プレミアリーグ観戦ガイド

観戦記
2012/1/17 ウィガン 0-1 マンチェスターシティ

パイ食い(pie eaters)

ウィガン対マンチェスターシティの試合の前に、サウスポートの滞在先でたまたまパイの話題になりました。その時、ウィガンの住民は「パイ食い(pie eaters)」というニックネーム(?)で呼ばれているという話を聞きました。それを教えてくれた人はウィガンにとって隣人にあたるセント・ヘレンの出身の人で、両地区はラグビー・リーグの強豪で有名で、ラグビー・リーグの試合で両者が対決する時にはセント・ヘレンのファンがウィガンのファンに向かって「パイ食い(pie eaters)」という野次を飛ばすのだそうです。

北のパイ もちろんこれはどちらかと言えば野次に当たる表現で、日常生活でウィガンの人に向かってそれを言うと失礼に当たる、とのことでした。このパイ食い(pie eaters)というニックネームは、たとえばリバプールのファンが「bin dippers(ゴミ箱あさり)」と他都市の人々からやじられるのと同様に、都市間バンターと言う感じのようです。

ちなみに、後で確認したところ、ウィガンがパイ食いと呼ばれるようになったいきさつは、かつてイングランドで有名なパイ製造会社がウィガンにあったからとのこと。ただし、「南の人から言わせると(ウィガンだけでなく)北全体が『パイ食い』で、北の中ではウィガンだけが『パイ食い』」だそうです。これを教えてくれたのは北の人だけども、イングランドの南北間のライバル意識は常に面白いものがあります。

脱線ついでにパイの話をすると、イングランドの北ではパイと言えば日本で言うタルト生地で、南では日本のパイ生地、と食べ物そのものが異なるのだそうです。今も北ではどこに行ってもパイと言えばタルト生地の食べ物が出てきます念のため。

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DWスタジアムのスタンド裏 ウィガンでの試合の日の会話に戻ります。
「今日のDWスタジアムでもパイを食べる人の姿がたくさん見られるよ」とくすくす笑いながら教えてくれました。

これは何と、真相でした。

DWスタジアムのスタンドに入ると、なんと、なんと....私の周りのウィガン・ファンのかなり多くの人が本当にパイを食べているのです。すごい!

スタンド 中でもすごかったのは、私の隣に座った4人組の男性グループ。試合開始前に全員がひとつずつパイを食べていたのですが、なんと、ハーフタイムにもまた新たにパイを買ってきて、全員がまた1つずつ、2ラウンド目のパイを食べ始めた時には、私は笑いをこらえるのに必死でした。ここで笑っては失礼だろうと思いつつ...


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最下位なのにファンは監督とチームを全面的にサポート

翌日のスポーツ紙で、多くの新聞が書いていましたが、「イングランド北部で監督クビのでもをやっているのはブラックバーンだけ。最下位でもウィガンではファンは全面的に監督支持の態度を変えない」と言う話です。

スタンド これは、本当でした。

私が座ったのホーム・サポーター席だったのだが、試合ではシティが優勢に立った前半も、シティが得点した後も、周囲のファンは熱心に応援を続けました。

....もちろん、アンフィールドに比べるとあまり盛大な応援とは言えないのですが、もともと静かなファンと言われているウィガンのファンにしては、精いっぱい大声でチームを応援していました。

マスコット 前半は特にウィガンのチャンスはあまりなかったのだけど、チャンスの度に大声で頑張れウィガン!と叫ぶ声、そして後半はレフリーのあやしい判定の際には「マーティン・アトキンソン」とレフリーの名前を呼んで非難の野次。シティが得点チャンスを逃した瞬間に「お金の無駄使い」と野次。などなど、精一杯チームを応援する声が聞こえるばかりで、チームや監督に対する批判はまったくありませんでした。

アウェイ・スタンドのシティ・ファンが終始大声援を送ったのは事実で、アウェイ・スタンドの方が音量では勝っていたのだけども、それでも、最下位のチームのファンとしてはかなり忠誠だったと、心から感銘を受けました。

しかも、1-0で負けた試合の後で、スタンドのファンはみなチームに向かって拍手していました。いい場面を見られました。

ちなみに、ウィガン・ファンが選手の歌を歌ったのですが、(一度だけですが)その歌がマキシ・ロドリゲスの歌と同じトーンだったので、私はついうっかり「マキシーーー、マキシ・ロドリゲース」と言いそうになって口を抑えるのに必死でした(苦笑)


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アウェイ・サポーターはお祭り騒ぎ

今季のシティは、ホームでもアウェイでも、ファンが大声援を発する姿が見られます。この試合でも同じでした。

ウィガンの町はラグビー・リーグの町なので、フットボール・チームに対する期待は決して大きくない(?)せいか、試合においても比較的静かなファン、というイメージです。

アウェイスタンド ところがこの日は、夜の8時試合開始だったので、試合前には既に真っ暗だったのですが、スタジアム近辺では大きな歌声が聞こえました。なにかと思いきや、アウェイ・サポーターでした。

