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Sirotka    
 
みなしご  
    

詩: ムソルグスキー (Modest Petrovich Mussorgsky,1839-1881) ロシア
      Сиротка

曲: ムソルグスキー (Modest Petrovich Mussorgsky,1839-1881) ロシア   歌詞言語: ロシア語


Barin moj milenkij,
Barin moj dobrenkij,
Szhalsja nad bednenikom,
Gokim,bezdomnim sirotochkoi.

Barinuzhka!

Kholodom,golodom grejus,
Kormljusja ja,
Burej da vjugoju v noch prikryvajusja,
Branju,pobojami,strakhom,ugrozoj
Dobryje ljudi za stolik golodnyj moj potchujut.

V chashchu-l dremuchuju ot ljudej sprjachus ja,
Golod dokuchlivyj iz lesu vytolknet.
Net mojej silushki,
Pit',jest zakhochetsja.
Barin moj milenkij,
Barin moj dobrenkij,
S golodu smert' strashna,
S kholodu stynet krov'.

Barin moj dobrenkij,
Szhalsja nad bednenkim,
Szhalsja nad gorkim sirotochkoj!

ご親切なだんな様
お情け深いだんな様
この貧しい子のためにお恵みを
この哀れな、家なしのみなしごに

だんなさま!

寒さとひもじさだけです
私が手に入れられるのは
凍えるような夜の嵐だけが私の寝床です
ののしりと、げんこつと、おどしと、いやがらせだけを
親切な人たちは私の飢えを満たすため恵んで下さるのです

人里をはなれ 深い森の中に隠れようとしても
腹が減れば森にはいられません
私にはもう力がないのです
空腹を満たし 渇きをいやす力が
ご親切なだんな様
お情け深いだんな様
飢えて死ぬのは恐ろしいです 
寒さで血も凍りそうです

お情け深いだんな様
この貧しい子のためにお恵みを
この不幸なみなしごに お慈悲を


ムソルグスキーが作った子供の歌から、こんどはとても悲しい歌を取り上げます。
これもあの可愛らしい「子供部屋」同様に自作の詞に付けた歌ですが、こちらは哀れな境遇の孤児の歌う歌。
マッチ売りの少女が寒さに凍える情景のような寂しさがあふれています。厳しいロシアの冬の夜、みなしごはそれでも生きていかねばならない...Barim(だんな様)の声がむなしくも哀切に響きます。最後は歌はぷつっと、何かに遮られるように終わってしまいます。それがこの子の死なのかそれともあきらめか。「子供部屋」と合わせて聴くと一層心を揺さぶられます。ちなみにこの作品も「子供部屋」と同じ1868年の作品なのだとか。

ソプラノのヴィシネフスカヤがロスとロポーヴィチのピアノ伴奏で入れたEMI盤が今は手に入りやすいと思います。
初めてこの録音を聴いたときは「ホパーク」や「死の歌と踊り」のような激しい音楽にばかり気を取られてこの曲の存在にすら気が付いていなかったのですが、歌詞もじっくり読みながら聴くと素晴らしい解釈で歌ってくれていることに気付きます。前回ご紹介した「イェリョムーシュカの子守歌」がこのあとに収録されていますが、ムソルグスキーの書いたそんな地味な、しかしとても深みのある歌に目を向けることができたのが今回一番の収穫でした。その他ではやはり目立たない作品ゆえか、クリストフやレイフェルクスなどムソルグスキーの歌曲全集を入れている人の歌でないと聴けない曲なのですが、この曲を歌っている人で私がとても意外だな、と思ったのがアメリカの黒人バス歌手・ポール・ロブソンです。ジェローム・カーンのミュージカル「ショウ・ボート」の「オールマン・リヴァー」の名唱で知られた人ですが(1929年の映画にも出演しています)、この人、ムソルグスキーの歌も愛唱していたのですね。
中でもこの曲はお気に入りだったようで、他のもっと有名な曲を差し置いて録音しています。
「オールマン・リヴァー」の中でも出てくる虐げられた者たち・黒人奴隷の悲しみに通じるところがあるからでしょうか。心に染みます。

( 2006.01.28 藤井宏行 )


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