マジック




「あぁん、もう!」
小ぶりのスーツケースの滑車が壊れるのではないかと思うくらいの勢いで、ミリアリアはしとしと降り注ぐ雨の中を全力走り抜けた。
ようやくたどり着いた建物のへ転がるように駆け込むと、水分を含んだがために倍以上の重量になったバッグを肩から落とした。するとグシャリという音と共に、その周りはたちまち大きな水溜りを作ってしまった。
取材先で見つけた刺繍がかわいいと思った布製のバッグ。
(下ろしたてなのに)
プラントのお天気はあらかじめ分かっている。地球のように“予報”ではなく、各コロニーごとに市民へ情報が公開されている。シャトル内でも宇宙港でも、それこそ町のそこらじゅうで当たり前のサービスとして誰にでも目に付くように情報が流れているというのにこの失態。情けないやら腹立たしいやら、ここまでずぶ濡れにもなるともうどうでもよくなってしまう。
「最悪」
ミリアリアをそんな気分にさせたのは、天気情報を把握していなかったことに対してだけではない。
何度となく訪れているこの場所。いちいち許可申請するのも面倒だと勝手に登録をしIDカードも用意されてもう数年は経つ。それなのにゲートの警備員は相変わらず常にヘンなものを見るような視線を向けてくる。
そりゃ、コーディネーターとナチュラルの間で和解したとはいえ、まだまだブルーコスモスの残党は存在し、コーディネーター全てがナチュラルに友好的な感情を持っているとは思えない。
しかも官僚クラスの宿舎へ度々やってくる見た目平凡なナチュラル。IDのデータを見ればオーブ出身で、フリーのジャーナリストだという事まで分かるだろう。不振に思われるのも当たり前だ。
仕方が無いのだと思う。私達ですらとてつもなく時間がかかったのだから。



広く無機質な造りのエントランスの突き当りにある小さな三角形のボタンを押してゲートを開き、IDカードをエレベーター内のカード挿入口に入れ暗証番号を入力する。するとすぐにエレベーターが滑るように上昇しだした。
プラント評議会から程近いこの官僚クラスの宿舎。上層階へ行くほど階級が上がっていくシステムらしい。彼の部屋はその上層階にある。
こんなに必要があるのか?といつも疑問に思うのだが、一人暮らしのクセにワンフロアーすべてが彼の居住区になる。無駄なスペースが多すぎるような気もするが、それはそれで意味があるのだという。
目的フロアへの到着を告げるチャイムが鳴り静かに扉が開いた。アンバー系の灯りに照らされた玄関先で、壁のプレートに刻まれたこのフロアーの住人である人間の名前をひと撫でする。
「ただいま」
ミリアリアは手早く荷物を部屋へ運び込むと、震える身体を摩りながら浴室へ入り、さっと熱いお湯をかぶって一気に温めた。
バスタオルを身体に巻きつけただけの格好で、お行儀悪いかな?と思いつつも誰も見てやしないからいいやと冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、窓辺からしとしとと雨が降り注ぐプラントの町並みを見下ろした。
そうそういつでも会えるものではないから、プラントへ出向くのは嫌ではない。以前は足を踏み入れたことなどなかった場所だ。訪れるたびに新しい発見があったりするので、むしろ楽しみだったりする。
地球にいたらいたでどこまでも回線が続くせいで、ひっきりなしに仕事の依頼が入ってきてしまうし、重力圏内を離れてしまえばそう簡単に連絡を取る方法もなくなるわけで、まったく携帯電話が鳴らないのも一抹の不安を感じる事もあるが、こちらに到着をしてしまえば変に諦めも付いて割り切って休日を満喫する事にしている。
しかし、今日は久しぶりのプラント訪問で少々浮かれすぎていたのかもしれない。お天気の情報を調べることも忘れて、ウィンドゥショッピング気分で公共交通機関を使用してきたせいで、ゲートの手前から降雨にみまわれてずぶ濡れ。
(ゲートから建物まで遠すぎるのよ!)
そして警備員の怪訝な視線。いつもは嫌な思いを一つするだけであとは楽しい時間を過ごせるのに、今日は二つも不快な気分を味わってしまった。
(早く会いたいな)
アイツに会えば、きっとこんなモヤモヤした気持ちも晴れると思うのに。
ふと、辺りが明るくなる。目の前がブルーグレーに霞んでいたはずが、やわらかな光が辺りを照らし始めていた。
「ガチャリ」
突然、リビングのドアの開く音がした。
背筋が一瞬ヒヤリとする。
(こんな時間に?まさか?)
