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2011/11/09 UEFAのFFP(ファイナンシャル・フェアプレイ)について

今季から既に対象となっているUEFAのファイナンシャル・フェアプレイ(FFP: Financial Fair Play/財政適正化、というような意味)について、具体的にどのような規制であるかをごく簡単に説明します。

規則違反の罰則
このFFPの規定に違反したクラブは、UEFA管轄下の試合の出場権を剥奪されることになります。つまり、CLとELの出場資格を失うことになり、たとえ国内リーグで優勝したとしてもCLにもELにも出られません。

ただし、同規則はあくまでUEFA管轄下の試合の出場権であり、各国FAが同規則を採用するか否かは各国FAにゆだねられています。イングランドではFFPは採用する計画がないため、イングランドのクラブは仮にFFPに違反しても、国内のリーグ、カップの出場権には影響ありません。

とは言っても、ヨーロッパのカップ戦に出場資格が与えられないとなると、ビッグ・クラブにとっては深刻なマイナスだし、ビッグ・クラブ以外のクラブにとっても大きな報酬を失うことになるため、実質的には自国FAがFFPを採用するか否かによらず、全クラブがFFPの順守せざるを得なくなります。

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クラブは収入以上の支出は許されない
FFP規則の根本を単純に言うと、どのクラブも「本業で赤字を出してはいけない」というものです。これは、いくつか例外があり、実際にはFFPの判定対象となる「支出」にカウントされるのは主として移籍金と選手の給料が最も大きな要素となります。

以下は、FFP上「支出」にカウントされない支出です。
・スタジアムの建設・改築などの金額
・若手育成のための設備投資

尚、「収入」の部に関して言うと、通常の営業利益だけで、オーナーの出資金は含まれません。端的に言うと、大きく行って以下のような項目が収入にカウントされます。
・移籍で選手を売った時に受け取る移籍金
・試合の入場料収入
・リーグやFAから受け取る報奨金(テレビ放送や、成績に応じた賞金など)
・クラブのオフィシャル・グッズの販売などその他の営業利益
要は、クラブの本来の活動により得たお金だけがFFP上「収入」として見なされます。

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暫定運用期間中の例外措置
FFPの査定対象は今季(2011-12季)から始まっていますが、FFPに違反したクラブに罰則が適用されるのは2013-14季からです。要は、今季すでに多額の赤字を出したクラブも、2012-13季にはCLとELの出場資格の剥奪処分は受けません。

ただし、この赤字額は累積されて査定されるため、今赤字を出してしまうと3年後には間違いなくCLとELの出場資格を失うことになります。

FFPの査定
直近3年間の赤字の合計金額が50Mユーロ以内に収まっていることが必須となります。つまり、2011-12季 + 2012-13季 の赤字が50Mユーロを超えると、CLとELの出場資格を失います。

ただし、この「50Mユーロ」の例外措置は2015年以降10Mユーロずつ減って行き、2018年以降は支出が収入の範囲内に収まることが必須となります。

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大きな影響を受けるクラブ
FFPにより大きな影響を受けるクラブは、ビッグ・クラブ以外(収入が少ないクラブ)よりもビッグ・クラブ(支出が多いクラブ)の方です。このようなビッグ・クラブには多金持ちのオーナーがいて、そのオーナーの懐から毎年どんどんお金がつぎ込まれ、大枚はたいて世界のスター選手を獲得してきています。

FFPの導入によりこの夏から若干変わりましたが、昨年までのチェルシーやマンチェスター・シティが典型的な例です。毎年、移籍市場で売りに出す選手よりも遥かに多額の移籍金額を支払ってスター選手を獲得してきました。その移籍金額の差額(赤字)だけで、FFPにひっかかってしまいます。

その上、このような多額の移籍金額で獲得したスター選手は大抵は高額所得者ですから、選手の給料の総額も莫大な金額となっています。選手の給料が高い二大クラブがシティとチェルシーであることは有名ですが、シティではスター選手の週給が£250,000(日本円で3千2百50万円)と推測されています。今の為替相場で計算してしまうのは乱暴ですが、それにしても、日本のサラリーマンの平均年収は700万円くらいですから、平均的サラリーマンの5倍の年収を毎週もらっているわけです。単純計算すると、平均的サラリーマンの250倍の年収ということになります。

移籍金額と選手の給与という各クラブの二大支出要素を計算すると、シティは現オーナー下で毎年£130Mの赤字を出しているそうです。これは、FFP下では当然、アウトですから、支出を切り詰める必要が出てきます。

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シティの「対策」
上の例で、チェルシーの方はこの夏から既に移籍市場での活動がやや沈滞化しました。更に、給料の高い選手を積極的に出したことから、チェルシーは既にFFPを意識した企業活動に転換したと見られています。

いっぽう、マンチェスターシティはこの夏も太っ腹に移籍市場で活動していました。そのシティのFFP対策は、この夏のスタジアム名を「販売した」ことによって£400Mという多額の収入を得たことがみそになっています。

ただし、これはUEFAによって「オーナーの出資金」と同類の、収入として認められない収入となってしまう可能性はあります。その場合には、スポンサー収入が細かく規定される可能性が出てくるため、今回のシティのスタジアム命名権収入がFFPの査定でどう判定されるか、ということが注目されています。

その結論は、シティが2013-14季のCLもしくはEL出場資格の申請時にUEFAにより審査されるまで保留になっています。

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