎・池野成というもの凄いメンバーによって1曲ずつオーケストレーションされ、その年1984年に演奏されています。そしてその18年後の氏の米寿の記念演奏会の録音が残っていてこれも大変興味深く聴けます。
宇佐美瑠璃さんのソプラノに石井真木指揮の新交響楽団というメンバーです。この「苔桃」は松村禎三編というのも嬉しいですね。

  われひとり かひなく摘まむ
  彼(あ)ひと いまは亡ければ...

伊福部さん、素晴らしい音楽をありがとうございました。どうぞ安らかにお眠りください。

( 2006.02.09 藤井宏行 )


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