驚きのあまり思わず手の中のペットボトルを落としそうになる。
「…ミリィ?」
「ディアッカ!」
 扉から現れたのはこの部屋の住人だった。
せっかく温まった体の熱を奪うかのようにガラスに張り付くが、見慣れた姿を確認しホッとする。
ディアッカは予定よりも早く現れた恋人に心底驚いた様子だったが、一瞬にして顔が曇った。
眉間に皺を寄せて足元から頭のてっぺんまで何度も視線を往復させている。
「あのさ、そんな格好でうろうろしないでくれる?」
冷たい物言いに胸の奥を抉られるな感覚が蘇り、遠い記憶に残る彼のその表情に胸が締め付けられた。
「あ、ごめん、わたし、雨で濡れちゃって…」
制帽を脇に抱え明らかに不機嫌極まりないといった男の前を、慌ててミリアリアは横切り、バスルームへと駆け込んだ。
バタンと派手に音を立ててドアにもたれかかる。
「は〜、ビックリした…」
えらく怒っていたような気がする。ちょっとはしたなかったかもしれないけれど、別にそんなに悪い事をしているわけではないと思うのだが。
ミリアリアは気を取り直すように頭を左右に振った。
身体に巻きつけていたバスタオルを解いて、戸棚から自分用のバスローブを取り出して羽織り、洗面台に取り付けてあるドライヤーで髪を乾かし始める。
あいつの機嫌を損ねるような原因を考えをめぐらせてみるが、特に思いつかない。
(評議会で嫌な事でもあったのだろうか?)
そんなことでは彼はあそこまで不機嫌になったりはしないと思うが。少々愚痴る事はあっても「フン」と鼻を鳴らして流してしまうタイプだ。
ぐしゃぐしゃと髪を掻きながら必死に考えてみてもやっぱり思いつかない。
久しぶりに会えたというのにどういうことか?意味が分からない。
「ん〜、もう…」
会っていきなりこんなのない。
ミリアリアは半渇きの髪をめちゃくちゃに掻き乱した。
すると背後でバスルームの扉が開いた。今、この部屋にいるのは自分とディアッカしかいない。ミリアリアは先程のように特別驚くことはなかった。ラフな部屋着に着替え、洗濯物でも放り込みに来たのだろう。鏡越しにチラチラ様子を伺えば、案の定、軍服のインナーをランドリーボックスに投げ込んでいた。
気にしすぎなのかもしれない。
なんとなく彼のいつもの動きをぼんやりと目で追いながらそう思った次の瞬間、鏡の中のディアッカと視線がかち合った。ミリアリアは思わずすぐに自分から逸らしてしまう。
(バカ)
下手に意識してもかえってヘンだ。一度逸らしたにも拘らず、もう一度鏡の中の彼へと視線を戻す。
向こうもこちらを見ているようだけれども何かがおかしかった。互いに鏡越しに見詰め合っているにも拘らず、視線が合っていない。
 ディアッカの視線の先を辿る。自分のことを見ているのではないのか?目でなくて、鼻?もう少し下の。
(…口元?)
視線がほんの少し左右に揺れた気がした。ゆっくりと、まるで、親指の腹で撫でるような動き。
(まさか…?)