もちろん、シティ・ファンは試合中を通してずっと元気に歌い続けました。

ウィガンとマンチェスターは地理的には本当に近く、アウェイ・スタンドはほとんど空席がないくらいに埋まっていました。

その満員のスタンドからBlue Moonがなんども聞こえました。いい感じでした。


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ラグビー・リーグの町ウィガン

試合内容は決して面白かったとは言えないかもしれないけども、そんな内容の試合の後でも、ウィガンの人々はとても親切で明るくて良い感じでした。

ウィガン駅 DWスタジアムはウィガンの二つの駅から徒歩30分くらいの場所にあります。前回、2009年の5月に来た時には真昼間だったので地図を見ながら歩いたのですが、今回は夜の試合だったし寒かったので、行きはタクシーで行くことにしました。前回の経験で、場所も近いだろうしタクシー料金もたいしてかからないだろうと思ったのです。

料金は£5でお釣りがきたのですが(運転手さんが良い人だったのでチップを含めて£5払いました)、その短い車中の会話はなかなかおもしろかったのでした。

行先を告げると、運転手さんがいきなり「シティ・ファンなの?」と質問してくるのです。後から振り返ると、そもそもウィガン・ファンは地元の人ばかりだから(私は誰の目にも外国人に見えるだろうし)、鉄道の駅からタクシーに乗る人などいないのでしょう。ただし、その質問には「いや、ウィガンの応援です」と答えましたが...基本的に、第三者の試合を見に行く時には「ホーム側を応援する」を原則としているためです。

夜のDWスタジアム こちらから「運転手さんはウィガンのファンですか?」と質問をすると、「うーん、そうだけど...でも、僕はフットボールの方はあまり熱烈ではないんだ。ラグビー・リーグの方は熱烈だけど」と苦笑。

私はラグビー・リーグはあまり興味はなくて、ウィガンのチームが強いという程度しか知らなかったので、正直にそう言った上で「ウィガンは今もトップですか?」と聞くと、運転手さん(口が若干重たくなり)「うーーーん...トップのチームのひとつだけどね。今も」と苦笑。

後から、冒頭のセント・ヘレン出身の知人にその話を言うと、これまた爆笑。「彼にとっては『トップだ!』と胸を張って答えられなかったのは相当悔しかったと思うよ。何故なら、今はセント・ヘレンがトップだから!」との解説。なるほど、隣人間で首位の座を奪いあっているわけか、と苦笑しました。ラグビー・リーグ版某マンチェスターの2チームという感じですか。

夜のDWスタジアム ちなみにその運転手さんは、フットボールの方はそんなに熱烈ではない、とは言いながらやはり地元のチームであるウィガン・アスレチックFCのことも応援していることは明らかでした。「今日の試合は苦戦するだろうけどね...シティは今絶好調のリーグ・リーダーだからね。でもなんとか勝って欲しいなあ」と言っていました。ウィガンの苦境や相手チームの好調ぶりをちゃんと知っているのですから、やはり市民が力を合わせて地元のチームを応援している様子が伺えました。


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ウィガンの人々はすごく親切だった

さて、試合の帰り道は、駅まで歩いたわけですが、何度も何度も迷いながら辛うじてたどり着きました。

試合後。時間は22:00を過ぎており、帰り道はやはりすごく混雑していました。暗いし寒いし、近道に見える道を通って帰ろうと考えたのが運のつきでした。2009年の時には、遠回りだけどショッピング・センターを抜けて行き、まっすぐの道を通ったのですが、今回はスタンドがショッピングセンターのちょうど裏側に当たる場所だったこともあり、出口を出てすぐ左側にある橋ををわたることにしました。

帰り道(真っ暗!) その橋をわたるところくらいまでは満員電車のような混雑だったのが、気が付くとどんどん人は減ります。車で来ている人が駐車場へと散って行ったのでしょう。次第に、目の前を歩く人が殆どいなくなりました。

不安になって周囲の人に「駅に行きたいのですが」と尋ねると、「この道は駅への道」と教えてくれました。ほっとしながら歩いてゆくと、曲がり角にぶち当たりました。

ふと見ると、さきほど道を尋ねたカップルが立ち止まって私の方を見ています。何かと思いきや、その二人は「駅に行く道はこっち」と右側を指差して、「道なりにずっと行き、二股に分かれている道にきたら右に行くと駅に出る」と教えてくれた後で、彼らは駅とは逆の方向に去って行きました。

つまり、私に道を教えてくれるためにわざわざ待っていたくれたのです。なんと親切な....と感激しながら教えられた道を行きました。

帰り道(真っ暗!) そして、最後の二股に分かれている道、らしきところに差し掛かった時に、私は、さきほどの教えを忘れてしまっていて、ふと左側に行きそうになりました。すると、少し前にいた男性が私の方を振り返って、「こっちだよ」と手招きをしてくれたのです。この人は、たぶんさきほどのカップルと私との会話を聞いていて、駅に向かう道を教えてくれたのだと思います。

などと、多くの人に親切にされながら、無事、サウスポートまで帰りつきました。

今回、ウィガンには良い印象を抱いたということもあり、なんとかウィガンがプレミアリーグに残れることを祈っています。


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