プレミアリーグ観戦ガイド

観戦記
1998/01/01 チェルシー 1-0 リバプール

ロンドン入り

12月30日、ツアーは最終局面を迎え、首都ロンドンに入る。ホテルにチェックインする。うーん、これまでのリバプール、サザンプトンの両ホテルは四つ星クラスだったが、これは(たぶん)星2つがせいぜいか、という感じだった。それでも価格は全て同じくらいの価格だった。ロンドンは何でも高い、としみじみ感じた。

元々の計画では、翌31日はウェンブリー・スタジアム見学、最終日1月1日はチェルシーで観戦、それ以外の予定は決まっていなかった。

ホテルにチェックインした後で、午後がまるまる空いていたので、まずは明日のウェンブリー見学やチェルシー行き云々…の実現方法を調べにインフォメーション・センターに行くことにした。入ると、中はそんなに込んでいなくてすぐに自分の番になった。

対応してくれたのは30歳ちょっとの男性で、「質問がたくさんあるんですが」と言って、あちこちの場所の名前を言う。そして、「チェルシー」と言うと急に顔を明るくする。それまでの質問にはいちいちパソコンを操作して調べて回答していたのに、この質問に対しては何も見ずにスラスラと答えてくれた。ふむ...。「試合に行の?」と質問されたので、行く、と答えると、最後に「うらやましいなあ。この試合はオール・チケットで、もうとっくにチケット売り切れですよ」と一言。

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 ■ウェンブリー

12月31日、ロンドンは寒かった。下位ディビジョンの試合は軒並み延期が決定となった。チェルシーは大丈夫だろうなあ…と心配しながら一同、ウェンブリーへ向かう。 

計画した段階では、イングランドのホームスタジアム…と思うと気が乗らなかったというのが本音だが、実際に辿り着いてみると「フットボールの聖地ウェンブリー」の壮大さに素直に感銘を受けた。

ちなみに、私はジェフ・ハーストのゴールには赤いランプを押しまた。この日の判定は15対4だった(ゴールでない、が圧勝!)。30年以上経過し、イングランド人は1966年がラッキーだったことを認めたわけだった。

1998年当時の(旧)ウェンブリー

1998年当時の旧ウェンブリー

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 ■北ロンドン巡り

ウェンブリーを出て、午後はハイバリーとホワイト・ハート・レーンに行くことになった。まずは、最も簡単に行き付けそうなハイバリーにする。

アーセナル駅に下りて地上に出ると、いきなりダフ屋から「明日のチケットはいらないか」と声をかけられる。正門までの短い道のりに、ダフ屋を何組振り切ったことか。

クラブ・ショップに入り、スタジアム・ツアーはやっているかと質問する。残念ながら、毎日実施ではなかったらしく、今日はやっていないと言われる。仕方ないので、適当に買い物をすることにした。ふと見ると、店内に「アウェイのシャツは、今シーズン一杯で変更になります」というお知らせが目に付いた。なんと良心的なこと。アーセナルの良いところを一つ発見できたのは獲得だった。 

アーセナルからセブン・シスターズ駅へ。ホワイト・ハート・レーンはひどく遠いとの話だったが、本当に遠かった。何より、方向が分からないのが困った。「地元の人に聞けば分かるだろう」とタカをくくっていたら、最初に出会った人に「知らない」と言われて面食らう。さすがロンドンだ、と思った。地方都市では、地元の大きなクラブのスタジアムを「知らない」というのはあり得ないので、大抵の人が親切に教えてくれる。しかしロンドンでは、本当に知らない人もいるだろうし、大都会特有の冷たさで、知らない人に親切にしない、という理念が根底にあるのかもしれない...。

しかたなく、バス乗り場で路線図を見る。トットナム・ホッツパーズFCというのがあった。そこで、隣りでバスを待っていた人に(勇気を出して)尋ねると、親切に熱心に教えてくれた!かくして、めでたく辿り着く。「知らない人に親切にしない」理念も、全員に共通のものではないのだ、と感謝した。

