めでたくチケットが入手できて、さあ観戦という時に、最後の難関となるのがスタジアムへ行く、という行為です。初めて行くスタジアムは、場所が分からずに不安なものです。
ハイバリー(アーセナルの旧ホーム)のように地下鉄駅を降りるとすぐスタジアムがある、という便利なスタジアムは、イングランドではどちらかと言えば珍しいかもしれません。まあ、ハイバリーの場合はスタジアムのために地下鉄駅が出来たという特殊な背景があるし、まさに超例外です。ましてや、地下鉄が走っていない地方都市のスタジアムは、多くの場合、辺鄙な場所にあり、市内の中心地のホテルに宿泊していたとしても、スタジアムに行き付くのは一苦労であることが多々あります。
私の経験を振り返ると、おそらく最も行くのが大変なスタジアムの上位に入るのがアンフィールド(Liverpoolのホームスタジアム)です。今ではさすがに慣れてしまいましたが、初めてアンフィールドに行った時のことは今でも思い出します。
1989年11月のことでした。念願かなって初のアンフィールド、と興奮し、前日に市内の地図を探して見たところ、市の中心地から遥かに離れたところにあります。最寄りの鉄道の駅からも、あるいて行けそうな距離ではありません。さあどうやって行けば良いのか困りました。
試合の日に市内のツーリスト・インフォメーション・センターに行き、アンフィールドへの行き方を質問しました。対応してくれた女性スタッフは、地図上で50m程先にあるバスステーションを指し、「ここの○番のスタンドで○番のバスに乗って、運転手に'アンフィールド'と言えば着く」と教えてくれました。英国のバスは停留所をアナウンスしてくれないので、知らないところに行く時には必ず運転手に下りる場所を告げて「そのバス停に来たら教えてください」とお願いしておかねばなりません。そう思って「下りる場所はどうやってわかるのですか」と尋ねたら、そのスタッフはにっこり笑って「赤いシャツ(Liverpoolのシャツ)を着た人たちがたくさんいるから、その人たちの後について行動すれば、アンフィールドに行けますよ。大丈夫」と言われました。
バスステーションに行って見ると、そのアドバイスは全くその通りだということを実感しました。試合は15:00開始、その時点では13:00ちょっと前でしたが、バスステーションの周りには数百人の赤いシャツを着たLiverpoolファンが、明らかに試合のためにアンフィールドに向かっている姿がありました。
それ以来、初めてのスタジアムに行く時には「そのチームのシャツを着ている人たちの後をついて行く」という基本的な手法が到るところでも役に立つのだと、しみじみ感じている次第です。
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