プレミアリーグ観戦ガイド

観戦記
2008/09/14 ストークシティ 2-3 エバトン

今回はアンフィールドでマンチェスターユナイテッド戦を見るために来ました。その翌日の日曜日はストークに行き、ストーク対エバトンを見ることにしました。



■9/14 リバプールからストークへ

7:00起床、7:30に早々に朝食に行く。たっぷり朝食を平らげて今日一日のストーク訪問に備えることにした。部屋に戻って早々にコーチ・ステーションに向けて出発する。8:40にはNorton Stのコーチ・ステーションに着いていた。しかし、これまで必ずあった切符売り場が閉じている。あれと思うと自動発券機が並んでいて、そこで人々が操作していた。係員らしき人に尋ねると、親切に切符の発券までやってくれた。システムは自動化しても人々の気質は変わらない。大都会にはない気さくなところがLiverpoolの良さだ。
マシュー・ストリート

売店も閉まっていて、自動販売機が並んでいる。ペットボトルの水を買って持ってゆくことにした。自動販売機の前に座っていたら、私の次に水を買い求めた地元の人らしき(16-18歳くらい)が自動販売機と格闘している。覗き込んでどうしたの、というと、なんとペットボトルが溝に詰まってひっかかっている。少年は暫く格闘した挙句、見事ボトルを取り出すことに成功した。私の方を見てにっこり笑ってガッツポーズ。こういうおおらかさもLiverpoolならではだ。この町には何度目か忘れたくらいに訪れているし、20年以上前に初めて訪れた時のどんよりした暗さ、失業者とすり、置き引きなどの金銭目当ての犯罪が多発する町だったのに、次第に豊かになってきて金持ちの国の第四の都市に風変わりした。町は豊かになって、明るくなって、金銭目当ての犯罪は激減した。しかし人々の気質は変わらない。この町が好きだということを改めて感じた。

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■ストークへのバス旅行

9:00、さてバスに乗ってストークへ。初めての町なので車中、窓の外から景色を見て楽しむことにした。途中、典型的なイングランドの田舎の風景を経て、Warringtonに着く。それから再びモーターウェイに入り、定刻の10:15にStoke on Trentに着く。正確に言うとHarnlyという町にあたるのだが、ストークのコーチ・ステーションにともかく着いた。ひどく寂しい町並みで、ただっ広いコーチ・ステーションはぱらぱらとバス待ちの人がいる程度だった。建物の端まで歩いて行くと、ラッキーなことに案内の窓口が1つ開いていた(ちなみに、帰り、16:30過ぎに着いたときには既に閉まっていた)。フットボール・スタジアムに行きたいというと、「直行のバスはなくて最寄のバス停から暫く歩きになる」と言われた。町の地図をくれて、下りるべくバス停をメモ用紙に書いてくれた。親切だった。感謝して、教えてもらったバス停に行く。

間もなくバスが着き、乗り込んだ。さきほどもらったメモを見せて、ここで降りたいと運転手さんにお願いする。運転手さんも親切な人だった。15分くらい走って目的地に着く。降りるときに「ブリタニア・スタジアムへはどうやって行くのですか」と質問すると、運転手さんは暫く考えて、もう少し乗っているようにとのこと。あらら、バス停ではなくもっと近い場所まで連れて行ってくれるということだった。なんと親切だろうと感激する。バスは少し走ってロータリーを越えてちょっといったところで運転手さんはバスを止めてくれた。お礼を言って降りようとすると、右側の遊歩道を指差し、ここをまっすぐ暫く歩くとスタジアムに着くから、と教えてくれた。

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■ブリタニア・スタジアム

さて、歩けど歩けど、前に何も見えない。道行く人もいないため、尋ねることもできない。本当にスタジアムがあるのだろうかと一時は不安になったほどに長いこと歩いた末に、やっとスタジアムが見えた。30分くらいは歩いたと思う。そこからぐにゃぐにゃした道を通って、やっと人がいる道に行き着いた。しかもスタジアムも見える。一気に緊張がほぐれた。スタジアムに入り、そこからチケットオフィスへの道を周囲の人に聞きまわりながらたどり着いた。

