プレミアリーグ観戦ガイド

観戦記
2004/11/27 マンチェスターシティ 2-0 アストンビラ

帰り道に苦労した観戦レポートを続けます。これは、アンフィールドにアーセナル戦を見に行った時のことで、その前日にマンチェスターまで行き、17:15開始のシティ対ビラを見ました。



 ■チケット確保

今回は、計画が早かったので、シティのオフィシャル・サイトでビラ戦のチケットが発売になって直後に申し込み、かなり良い席が取れた。シティが旧スタジアムのメイン・ロードからシティ・オブ・マンチェスター・スタジアムに移転した初シーズンのことだった。

シティのwebsiteにチケット探しに行ってみて驚いたのは、新スタジアムになってシステムが変更したらしく、1回限りの観戦チケット購入でも必ずカードを入手しなければいけないという仕組みになっていた。前回、メイン・ロード(旧スタジアム)に行った時には郵便でチケット予約ができたのだが。

ともあれ、案内に従ってまずはユーザー登録した。住所氏名に加えてクレジットカードの明細まで入力しなければカードがもらえない仕組みになっていた。要するに、一人がまとめて4枚購入するという芸当も不可能になっていた。ただし、カードといっても発行料は£2.5なので、カード代金と管理費すらカバーできない金額だろうと思う。セキュリティの理由が大きいのだろう。ということは、とにかく登録しなければ試合が見られないと思った。幸い、紆余曲折はありながらも無事登録でき、カードも郵便で届いた。

届いたカードの封筒を見ると、住所はめちゃめちゃ間違っていて、よく届いたなあと感激したくらいだった(地元の郵便局には感謝に耐えない)。住所の間違いはメールで連絡すると、すぐに「登録を直した」という連絡が来た。そして、肝心のシティ対ビラ戦も無事、予約ができた。さて、準備は万端。

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 ■荷物トラブル

試合とは直接関係ないのだが、なんとこの時、人生で初めて航空機の荷物トラブルに会ってしまった。

いつものように成田からパリ、パリからマンチェスターというエールフランスの朝便でとんだのだが、成田からパリの便が風の影響でえらい遅れて到着した。パリ-マンチェスターは18:30発だったがパリに到着したのは18:10だった。

ボーディングカウンターに行くと、マンチェスター行きはもう締め切ったと言われた。成田で預けたスーツケースのことだけが問題だったのでその旨告げたところ、ボーディングの係員が電話で調べてくれた。暫くやり取りがあった後で、「間に合ったからこの便に乗って」と乗せてくれた。この時点でフランス人の正確さをもう少し疑うべきだったかもしれない。もっと後になって気づいたことだが、仮に本当に荷物が先に行ったにせよ、自分が先に着くより自分が後に着く方がトラブルとしては小さくて済む。今後このような場面に直面したら、何があっても次の便で行くと主張しようと心に誓った。

マンチェスターには定刻に着き、パスポートコントロールを通ってbaggage claimに行く。荷物を待っている乗客はあまりいなくて、すぐに全員が散って言った。ふと気づくと誰も引き取り手のいない荷物が「Rush」という札がついてベルトコンベアに乗っている。この時にやはりパリのフランス人にやられた、と気づいた。私の荷物と誰か他の人の荷物を間違えてマンチェスター行きに積み込んだのだろう。と言うことは少なくとももう一人の乗客が私と同じ目に合ったわけだ。

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 ■失われた荷物

諦めて近くの係員に事情を説明したところ、荷物トラブルの窓口を教えてくれた。えらく同情的な口調だった。

トラブル窓口に行き、事情を説明すると、紙に自分の詳細と荷物の詳細を書けと言われた。紙を書いている間にその係員が再度荷物を探しに行くと言って姿を消した。良くみるとその窓口には荷物が山積みになっていた。こんなにトラブルが多いのか、と驚いたというのが本音。暫くして係員が戻ってきて、さきほどの引き取り手のいない荷物も運ばれてきた。