明日のトットナムの試合は既に延期と決定していたこともあってか、スタジアム周辺は静かだった。クラブ・ショップも(開いていたが)客が一人もいない。私の親しい友人の一人がトットナム・ファンだったので、おみやげを買って行こうと決意する。Tシャツと車のスティッカーを買う。カウンターでふとテディも欲しくなり、買うことにした。

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 ■アプトンパーク

1月1日、マッチデイ。チェルシーは裕福な地区にあり、ホテルからすぐ近い。朝から直行するのは早過ぎるということで、まずはアプトン・パークを訪れることにした。

こちらもマッチ・ディだ。アプトン・パークに着くと、10:00ちょっと過ぎだったが既に出店が出ていた。入口付近に「現在、スタンドの改修工事中のためスタジアム・ツアーは中止しています」という貼紙があった。クラブショップを通り抜け正門の前に辿り着く。

うろうろしていたら、スタジアム係員のおじさんに「何か探しているの?」と尋ねられる。入っちゃダメだよ、と叱られるのかとビクビクしながら「外からでいいから、スタジアムを見たいのですが」という。すると、おじさん「中には入れないけど、外からならいいよ」と言ってくれる。

小さいスタジアムだった。逆方向に進むと、今度は別の係員のおじさんが出てきて「no」と言っているのが聞こえた。その先はスタジアム内部への道らしい。「入っちゃダメですか?」と尋くと、おじさん「ダメ」と一言。私「そうですか、残念だけど諦めます」…その時の表情が本当に残念そうに見えたらしい。おじさん、急に口調を変えて「中を見たいか?」と尋ねる。私(パッと顔を明るくして)「えっ!いいんですか」。おじさん「2分だけだよ」。我々は大喜びで、おじさんの後について一緒に中に入る。 

ゲートを入って、通路を抜けてピッチへと向かう。「綺麗なスタジアムですね。凄く、いいなあ(感情込めて)」と賞賛の言葉をかけると、おじさん(嬉しそうに)「ピッチがカバーされてるから、対した風景は見えないけどね、ちょっとだけだよ」。「ボビー・ムーア・スタンドを見たいと思っていたんです」。おじさん(ニッコリ笑って)「今、教えて上げるからね」。

ピッチの入り口に立つ。本当にピッチはビニールで完全にカバーされていた。空からは雪がチラついていた。悪天候の時は、いつもこうしてカバーされるのだとのこと。右側のゴール裏(ホーム・サポーター専用スタンド)を差しておじさんが「こちらがボビー・ムーア・スタンドだ」。2階席のホーディングにそう書かれていた。ウエストハム・ファンにとっての永遠の英雄の名前がここに刻まれていた。おじさんの声が続く「あちらが、センテナリー・スタンド。昨年が100周年記念だったんで」。「こちらがチキン・スタンド。何故そう呼ばれてるか分からないんだけどね、最初に作られたスタンドだ。チキンみたいにひしめき合って観戦したからかな」。

ちょっと長い「2分」が過ぎて、外に出る。おじさんに繰返しお礼を言って、握手して別れた。 

クラブショップに入り、私はテディを買う。スタジアムを出てアプトン・パーク駅に向かう途中にあった出店で立ち止まる。Aさんがウエストハムのピンバッチを買った。ふと見ると、後ろの棚にリバプールの帽子があった。暖かそうだった(寒い日だったし)。店番の少年に帽子はいくらかと尋ねると£5だと言う。私がリバプールの帽子が欲しいと言うと、少年は「リバプールの帽子が欲しいの?」ムッとして繰り返す。それから(諦めたらしく)下を向いて£5だと言い、渡してくれる。

我々が立ち去る時に、少年はAさんに向かってガッツ・ポーズを取り、別れの挨拶をする。私には、何も言ってくれない。苦笑しながら、私は心の中で少年に謝っていた。たとえチームが降格しようと、この少年は永遠にここでウエストハム・グッズを売るのだろう。お金のために(悔しい思いしながら)メジャーなチームの帽子を売りながらも、永遠にウエストハムを愛し続けるのだろうと思った。頑張って! 