11:15、チケットオフィスに行く。時間が早かったとはいえ、列はまったくできてなかった。予約受け取り窓口に行って名前を告げると、暫くして私の名前の入ったチケットが渡された。チケットを受け取りが無事済んだ。

ほっとしたところで、次はトイレに入って一休みしようと思った。ちなみに、ストーク日帰り旅行ではとことんトイレに苦労したのだが、これがまず最初。コーチステーションではトイレに行かずにそのままバスに乗ったので、リバプールを出てからはこれが初めてのトイレだった。
マッチディだがまだ人がいないブリタニア・スタジアム

スタジアムのスタッフに、トイレはどこかと尋ねる。まず最初の答えが、「スタジアムの中にしかトイレはない」というもの。げげっと思い、ちょっと歩いたところで別のスタッフに同じ質問をした。やはりここでもトイレはないと答え(あるはずはないと思ったものの)。しかたないので近くのパブに行こうと思ってパブはないかと尋ねると、来た道を戻ったところにパブがあると教えてくれた。とぼとぼ戻り、入り口の近くで三人目のスタッフにトイレを尋ねる。すると、スタジアムの中にパブがあるのでそこにトイレがあると教えてくれた。ふむ。パブの入り口にガードの人という感じの怖そうな大柄な男性が4人いた。トイレに行きたい気持ちが強かったので、恐れず尋ねた。すると、にっこり笑って「どうぞ」といってくれて、親切にトイレの場所を教えてくれた。そのパブは、会員専用パブという感じだった。昔のアンフィールドのサポーターズクラブ用のラウンジみたいな感じだろうか。

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■スタジアム近辺のパブ

やっと落ち着いた。まだ試合まで時間があったので、せっかくだからパブに行ってみることにした。バス停から30分森の中を歩いた末に、やっと発見した建物がホテルで、そのホテルのパブがスタジアム最寄りのパブだった。最寄というよりは、スタジアムから歩いて行けそうな距離には他に何もない。凄いところに来てしまったものだとしみじみ感じた。時間つぶしのために街中に戻るのは論外だった(再び、あの森の中の道を歩く気にはなれなかった)。迷わず、パブに入ることにした。
アウェイ・サポーター専用の入り口

入ると、中はエバトン・ファンで満員だった。これまでの人生の中でリバプール市を訪れること30回余り(もう回数は数えられなくなっていた)、でも今までこんなに大量のエバトン・ファンをまとめて見たのはこれが初めてだった。エバトンの試合を見るのもこれが初めてだったし、そもそもエバトン・ファンがこんなに大量に存在するのだと知って驚いた、と言っても過言ではなかった。しかも、その真相を知ったのはリバプール市内ではなくストークだったというのも苦笑ものだった。

ともあれ、パブの中にはホーム・ファンも半分くらいだろうと思う。いずれにせよ、昨日のマンU戦みたいな隔離政策はなく、両ファンが交じり合って仲良く談話している姿が見えた。これがイングランドの典型的なマッチ・デイだと思った。マンU戦以外はリバプールもそうなのだが。

ちなみにパブのカウンターは凄い列が出来ていた。なにしろスタジアム近辺の唯一のパブだ。私もその列の中のひとつに並び、自分の番を待つ間、周囲の会話がそれとなく耳に入った。

エバトン・ファン(ストーク・ファンに向かって)「いいね、この雰囲気。こんなに多くのアウェイ・サポーターが来たのはこれが初めてじゃないの?」(ストークはこれが初のプレミア所属シーズンだった)
ストーク・ファン「いや、この間、アストン・ビラが来た時にこんな感じだった。うん、いい雰囲気だよね」

なんとも、和やかなムードだ。ストーク・ファンは全く悪びれずにエバトン・ファンと楽しく会話をしていた。ストーク・ファンは多分、ほぼ全員が地元の住民なのだろうという印象がぴりびりと感じられた。

やっと自分の番がきて、ジン・トニックを買って裏庭に出る。ここもエバトン・ファンの集団に占拠されていた。グラスをちょっと置かせてもらおうと思ってエバトン・ファンと言葉を交わしたが、驚いたことに(驚くことはなかったかもしれないが)、エバトン・ファンはとてもいい感じの人々だった。みんな、穏やかに試合前のひと時をエバトン・ファン同士とかストーク・ファンと一緒に、会話を楽しんでいた。

