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2011/10/31 アイブロックス悲劇(英国のフットボール悲劇)

1971年1月2日にスコットランドのアイブロックス・スタジアム(レンジャースのホーム)で起こった悲劇で、66人のレンジャース・ファンが亡くなりました。その大多数が10代の少年少女ファンだったという悲しい悲劇です。負傷者の数は145人と言われています。

オールド・ファーム(Old Firm)
スコットランド・リーグはトップ・ディビジョンが10チーム構成のため、各チームはシーズン中に4度ずつ対戦します。その中で最も伝統的な4試合がグラスゴーのセルティックとレンジャースのダービー戦で、オールド・ファーム(Old Firm)という通称で呼ばれています。更にスコットランド・リーグの伝統で、年4回のオールド・ファームのうち1回は必ずニュー・イヤーに日程が組まれます。

アイブロックス悲劇が起きたのは1971年1月2日、ニュー・イヤーのオールド・ファーム戦でした。イングランドの北にあるスコットランドの冬は寒く、気温がマイナスになることは日常茶飯事ですが、この日は特に寒い日で、最高気温もプラスにならなかったと記録されています。

事件の背景
この日のアイブロックスには8万人のファンが詰めかけていました。熱戦の末、アウェイのセルティックが89分に得点しました。ダービー戦に負ける辛さで目の前が真っ暗になったレンジャース・ファンのうち少なくない数のファンがこの時点で出口へと向かいました。ところがその直後にレンジャースが同点ゴールを決めました。試合は終幕の劇的なゴールで1-1と終わりました。

異常事態が発生したのはこの後でした。テラス席のスタンドから出口に向かう階段で、大混雑の中でレンジャース・ファン同士が重なり合い押し潰されるという状況が発生、この結果、下敷きになったファン66人が亡くなったのでした。

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事件の原因
この悲劇の正確な原因はわかっていません。一説では、89分のセルティックのゴールの時に帰途に着いたファンのうち多くのファンが、その後の同点ゴールでスタンドに戻ってきて、試合終了後に出口に向かったファンとかち合って異常な混雑状態になってしまった、というものです。

しかし、89分のゴールで帰った人々が戻ってきた時間から試合終了まで間が空きすぎているため、上記の説は正しくない、という説もあります。他の説では、試合終了後にスタンドから出口に向かうファンが階段で躓いて転んだ人がおり、ドミノ状態が発生したのではないか、というものもあります。被害者の多くが、スタンドから出口に向かう階段に設置されていた金網が凶器となったケースが報告されたことからも、こちらの説の方が原因として説得力があるものと見なされているそうです。

レンジャースの誓い
この悲劇発生時点で、レンジャースは当時のヨーロッパのフットボール・スタジアムの中では先進的な建築を誇っていたそうですが、しかしこのような悲劇が発生してしまいました。悲劇の直後に、レンジャースはクラブを上げて負傷者や遺族のお見舞いに走ったことは勿論ですが、「ファンがスタジアムで亡くなるようなことは二度と起こしてはいけない」と誓い、スタジアムの安全性を見直し、事故が起こった際にも被害を最小限に食い止めるような構造に立て直しを図りました。

「しかし、それから英国全体のスタジアムの安全性が見直されるまでの間に、1985年のブラッドフォード、1989年のヒルズバラと2つの大きな悲劇が起こってしまった」と、アイブロックス悲劇のメモリアル・グループは語ります。

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ヒルズバラとのジョイント・フラグ
2011年1月2日のアイブロックス悲劇40周年メモリアルに先駆けて、2010年にアイブロックス悲劇のメモリアル・グループがヒルズバラ遺族グループとのジョイント・フラグをリリースしました。これは、アイブロックス悲劇の66人の被害者の中の一人がリバプール市出身のファンだったことがきっかけで実現したものでした。



このジョイント・フラグはアイブロックス悲劇40周年メモリアルの前日に当たる2011年1月1日のリーグ戦(対ボルトン)で、アンフィールドでのお披露目が行われました。

両方の悲劇に居合わせた人物
ヒルズバラ悲劇当時のリバプール監督(当時はプレイヤー・マネジャー)、ケニー・ダルグリーシュは、セルティックでのシニア・デビューを目前に控えた若手選手として、スタンドで1971年1月2日のオールド・ファームを見ていました。「観客としてアイブロックス悲劇に、プレイヤー・マネジャーとしてヒルズバラ悲劇に直面した人間として、家族の大切さを何よりも強く感じるようになった」とケニーはオートバイオグラフィーで語っています。

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