それから成田で渡された荷物タグの番号を見せて、係員が端末で照合してくれた。すぐに返答「あなたの荷物はまだパリにあって、次のマンチェスター行きに積み込まれる予定」。この時点までには既に覚悟が出来ていたので驚かなかった。

「次のパリからの便は21:00に着く予定。あなたの荷物はリバプールのホテルに直接届けるよう手配するので、今日は荷物なしでホテルに行って」と言われ、一夜を過ごすための身の回り品だというパックをひとつ渡された。エールフランスのパックだったので、このような事態に備えて作られているものなのだろう。

時計を見ると19:40だった。21:00に着くならば、その便を待つと言うと、その係員は「いや、それはやめた方が良い。次の便で来る予定とは言っても、もし何かあったら翌日の便になるから、21:00まで待ってそんな目にあったら困るでしょう。ホテルに届けるから、今日はこのままホテルに向かった方が良い」とのアドバイス。

しかしねばって質問を続けると、マンチェスターの空港に荷物が届いてからリバプールのホテルに届けられるまでにまだ一つプロセスがあるらしい。そのプロセスがいつ発動されるかはその時点では全く不明だとのこと。「できるだけ早く届ける、としか言えない。でも今日の夜はその便は出ない。明日の午前中というのが最短」。

がっかりして、諦めてその場を出てリバプールに向かうことにした。スーツケースの中には着替え一式や身の回り品が入っている、というよりは手荷物として持ってきたバッグの中には風邪薬とコンタクト用品くらいしか入っていない。風邪をひいているのにパジャマもなしで寝なければいけない、と気持ちは暗くなった。

この荷物トラブルの結末は、翌日の午後にリバプール市内のホテルに無事、届けられて完了したのだった。

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 ■マンチェスターへ

荷物も届き、ほっとした翌日がシティでのマッチデイだった。試合は夕方開始だが、せっかくだから朝からマンチェスター入りして一日市内観光をしようと思い、朝から出かけることにした。

リバプールのライム・ストリート駅から、列車は待ち時間ゼロですぐに発車した。マンチェスターならばどんな方法でも行けるという気があったのでそれも驚かなかった(その時点までは)。

ピカディリーで降りて、まずはツーリスト・インフォメーションセンターで市内の地図を貰い、シティ・オブ・マンチェスター・スタジアムに行ってチケットを受け取ってこようという予定だった。

しかし意外とここでてこずる。ピカディリーからツーリスト・インフォメーションセンターまでの道が長かった。後で地図を貰ってみると歩いてゆける距離だったと判明したのだが、最初に道を聞いたら市内を走る無料バスがあるから、運転手さんにタウンホールまでと告げれば良い、と言われてそのアドバイスに従った。

するとタウンホールの前にはクリスマスマーケットが出来ていて、そこからツーリスト・インフォメーションセンターまでたどり着くのに結構かかった。なんとかたどり着き、カウンターでシティ・オブ・マンチェスター・スタジアムに行きたいというと、気持ちよく地図をくれて道を教えてくれた。しかし、前回メインロードまでの道を聞いたときのお兄さんに比べると熱心さに欠けていたような気がするので、この人は赤いのかもしれないと思った。

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 ■シティ・オブ・マンチェスター・スタジアム

ツーリスト・インフォメーションセンターからピカディリーまで戻って216のバスに乗り、シティ・オブ・マンチェスター・スタジアムに行く。お兄さんに教えられた通り、街中を抜けて10分くらいで左手に明らかに大きなスタジアムが見えてきた。これでは下りる場所を迷う心配はあり得ない。ひどく簡単だった。

スタジアムで降りて、チケットオフィスに向かう。窓口には列が出来ていたが、待つ人の数より窓口の数の方が多く、待ち時間ゼロだった。窓口のお兄さんと問答した結果、観戦チケットというのは紙で改めて作られているものではなく、最初に登録した際に郵便で送られてきたクレジットカードサイズのこの会員証のことだと告げられた。なんと、シティ対ビラの名前が入った紙のチケットが渡されるものと期待していたのだが、新たなシステムに移行してチケットが廃止されたらしい。

