観戦記
2012/1/25 リバプール 2-2 マンチェスターシティ(リーグカップ準決勝2nd leg) |
●リバプールへ
1月14日のストーク戦(試合結果は0-0)に続き、二度目のアンフィールドです。ストーク戦の時には体調がすぐれなかったこともあり、サウスポートからサンドヒルズの駅まで行き、そこから乗り継ぎバスでアンフィールドに直行し、リバプール市内には全く寄らずに終わったわけです。
正確に言うと、アンフィールドの前にバス停の近くにあった別のスタジアムに寄った後で友人一行との待ち合わせ場所に行ってしまったため、アンフィールドのスタジアム近辺の滞留時間すらも非常に短かったわけです。これはいけない、これはいつもの慣習に従わねばならないと反省し、今回は(同じくサウスポートからでしたが)あえてサンドヒルズを通り越してムーアフィールズまで行き、そこからアルバート・ドック参りをするルートを取ることにしました。
ムーアフィールズは、スタジアムへのバスが出ているサンドヒルズと市の中心地にあるセントラルとの間にあります。ムーアフィールズも市の中心地であることは間違いないのですが、セントラルよりこちらの方がアルバート・ドックに行くには若干近いという感じです。地上に出て、出口からアルバート・ドックと逆方向に行くと有名な地元紙であるリバプール・エコーの本社があります。
ともあれ、この日はまずはアルバート・ドックに行くことにしました。いつものように(ジンクスで)写真も撮りました。残念ながら、試合前に少し市内を観光しようと思って急ぎ足で歩いたものの、結果的に時間切れで、アルバート・ドック参りだけで終わりました。
それからすぐに、クイーンズ・スクエアのバス・ステーションから17番のバスでアンフィールドに向かいました。平日の夕方だったものの、アルバート・ドックにはマッチ・ディならではの、試合に向かうリバプール・ファンがたくさん歩いていました。だんだんマッチ・ディの気分になってきました。
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●試合前のアンフィールド
さてアンフィールド到着。試合開始まで1時間半前になっていたので、既にすごい人出でした。友人一行との待ち合わせ時間が迫っていたので、スタジアムの敷地内をさっと回って、スタンリー・パークを通って待ち合わせのパブに向かいました。そのパブというのはスタンリー・パークを出たところの道の向かい、グッディソン・パーク方向の角にあります。
17番のバスはコップ・エンドに止まるので、そこからスタンリー・パークは位置的に正反対です。従って、急いでいたとは言え、ちょうどいい感じでアンフィールドの外周を半周する形で歩きました。
バス通りにはいつものようにたくさんの出店が並んでいました。最近、アンフィールド近辺でも対戦相手の名入りのスカーフが売られています。要は、毎試合作るわけです。コストもそれなりにかかるので値段も張ります。高いなあと思い、この時には買わずに通り過ぎたのですが、結局後からシティの名入りのスカーフを買ってしまいました。
シャンクリー・ゲートウェイの付近で、テレビ中継らしき風景がありました。みな面白がって見ていました。
センテナリー・スタンドの裏を通り過ぎて、アンフィールド・ロードに出ます。今日の試合は(カップ戦のため)アンフィールド・ロードの一階スタンドは全てアウェイ席です。リバプールFCが誇る、アウェイ・スタンドのゲートに「Welcome XX Fans」と毎試合アウェイ・チーム名を記載する看板は、2年前に始まりました。そのため、この看板の写真はなかなか記念になります。今回も、「Welcome Man City Fans」の看板をぱしゃり。
ちなみに、この時点で既にアンフィールド・ロードはスカイブルーのファンでにぎわっていました。アンフィールドに来るアウェイ・チームは、(マンチェスターユナイテッドを除いては)大抵、チーム・カラーを身につけてきます。そのアウェイ・シャツを着たまま、リバプール・ファンと笑顔で会話する姿が良く見えます。要は、アウェイ・ファンがアンフィールドは安全だと感じているということだと思います。この日のシティもまさにいつも通りの風景が見えました。