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 ■スタンフォードブリッジ

さて、フルハム・ブロードウェイ駅に降り立つ。スタジアムは目と鼻の先だった。スチューアドさんにチケットを見せて位置を尋く。この道をまっすぐ歩けば着くと言われる。ひたすら、歩き、どうにか着く。チケットを見せてどのゲートかと聞きまくった。入口に辿り着く。Aさんが中に入ったと思いきや、Bさんが戻ってくる。「このチケットは違うとか言われたんですが」。改めて尋ねると、やはり違うと言われる。言われた通りの方向に向かう。どうにか辿り着き、アウェイ・サポーター専用入口があった。入ろうとすると、いきなり無愛想に「カメラは持っているか」と尋ねられる。持っている、と答えると、あちらに行けと無愛想な命令口調で言われる。 

チェルシーのチケット

どの入口も同じだと知って、諦めて「あちら」に行く。怖そうな係員が荷持チェックをやっていた。カメラを差し出すと、電池を没収する、と言い、整理券をくれた。「このスタジアムには初めて来たので、カメラ持ち込み禁止だなんて知らなかった」と哀れそうに懇願する。しかし、「Never」と一言、問答無用の冷たさだった。中に入る。先ほど、間違ってホーム・サポーター側ゲートから入ったAさんと合流する。Aさんもカメラを持っていたのだが、そちらの入口ではチェックなんか全くなかった、という。カメラは無事だった。いずれにせよ、ここではカメラは禁止なのだろう(アンフィールドやサザンプトンでは全く問題なく皆写真を取っていたのだが)、写真は取らないことにした(良く見ると、誰も取っていない。ホーム・サポーターは規則を知っているから、わざわざ調べる必要もないのだろうと納得した)。 

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 ■アウェイ・スタンド

サザンプトンとは違い、アウェイ・サポーターには風当たりが強そうだ。気を落ち着けて、ピッチの上を見ると、派手にチェルシーの催しをやっている。アウェイ・スタンドの同志達は、度胆を抜かれたか、ヤケに静かだ。こんな静かなリバプール・ファンは初めて見た。3日前のサザンプトンよりも遥かに地元に近い(距離的に)地で、こんな状況で観戦することになるなんて…信じられない思いで一杯になった。

同じくアウェイ・サポーター専用スタンドに、ジョン・スケールスがいた。トットナムの試合が(天候のため)中止になったから、突然休日が得られたのだろうか、古巣の試合を観戦に来ていたのだった。我々からそんな遠くない席だった。周囲のリバプール・ファンは、近寄って話しかけている。ジョン・スケールスは(見たところ)気軽にそれらのファンと言葉を交わしていた。 

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 ■試合

さて試合は、この3連戦で最低の内容だったと思う。レスター戦よりも出来が悪かったような気がする。レスター戦では逃れられたものの、いかんせんレスターよりはチェルシーの方が上手だった、うまく付け込まれてしまった。特に残念だったのはやはり攻撃陣だった。相手DFを全く破れなかった。破れないと知ると、後は放り投げ戦法に転じたのも残念だった。パスも通らなかった。マイクル・トーマスが最初から不安だった。いつか、やるんじゃないかとハラハラしていたら、致命的な場面でやってくれた。トーマルのパスはまっすぐデマティオに。それがチェルシーの先制ゴール&この試合唯一のゴールとなった。それまで必至にゴールを守っていたデビット・ジェームスも、このシュートには何もできなかった(ジェームスに非はない)。呆気ない幕切れだった。 

相手の注目・ゾラはやはりうまかった。しかし、我がジェイソン・マッカティーアは良く抑えていた。その他の良い要素としては、スティーブ・マクマナマンがやや立ち直りを見せてくれた。バーンジィは相変わらず中核を担っていた。スティグ・ビヨノビーは、この試合では今いちだった…けども、あなたの貢献は評価します、素晴らしい!試合終了近くなって、我々のスタンドからはパトリック・ベルガーの歌が飛び交い、それにつられたようにパトリック・ベルガーがマーク・ライトに代わって入る。リバプールは3人FWで反撃した。攻めて攻めて攻めまくったけども、残念ながら届かなかった。 

その夜、マッチ・オブ・ザ・デイを見る。ロイ・エバンスが出てきて「今日の敗戦は、長いシーズンの不調な一こま(しゃっくり)」と言っていた。本当に、そうあって欲しいと切実に思う。


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