移転直後のシティ・オブ・マンチェスター・スタジアム

なんとも新しいシステムだ、と感激(?)した。今では多くのクラブで採用されている仕組みだが、その時には、オフィシャル・メンバーシップ登録会員でない、いわゆる一般客でもスマートカードで入場する仕組みを取り入れたのは、シティは早いほうではないかと思った。

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 ■市内観光

その時点では、試合開始まで5時間近くあったので、市内に戻って朝食を取ることにした。同じバスにより市内へ戻る。ピカディリー付近にはあまりレストランがなく、うろうろ探して入ったパブでキドニー・パイを食べた。風邪で食欲はあまりなかったが、食欲があったら不満が噴出したかもしれないような貧弱な食事だった。パブで昼食を取ったら食べきれないような大量の皿が出てくるというイメージがここで立ち消えた。北イングランドも変わったのかもしれない。

それからタウンホール方向に向かって市内見物しながらふらふら歩いた。クリスマスマーケットに入って一周したところ、なかなか面白かった。フランスでもこの時期では街中にマーケットが出来ていた。違いといえば、マンチェスターのマーケットは物を売るよりも飲み食いする店舗の方が圧倒的に目立ったことか。しかしマーケットは街中の生活が見えて興味深い。

楽しいひと時を過ごしているうちにふと気がつくと16:00近くになっていた。スタジアムに向かおうという時間になった。短いマンチェスター観光だった。

ピカディリーに戻ってバスに乗る。先ほどと同じ道のりで行ける筈と思って乗り込んだところ、バスはなかなか発車しない。15分くらい経った頃、さすがに異常に気づいた乗客は身を乗り出して何が起こったのか見ていた。どうも、前のバスが故障して動かなくなり、そのため道がふさがっていて後ろに止まっているバスが動けなくなっている様子。

このバスの乗客の殆どがシティ・オブ・マンチェスター・スタジアムに行く人のように見えたが、時間的にもまだ余裕があるせいか、みんな落ち着いている。私も隣の乗客と落ち着いて会話しながら解決を待った。事態に気がついて3-4分経った頃に、やっと故障バスが少し前進して後ろのバスにスペースを作ることに成功した。我々のバスが晴れて発車した時には、二階席の乗客から盛大な拍手と大声援。その様子にはほのぼのとした気持ちにさせられた。

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 ■スタンドへ

スタジアムに着き、会員証を提示して中に入る。チケットオフィスのお兄さんに言われたとおり、会員証だけで問題なく中に入れた。なんと近代的なシステムだろう。

人がいなくてさびしい正門

私の席は3階席、インターネットで予約した時に、思いっきり視界が良さそうな席を選んだのだ。しかし、実際に着てみると、なかなか遠かった。ゲートをくぐり、そこからワインディングロードをずんずん上ってゆき、やっとたどり着いた。行き着くと息切れがした程に長距離だった。

スタンド裏の売店にLadbrokeが見えたので、betしようという気持ちになった。勝敗は3-2でビラの勝ちにしようと心に決めていたが、ファースト・スコアラーにもベットしたくなったので、プログラムとオッズを見ながらじっくり検討した。

いろいろ考えた末に、ショーン・ライト・フィリップスに決めた。今季大活躍の選手。あのIan Wrightの養子でWright-Phillipsの'Wright'はIan Wrightから授かったのだというユニークな経歴を持った小柄な攻撃的MF。ひょっとしてリバプールが獲得に乗り出すかもしれないという噂もあった。

そうこうしているうちに選手のウォームアップが開始した。場内アナウンスがびんびん響く。

しかしここで笑えたのは、アナウンサーが観客に呼びかける言葉(通常はLadies and gentlemen、に当たる部分)が必ず'マンチェスター'だったこと。例えば 'マンチェスター! Welcome to the City of Mancheter stadium'という具合だ。これがしつこいくらい最後まで続いたのにはマジに笑ってしまった。要するに、'only team from マンチェスター'であることを強調しているという風に聞こえるのだ。これは近隣のチームを迎えた時には気持ちよい面当てになるだろうとニンマリ。