アンフィールド・ロードのからスタンリー・パークに入りました。時間は試合開始時間ちょっと前、もう真っ暗でしたが、スタンリー・パークの中の道を多くのファンがアンフィールドに向かって歩いてゆきます。この時間に、アンフィールドを背にこの道を歩いている自分はへんに見えるかなと苦笑しながらパブへと向かいました。
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●パブの中のアウェイ・サポーター
パブに着き、中に入ると、なんと驚いたことに、いつも友人一行が立っているあたりの場所に、マンチェスター・シティのシャツを着たグループが何組もいました。皆にこにこ笑って和やかに会話していました。
間もなく友人一行が続いて到着し、話しを始めた時に、隣にいたシティ・ファンの人とひょんなことから会話になりました。今日の試合の予測を尋ねたところ、なんとその人は「我々もユナイテッドが嫌い。だからリバプールのことは常に応援している。もし今日、勝てなかったとしたらリバプールが優勝することを祈っている」。思わず笑って握手してしまいました。この人が特別というわけではなく、今でもシティ・ファンの多くはリバプールに対して好感を抱いているということは、折に着け感じるような場面に直面しました。
さて、友人一行が全員集まり、アンフィールドに向かいました。再びスタンリー・パークを通って、今度はアンフィールド方向に歩いたわけです。友人一行は全員がシーズン・チケット・ホルダーで、カップ戦でもシーズン・チケットの席が取れるようなオプションを付けているとのことで、半分はコップ、半分はメイン・スタンドの席です。
私は一人だけ、センテナリー・スタンドだったので、シャンクリー・ゲートで友人一行と別れてひとりでセンテナリー・スタンドに向かいました。
時間が若干あったこともあり、つい、出店でシティの名入りのスカーフを買ってしまったのでした。ゲートHからセンテナリー・スタンドに入りました。もちろん今日の試合は超満員です。スタンドの裏のバーも凄い人でした。寄り道をせずにスタンドに入り、席に着きました。
座席に着いたのは試合開始25分前、もうスタンドはかなり埋まっていました。
センターサークルを見ると、プレミアリーグとは違いリーグカップのロゴが乗っています。ふと考えると、アンフィールドでカップ戦を見たのはこれが初めて、リーグ戦とは雰囲気が異なるのだと実感しました。
スタンドも異なっています。アンフィールド・ロードは一階席スタンド全部がアウェイ・スタンドになっていました。リーグ戦では、対戦相手によって割り当てが異なりますが、アンフィールド・ロードの一部だけがアウェイ・スタンドとなるので、リーグ戦とはまさに雰囲気が違っていました。
あっという間に時間がたち、両選手が入場してきました。スタンドは満員となっていました。
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●スタンドの様子
カップ戦だから、というわけではなく、シティだからだと思いますが、試合中にこんなにスタンドの雰囲気がいい感じだったのは初めて(シティとのリーグ戦は以前に入ったことがあるのですが、その時はこんなにいい感じだったかなあ?)、でした。
両ファンが元気いっぱいに試合中ずっと大声援を発し続けたことがまず第一に「良い雰囲気」の理由でした。
が、それだけではありません。スアレス事件以来、全ての対戦相手のファンからリバプール・ファンやチームに対してその筋の挑発的な野次が必ず繰り返し繰り返し出てくるのがもう常となっていたのですが、シティ・ファンは違いました。あくまで自分たちのチームへの応援のチャントや歌を大声で発し、いやな言葉を交えたチャントはありませんでした。
当然のことながら、リバプール・ファンも、シティのチームやファンに対する嫌味っぽいチャントはまったくなしで、どちらの側からもいい感じの声援・歌・チャントが出続けたのです。しかも、やり取りがなんとなくぴったり息が合っていたところがまさにいい感じでした。