1杯目を飲み終わったところで適度な時間になっていたので、そろそろスタジアムに戻ろうかと思った。

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■ホットドッグ

スタジアムに戻り、ゲートをくぐる前にホットドッグを食べることにした。たぶんまずいだろうと思いつつ、ひょっとしてストークのホットドッグは少しマシかもしれない?と勝手な期待を寄せて買ってみた。が、やはりまずかった。以前に、ビラ・パークでホットドッグを買った時に感じたのだが、イングランドのフットボール・スタジアムのホットドッグは全て同じ業者が卸しているのだろうか。そうだとしてもおかしくないと思うくらいの(まずい)味の標準化ぶりだった。

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■スタンド

さていよいよゲートをくぐりスタンドに入る。私の席は昨年のウィガン戦の時と似たような位置で、前から3列目だった。というか、間抜けなことに、最初は何故か一列間違えて、4列目に座っていた。自分は全く気付かず正しい座席に座っていると信じていたのだが、間違っていたのだった。

私が自分の(と思っていた)席について5-6分した頃だろうか、男の人が来て、私の席をじーっと見て不思議そうな顔をした。それからおもむろに私の隣に座っていた別の男性にチケットを見せて「自分の席はここのはずだが」と言っている。見せられた方の男性は、チケットをじーっと見て、「このチケットには15スタンドと書かれているから隣ですよ」と言う。その男性は恥ずかしそうに笑いながら去って行った。

その後で、隣の人が私に向かってニンマリ笑って、「ちゃんとチケットを見ないで入ってくる人もいるんだよね」と言う。なにしろ私はその時点では自分が間違っているとは全く思わず、「本当ですね」と言って笑った。

暫くして、さっきの男性が戻ってきた。今度はスチュアードもついてきている。何事かと思い、私は隣の男性と顔を見合せながら首をひねった。それから、ふと思って私は自分のチケットを取りだし、隣の男性に見せた。すると、その男性は「あらあら...チケット見ないで入ってきたのはあなたの方だったね」と大笑い。

初めて自分の間違いに気付いた私は明らかに顔が真っ赤になったと思う。それを見て、戻ってきた男性は真相に気付いたらしい。顰蹙してごめんなさいと頭を下げた私に向かって、爆笑しながらやさしく手を振ってくれた。なんともいい感じの人々だ。うるさい人ならばむっとするところだろうが、こんな風におおらかに笑って許してもらえたのはうれしいことだった。

さて、自分の席に着く。ちょうどその時、ピッチの上ではウォームアップが始まった。

先に買っておいたプログラムを読んで両チームの勉強をすることにした。というか、さすがにエバトンの選手は知っていたがストークの方があまり知らない。どちらのチームを応援するかという点では迷うことはなかったものの、「応援している」ストークの選手をあまりにも知らないのでは失礼だ、と思い、真剣にマッチプログラムを読んだ。

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■ストーク対エバトン

ストークの選手の勉強に熱中している間に試合開始の時間となった。その時にスタジアムを見回すと、なんと全スタンドに殆ど空席が見当たらなかった。特に凄かったのはアウェイ・スタンドで、あまりにも明らかに真っ青だったのには、逆に感動を覚えた。しかも、エバトン・ファンは元気に歌を歌っていた。初めてエバトン・ファンの応援風景を見た。これが最後になるかもしれないが。
こんなにたくさんのエバトン・ファンが

そして、ホーム側からアウェイ・スタンドに向かってエールを送った。それに対してアウェイ・スタンドの青い集団は即座にエールを返した。典型的イングランドのフットボールスタジアムだった。いい感じだった。

ちなみに、試合を通して両ファンの声援は凄かった。あまりの音量に、空気が振動するのを感じたのは随分と久しぶりだったような気さえした。最近のアンフィールドは、こんな耳をふさぐような騒音はなかなか当たらない。ストークのファンのチームへの誇りと期待が手に取るように分かった。それを知っただけでも、自然にストークを応援したくなったのではないかと思う。(もちろん、相手チームが相手チームだっただけに、ホーム側を応援する気持ちは最初からまったく躊躇なかったが)