両チームのラインナップ紹介のときには、特に周囲に気遣ってシティを応援して見せるふりをする必要もなく、自然に拍手ができた。というのはロビー・ファウラーがスタートするという喜びの驚きがすぐに伝えられたからだった。更に、目当てのショーン・ライト・フィリップスの時にも手が痛くなるくらい強く拍手した。周囲の誰が見ても私は自然なシティファンに見えたに違いない。唯一、自然な反応を無理に止めたのはデビッド・ジェームスに対してdodgy keeperチャントを我慢したことくらいだった。

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 ■試合

さて試合が始まる。久々のスタジアム観戦、テレビとは違って全体の動きが見渡せるので感激した。シティの動きが非常に良いことがすぐに目立つ。ビラは今季ホームでは無敗だがアウェイでは我がチームに勝ると劣らないくらい悪い。

しまった、これは失敗betになってしまったかということに気づくまでに20分とかからなかった。シティの先制ゴールは29分に出た。しかし私にとっては唯一の期待だったファースト・スコアラーも外れてしまったことに気づいた。ジョン・マッケンという今季リーグでは僅か7出場目の地味な選手の今季リーグ初ゴールだった。

しかしシティの攻撃はますます続いた。38分には期待のショーン・ライト・フィリップスがゴール!喜びのあまり立ち上がって拍手しながら心の中では「順番が逆ならば」という残念な気持ちが浮かんだことは否定できない。

前半はシティ圧倒的優位のまま2-0で終わった。統計的に見れば私の勝敗betはまだ生きているが(後半ビラが3点取ればbang onだ)、後半何か天変地異がない限りは無理に見えた。そして、後半、天変地異が起きるどころかシティもやや勢いが落ちてきて、どちらも得点できないように見えて終わった。試合終了間際にピッチの上でダニー・ミルズが相手選手とつかみ合いをやりかかったが大事に至らずに終わった。シティは前半の得点をそのまま保持して3ポイントを獲得した。

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 ■帰りの列車が消えた?

選手がトンネルに戻ってゆくまで立って拍手を続けた後、他のメンバーとの待ち合わせ場所に向かった。チケットオフィスにたどり着くと、他3名が既に来て待っていてくれた。

4名揃ったところで、まずは市内に戻って夕食をとることにした。リバプールに帰ってから食事にするかマンチェスターで食事にするかちょっと議論があつたのだが、結局はマンチェスターでということになった。後から振り返るとこの決断も裏目に出てしまったのだが、その時にはまさかマンチェスターからリバプールへの列車が全面ストップするなどと考えもしなかった。

レストラン探しに町をさまよっているうちに雨が降り出したので、近くのホテルのレストランに入ることにした。妙に見慣れた名前の料理やワインばかりで、良く見るとフランス料理屋だった。イングランドでフランス料理を食べることになるとは、と内心苦笑したが、料理に関する評価は、期待通りの内容だった、という程度でとどめておく。どのみち風邪薬の副作用であまり食欲もなかったことだし、今回はグルメ旅行でもないのだから、特に食事にこだわるつもりはなかつた。

レストランを出てピカディリーの駅に着いたのは22:00ちょっとすぎ。順調に行けば23:00か遅くとも23:30にはリバプールに着いているだろうと期待していたら、リバプール行きの電車が全面ストップになった、という案内が出ていたのだった。

多くの乗客が困惑したようにインフォメーション・カウンターで問合せをしていた。我々も仕方ないので、「これしか方法はない」と提示された通り、隣のオックスフォード駅まで行き、代替バスというやつに乗ることにした。

リバプールに行く乗客は多く、実際にオックスフォードの代替のバス乗り場に行ってみると、長い行列が出来ていた。一台目のバスが満員で出発した後で、次に来たバスはなんと15人のりくらいの小型バス。我々はそれに乗り込んでなんとか帰り着いたが、そのバスに乗れずに次のを待っていた人もかなりいた。

それにしても、いきなり列車が運休になるとはなんとイングランドらしいことか。リバプールに着いたのは深夜の2時を回っていた。


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