多くのチームで、替え歌やチャントで自分のチームや選手の応援をする際に、偶然同じチューンやもと歌を使うことがあります。リバプールとシティでも、たとえばシティのアグエロの歌がリバプール(チーム)の歌と同じチューンだとか、シティの「我々はシティ、我々はリーグのトップ」という歌がリバプールの「我々は人種差別主義者ではない」と同じチューン、などなど、たくさんあります。
そのような同じチューンの歌を、片方のファンが歌い始めたら、それに続くかのようにもう片方の方のファンが自分たちの同じチューンの歌を歌うのです。だから、歌詞を聞かないで音だけ聞いていると、まるでホーム・アウェイの両スタンドで同じ歌を歌っているように見える、という感じです。
同じ感じで、試合の「締め」はリバプール・ファンがYou'll Never Walk Aloneを大合唱し始めた時に、シティ・ファンは競うかのように大音量でブルー・ムーンの合唱になりました。この息の合い方もまるで示し合わせたかのような感じです。
なんとなく、リバプールとシティはすごく仲が良い、という感じのスタンドでした。ピッチの上は、スタンドのファンに励まされて両チームともに選手は攻撃的で積極的なプレイを披露しました。
前半はシティが先制しリバプールがスティーブン・ジェラードのPKで同点となり1-1で終わりました。
後半開始の時に、まずはシティの方から入場してきたのですが、シティの選手に対してリバプール・ファンの方からも盛大な拍手が送られました。続いてリバプールが入ってきた時には、シティ・ファンのスタンドからも拍手が送られました。まさに、中良いチーム同士の試合、です。
拍手のことを言うと、元シティのクレイグ・ベラミーが後半に交代した時には、リバプール・ファンはもちろんですが、シティ・ファンからも温かい拍手が送られました。
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●試合2-2(通算3-2でリバプールが決勝進出)
一日前に行われたもう一つの準決勝2nd legの方は、クレイグ・ベラミーの出身地のクラブでもありローンでプレイした経歴を持つカーディフシティが、PK戦で決勝進出を決めていました。
試合後の注目は、言うまでもなくベラミー。本人は「古巣であるシティに勝ってカーディフと対戦するというのは、自分にとって特別な決勝戦。(ウェンブリー改修工事中に)ミレニアム・スタジアムにリバプールの決勝戦を見に行ったことはあるが、ウェンブリーで母国ウェールズのチームと対戦することになるとは現実は予想外」と笑いました。
また、ベラミーに対しては、シティのファンも大きな拍手を送りましたが、ロベルト・マンチーニ監督も「クレイグが活躍したことは個人的にもうれしい」と称賛しました。
試合は、両者が得点を目指して最初から攻撃の応酬となりました。先制したのはシティで、ほとんど初ショットと言える32分のDe Jong の得点でした。このまでは延長、PK戦という得点だったため、両チームともに攻撃し続けました。
リバプールの同点ゴールは、41分にシティのハンドボールで与えられたPKです。この判定はメディアによると「スタンドの白熱した声援にレフリーがプレッシャーを感じて与えてしまった」誤判定、という見解が多いようです。
PKを決めたのはもちろん1st legの決勝PKを決めたスティーブン・ジェラード。リバプールはジェラード欠場中にはPKミスで苦しんでいましたが、ジェラードは問題なく決めました。
後半、依然として攻撃が続き、試合はますます白熱します。このままならばリバプールが決勝進出です。しかしシティの側はもちろんですがリバプールの側も追加点を目指して攻撃しました。
シティの2点目は67分、Dzeko。残り20分ちょっとのところでシティが優位になりました。このラウンドでは延長になったらアウェイ・ゴールがカウントされるという奇妙なシステムのため、このまま終われば120分の時点でシティが決勝進出となります。
74分、チャンスを作ったのはダーク・カウトで、グレン・ジョンソン経由でベラミーがコップの前で左足で決めました。
残り15分、4分のインジャリータイムを含めて20分足らずの激しい応酬の後でリバプールが2-2、通算3-2と決勝進出を決めました。