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■ホーム・スタンドのエバトン・ファン

試合開始。ファンの声援は凄かったが、いかんせんチームの動きはいまいちだった。アウェイスタンドも声援が凄かったが、エバトンの方もスタンドの声援に全く答えられずに苦戦していた。

前半は無得点で終わるかに見えたところで、Yakubuの先制ゴールが出た。ふむ。しかたないか...と思った。(当然だが)アウェイスタンドは火がついたように沸いた。

すると、私の前の列に座っている男性の2人組がおもむろに立ち上がり、アウェイ・スタンドに向かってガッツ・ポーズしている。ふむ。ホーム・スタンドにアウェイ・サポーターが座っていること自体が誉められたことではないが(たまーにあることだとは事実だが)、自分のチームのゴールをこうも堂々と祝ってしまうファンは珍しい。

もちろん、「ホーム・スタンドのアウェイ・サポーター」の存在は周囲のストーク・ファンにばればれだった。しかし、ストーク・ファンは(立派なことに)、その「ホーム・スタンドのアウェイ・サポーター」2人組みに対しては何もせず、ひたすらピッチに向かってチームの声援を送った。
良い試合でした

0-1のまま前半終了。ハーフタイムになり、周囲のホームファンが「やはりプレミアの壁は高い」とため息をつく。なんとけなげなファンだろう。このファンのためにも、ストークには何としてでも点を取って欲しいと祈る気持ちになった。

これまでも、だいたい、人さまの試合を見に行くと、周囲のファンにつられて自然にホーム側のチームを応援してきたものだが、今回は特に「是非勝ってほしい」と気合が入るのを感じた。...勿論、相手が相手だけに普通のケースよりは気合は入っても当然かもしれないが。

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■ストーク対エバトン(後半の白熱戦)

後半。エバトンが調子を上げて、簡単に2点目を入れてしまった。勿論アウェイ・スタンド(と、私の前の列の2人)は割れるように喜んだ。

しかし、ホーム・スタンドは全く気落ちした様子もなく、より大きな声を張り上げてチームを応援した。素晴らしい...こんなファンのためにチームは答えてあげて欲しい、と思っていたところに、見事に祈りが通じた。No.24 Rory Delapのロング・スローインからストークが1点を入れたのだ。

この時のスタンドはひっくり返るかのような音を出した。まだ1-2とリードされているというのに、まるで勝ったかのような喜び方で、一斉にアウェイスタンドに向かって「それ見たことか!」と指を指している。すばらしい...

ちなみに、私は(自然に)飛びあがって喜び、周囲の知らない人々と握手してゴールを祝った。後ろの列を振り返り、試合前に席を間違えてごめんなさいした男性とも握手した。もちろん、その男性は(何のわだかまりもなく)満面に笑みを讃えてゴールを祝った。

ストークのファンを心から「えらい」と思ったのは、アウェイ・サポーターに対する「それ見たことか」チャントは、例の「ホーム・スタンドのアウェイ・サポーター」2人組みに対しては何もしなかった。

さて、これをきっかけにストークの反撃が始まった。スタンドの騒音に押されるようにオープンプレイから同点ゴールが出た...と思ってスタンドは飛び上がって喜んだ瞬間に、レフリーはゴール無効を告げた。ファウルがあったらしい。それからというもの、レフリーがホーム・ファンの非難を一身に浴びることになった。

ホーム・スタンドからレフリーに激しいブーを浴びせる中、ストークは再びDelopのロングスローインから得点。今度こそ同点だった。スローインが直接入ったかと思ったがエバトンが当ててown goalだった。それほどの長距離スローインだった。

同点に追いつき、ファンは沸きに沸いた。私も一緒に立ち上がって喜んだ。1点目の時と同じような祝いゴールが交わされた。

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■ストーク対エバトン(事件)

騒音がピークに達した時、事件が起こった。なんと、エバトンはアンラッキーなペナルティ判定の犠牲になり、それを文句言ったためにデビッド・モーイズがスタンドに追い出されたのだった。おとなしく(?)退場判定を受けてスタンドに上がって行ったモーイズを、周囲のホーム・サポーターは割れるような拍手で迎えた。モーイズはホーム・サポーターに対して手を振った。これに対しては、ホーム・サポーターから大きな拍手が沸いた。なんと良い風景だろう。ますますストークのファンが好きになってきた。

