Ich stand in dunkeln Träumen Liederstrauss |
僕は暗い夢の中にいた 歌曲集「歌の花束」 |
Ich stand in dunkeln Träumen Und starrte ihr Bildnis an, Und das geliebte Antlitz Heimlich zu leben begann. Um ihre Lippen zog sich Ein Lächeln wunderbar, Und wie von Wehmutstränen Erglänzte ihr Augenpaar. Auch meine Tränen flossen Mir von den Wangen herab - Und ach,ich kann's nicht glauben, Daß ich dich verloren hab! |
僕は暗い夢の中にいた 彼女の肖像画を見つめていた するとその愛らしい顔立ちは ひそやかに息づき始めた 唇のまわりが動いて 素晴らしい微笑が現れた そして対の瞳には 悲哀の涙がきらめいた 僕も涙を流し 頬を伝って滴り落ちた ああ、僕は信じることが出来なかった 君を失ってしまったことを! |
この詩はシューベルトの名高い歌曲集「白鳥の歌」に収められた”Ihr Bild”と同じものです。「歌の本」所収の「帰郷」23番目の詩です。有名な作品のわりに、既存の訳はそれぞれかなり異なっています。わたしの訳では「恋人の肖像画が微笑み涙を流すという夢を見た」という解釈を取りました。ハイネの「歌の本」には夢をテーマにした詩が多く含まれており、この詩はその代表的なものと言えるでしょう。
ヴォルフの曲は詩の印象的な夢の情景に較べていささか素朴ながらなかなか美しいです。なおこの詩にはシューベルト以外にグリーグ、クララ・シューマンも作曲しています。
( 2006.02.05 甲斐貴也 )