試合終了後に、両方チームの選手たちがスタンドのファンにあいさつに行った姿が見え、スタンドのファンも大きな拍手を送りました。敗退した側のシティ・ファンも大きな拍手を送っていました。
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●試合後
シティ監督のロベルト・マンチーニは、「PKではなかった」と判定に不満を見せたことを除くと、結果的にはいさぎよく負けを認め、リバプールにエールを送りました。
ケニー・ダルグリーシュは「ベラミーは特別」と絶賛し「もしシティがベラミーのような選手を他にも放出しようとしているならば、ぜひ私に連絡して欲しい」とジョークが大ウケしました。
さて、私は選手たちが挨拶の後で控室へと去った後でスタンドを出て、友人一行との待ち合わせ場所(試合前と同じパブ)に向かいました。センテナリー・スタンドからの道のりはアンフィールド・ロードを通って行きます。そこで、アンフィールド・ロードで逆方向に歩いてくるシティ・ファンの団体とすれ違いました。シティ・ファンは「我々はシティ、リーグ・トップ」の歌を歌いながら明るくリバプール・ファンとすれ違っていました。もちろん、リバプール・ファンはみんな笑ってシティ・ファンと挨拶を交わしていました。良い試合の後の良いシーンでした。
パブに入ると、案の定、シティ・ファンがたくさんいて、やはりにこにこ笑ってリバプール・ファンと言葉を交わしていました。
友人一行(全員がおじいさんの代からのシーズン・チケット・ホルダー)は「試合内容も良かったので、かりに負けたとしても満足しただろう」とうなづきあっていました。
ちなみに、ウェンブリーのチケットは、リーグカップの場合は両チームに35,000枚程度割り当てられるだろう、とのことでした。FAカップは同じくウェンブリーなのに25,000枚程度、その差はFAが販売するのだそうです。リバプール・ファンの間で(たぶん、ほとんどのチームのファンの間でも)FAの人気は下がる一方です。
それにしても、16年ぶりのウェンブリー進出という大きな業績は、これから残されたシーズンを戦う上で精神面で大きな励みになることは間違いないと思います。
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●余談(シティの名入りスカーフ)
試合の直前に買ったシティの名入りスカーフは(パブの中でも首に巻いたままだったので)、友人一行にウケました。1月16日のウィガン対シティを見に行ったことは既に友人一行に知れていたのですが、1月31日にエバトン対シティを見に行く話をしたところ、友人一行から(にやにや笑って)「シティを追いかけているみたいだね」とからかわれました。
更に「その時にはこのスカーフを首に巻いて行ったら?」。私(笑って)「周囲から殴られるかもしれない」。友人一行(シティの方の半分を指さして)「いや、こっちの方だけを見せるようにすれば大丈夫じゃない?」。私(苦笑)「いや、ホーム・スタンドの席なので、そっちの方もまずいと思う」。一同、爆笑。
ちなみに、その時点では私はなんと1月28日のFAカップ戦(対マンチェスターユナイテッド)のチケットも、ラッキーなことにメンバーシップ向けの直前販売で最後の1枚かもしれないと思うような貴重なチケットを、自力で取れていました。もちろん、友人一行は(シーズン・チケット・ホルダーなので)、全員問題なくチケットを入手していました。従って、次はまた3日後に会うことになっていました。
友人一行にふと、スカーフのことを尋ねました。「ユナイテッド戦の日も、これと同じ(半分がアウェイ・チームというデザインの)スカーフが売られるの?」。友人一行は、ちょっと真面目な表情になって、「考えられないだろうけども、実際に売る人はいると思うよ」とのこと。後からわかったことでしたが、友人の言葉は正しかったのでした。誰がそんなスカーフを喜んで身につけるのだろう?と妙な気になりました。
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