しかし、ピッチの上では監督を失ったエバトンが頑張ってしまい、勝ち越し点を上げてしまった。ストークの追撃はここまでで終わった。残念ながら2-3とエバトンが優位に立った。

と思った瞬間に、私の前の列にいたストーク・ファンが、隣の「ホーム・スタンドのアウェイ・サポーター」2人組みに向かって「今の得点者は誰?」と質問。尋ねられたエバトン・ファンは「たぶんケイヒルだと思う」と回答。質問者はお礼を言って会話が終わった。

これも典型的イングランドのフットボールだ。「ホーム・スタンドのアウェイ・サポーター」に対して嫌がらせをするでもなく、普通に受け止めた上で、相手チームに関する情報を尋ねるという、なんとも冷静なやり取りが行われる。

さて試合は、残念ながらストークは盛大なスタンドの応援も虚しく試合は2-3のままエバトンの勝利で終わった。ファイナル・ホイッスルの直後に、ホームファンは全員、立ち上がって拍手を送った。両チームの選手達はスタンド中に向かって手を振った。良い風景だった。試合も面白かった。エバトンの試合をスタンドで見て「面白かった」という感想を抱くことがあるとは、夢にも思わなかった。

ここに来るまでにえらく苦労したが、来て良かったとしみじみ思った。

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■ブリタニア・スタジアムから帰途へ

さて私は、スタジアムでトイレに入った後で帰途に着くことにした。時計を見ると時間は15:00を過ぎたばかりだった。リバプール行きのバスは17:50。時間はたっぷりあるから、街中に戻ったらパブでコーヒーでも飲もうと思って帰途に着いた。

ところがこれは大きな誤算だったことがすぐに判明する。ここに来るまでに随分苦労したが、なんと帰りはもっと苦労する羽目に陥ったのだった。

スタジアムのスタッフにcity centreまでどう行けば良いのかとたずねると、歩くしかない、とあっさり言われて面喰う。ふむ。むむむ、道はまっすぐだというが、バスはないらしい。きた時のバス停まで戻る気にもなれず、というか、スタジアムの係員が「歩くしかない」というのだから、きっとあのバス停で待っていてもパスは来ないのだろう。しかたなく、歩くことにした。教えられた方向は、来た時のバス停とは全く逆に方向だった。
何もないところにスタジアムがある

ふと見ると、かなり多くの人が「街中」の方向に向かって歩いている。この人たちに着いて行けば街中に行くのだろうと思い、頑張って歩いた。ストークの赤白のシャツの中に青いシャツも混じって、ファンが道を埋め尽くして市内への道を歩いた。

結果的には1時間以上歩き続けて市内のバス停に着くという長い道のりとなった。しかも、市内のバス停といってもコーチ・ステーションではなく、地図からするとコーチ・ステーションまでの道のりの半分くらいのところにあるもう一つのtown centreに1時間かかって歩きついたという結末だ。

途中、歩く人々がまばらになった。ストークのファンは、地元の住民が多いのだろう。街中まで行かずに自宅に向かう人も多いのだろうと思った。無意識に人々の後をついてゆくのは危険だと思い、曲がり角の度に人に「タウン・センターはどちらの方向ですか」とたずねながら、なんとかたどり着くことが出来たのだった。

しかし、リバプール行きのバスに乗るにはコーチ・ステーションまで行かねばならない。街中で道を尋ねると「ここからバスで行くしかない」と教えてくれた。うむむ、なんとむずかしいスタジアムだろうと思った。

教えられたバス停でバスを待つ。隣にいた、既にバス待ちをしていたストークシティのシャツを着ていた少年(16歳くらい)に、地図を見せて「コーチステーションまで行きたいのだが」というと、「大丈夫。僕も同じところに行くから」と言ってくれた。なんとも親切だし、心強かった。暫く待ってもパスは来なかったが、その少年がいたので安心して待つことにした。

暫くして、ストークシティのシャツを着た女の子2人連れがバス停に来た。反対側のバス停にバスが止まった。その女の子はそちらのバスに行き、それからこっちに向かって「このバスに乗りなさい」と叫んでいる。さっきの少年は私の方を向いてうなづく。みんなで走って行き、そのバスに乗った。運転手さんに「Harnleyに行くかと尋ねると」行くとのこと。なんとものどかな田舎町だろう。バス待ちの地元の人々が、こうやって協力し合う姿はいい感じだと思った。

バスは鉄道の駅を通り過ぎて、迂回した末に、コーチ・ステーションに着いた。やっとこれでリバプールに帰れる、とほっとした。すると、バスの中で、さきほどの少年が私の方を振り返ってうなづく。ここで降りなさい、と言ってくれていたのだ。少し前を歩いていたその少年に、目でお礼を言って別れた。

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■ストークのトイレ探し

時計を見ると17:00だった。あと50分あるから、お茶でも飲もうと思ったところで、ふと見ると周囲のパブらしき場所は全て閉まっていた。日曜日は閉まるのだろう。コーチステーションは、バスを待つ人がぱらぱらいたのと、脇にタクシーが何台か並んでいたのを除くと死んだようにどんよりと暗い感じだった。パブも閉まっていると分かった時、ストークのトイレ探しの苦戦第二弾が始まった。

コーチステーションのタクシー乗り場のすぐ横に、有料トイレがあった。見るとP10でP5,P10のみ投入可能と書かれていた。なんと不運なことにP20しかもっていない。先ほどペットボトルを買いに入ったカフェに入って事情を話すと、P10コインはないとの回答。その店にトイレはないとのこと。ん?するとスタッフはトイレに行かないのだろうかと思いつつも、店の中にトイレらしきものは見当たらず、諦めた。
ストークの街中

ペットボトルを手に外に出る。バス待ちしている人々に、片っ端から話しかけ、トイレの場所とP10の両替を尋ね回った。何人目かの人が「そのトイレは壊れているから入れないよ」と教えてくれた。なんと...

覚悟を決めて、客待ちをしているタクシーのところに行き、事情を話して最寄のトイレまで乗せていって欲しいと頼んだ。運転手さん(インド系らしい)、一瞬難しい顔をしたが、とにかく乗りなさいと言ってくれた。ちょっと離れたところに無料のトイレがあるので、ということでそこまで行ってくれた。

トイレの前に着き、私が£4払って降りようとした時に、運転手さんは「ここで待っているから、もし閉まっていたら戻ってきなさい。他のところに連れて行くから」といってくれた。親切だ。お礼を言ってトイレに行く。すると、なんとトイレは閉まっていた。げげげっ。次のトイレも閉まっていた。というか、有料トイレだがコーチステーション同様にコインを受け付けなかった。なんと、ストークには使えるトイレがないのだろうか?と、この時真面目に恐怖を感じた。
ストークのメイン・ストリート

道中、運転手さんに「この町の住民じゃないの?」と聞かれたので、私は観光客で、これから17:50のバスに乗ってリバプールまで戻る、と答える。運転手さんは時計を見て「時間はあるから大丈夫」と言ってくれた。この町でトイレに行きたくなったらどうするの?と聞くと、運転手さんは「うん。それが問題なんだよね」とあっさり答える。なんとも...ストークに観光客はこないのだろうか。

ともあれ、最後の手段というやつで運転手さんは、自分の店だというカレー・レストランに連れて行ってくれた。閉まっていたが、中に従業員がいて、運転手さんが合図したらドアを開けてくれた。かくしてめでたく目的を達成したときには時間は既に17:25、バスの時間まで、そんなに長い待ち時間ではなくなっていた。幸か不幸か...

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■やっとリバプールへ

お礼を言って運転手さんと分かれ、リバプール行きのバス乗り場に行く。すると、5分もしないうちにLiverpoolと書いたバスが到着した。かくして、初めてのストーク訪問はバタバタして終わった。10:15から17:50までの滞在中、観光する時間はゼロ、歩き回ってフットボールを見て、トイレを探して動き回り、暇をもてあますことなく終わった。

19:10 Norton Stのコーチステーションに着いた。めまぐるしい一日だったが、貴重な経験が出来た。ストークにはまた来たいと思った。でも、日曜日は避けよう...


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