勘違いかと思った。けれども、少しずつ確実に彼の瞳は動いている。想像が間違っていなければ、唇の端から顎のラインをゆっくりとなぞり耳朶へ、そして首筋を下りてゆく。
ミリアリアは知らず知らずのうちにツイと顎を上げる。
それからも彼の視線の動きは止まらない。
バスローブから覗く鎖骨も丁寧に左へ右へ移動して真ん中に戻り、それから胸元へ。
「ひゃう…」
思わず声が出た。慌てて口元を手で覆い、鏡越しに背後へ視線を戻した。そこには既にディアッカの姿はなく、扉の閉まる音がした。
熱い。額に汗が滲む。
ドライアーをあて過ぎたのかもしれない。こんなショートヘアなんてすぐに乾く電圧だ。そんなに長く乾かしていただろうか?いや、たいして時間なんてかかっていない。
軽く汗ばむ背中が冷えてしまわない内に早く着替えてしまおうと、ミリアリアは数度襟元をバタつかせてながら浴室からクローゼットのある部屋へ急いで向かった。
クローゼットのある部屋へは無駄に広いリビングを横切らなくてはならない。ディアッカは既にソファでくつろいでいる様子。なにやらニュースを見ているようだ。ミリアリアはそそくさと隣の部屋のドアノブに手を掛けた。
「ミリィ、ちょっと」
声色から察するに、いつもの自分を甘やかす雰囲気ではないようだ。
(なんか、やだな〜)
そっと近寄れば、ソファに頬杖をついてだらしなく座るディアッカが、ちろと横目で見上げる。その仕草だけでも不機嫌さが読み取れる。
「なに?」
いったい何をしたというのだろう?ただでさえ今日は気分が悪いのに、こんなにも彼のことをあれやこれや考えるなんて馬鹿馬鹿しい。というより悔しい。
先程までビクビクしていたものの、だんだんと腹立たしい気持ちへと変化してくる。
文句があるなら面と向かって言ってくれれば良いのに。
ソファにだらりと斜めに腰掛けるディアッカの前にミリアリアは仁王立ちした。すると彼はゆっくりと身体を起こし、彼女の正面にむかって座りなおした。
(な、なんなのよ)
訳の分からないプレッシャーに負けじと、ミリアリアもぐっと彼を見据える。
すると、ふと何かが緩んだ。ひんやりとした空気が脇腹に入り込んできて思わずギョッとする。胸元を見下ろせばしっかりと閉じていたはずの合わせが開いているのだ。
「なっ!」
思わず顔がカッとなる。
「ちょっと、なに…」
いたずらにもほどがあると思い切り怒鳴りつけてやろうと思った瞬間、ニヤリと彼が笑った。



後の事を考えるとちょっと怖いなと思ったが、こんな状態でスルーするわけにはいかない。
毎日、会議会議会議でいいかげん脳みその皺がなくなってしまうんじゃないかと思ってたところに、急遽、議題に問題が起きたとかで午後の会議が延期となった。背後から次々にかかる声を無視しながら、中には怒号も混じっていたようだがそのまま議場を飛び出した。
今日は愛しいナチュラルの彼女がプラントへとやってくるのだ。こんな日に残業はゴメンだ。とっとと宿舎へ戻ってしまうのがいい。
確か午後のシャトルで到着すると言っていたはずだ。このクソ重い制服を脱いで宇宙港へ迎えに行こう。
浮かれ気分で部屋に戻れば、驚いたことに夕刻に到着と聞いていたはずのミリアリアがバスタオル一枚で部屋にいた。
ほんのちょっといたずらするつもりが、こんなことになるとは。
バスローブの腰紐をグイと引いたらば、意外にも簡単に彼女の身体はよろめき倒れこんできた。乱れた髪を直しながらぎっと睨みつけてくる。
(いいねぇ、こういうのも)
彼女が体制を整えるべくのろのろと身体を起こすと、ソファの上で膝立ちで自分に跨った状態になった。ディアッカが軽く膝を開けば、ミリアリアの足は大きく開き、続いてひどく湿った音が彼女の下肢から鳴った。その意味を察したのか、たちまち彼女の顔は真っ赤に染まっていく。
「濡れてんの?」
腿で彼女の脚の付け根を軽く擦れば更にいやらしい音を発し、ディアッカのズボンにシミを作った。
「ちょっ、やっ!」
そのまま踵を鳴らして振動を与えると、ミリアリアは堪らないとばかりに身体を捩じらせた。
「いいかげんにっ…やんっ!」
ディアッカの与える悦びを振り切るかのように殴りかかろうとミリアリアは腕を振り上げる。
そんな事をされたところで怯むわけなどないのに。
振り下ろされる拳を掴んで、少々乱暴に後頭部を押さえつけて舌をねじ込む。
「んっ」
ミリアリアは身体を強張らせながら必死に抵抗を試みるが、そんなものはかえってディアッカを悦ばせるだけだった。
腿を更に押し付けながら抱えた彼女の腰を揺すれば、触れた場所からはじんわりと熱が広がっていく。生地越しにも彼女を十分に感じる。
「うぅん・・・っ」
存分に味わい唇を離してやる頃には、ミリアリアは瞳を潤ませ大人しくなっていた。
ズボンから痛いほどにいきり勃つそれを解放してやる。
チラリと彼女を見上げれば、じっとそこへ視線を落としていた。
「そんなに欲しい?」
「そんなことっ!」
ただでさえ赤い顔が、いっそう熱を帯びる。
「いい?」
ミリアリアは一瞬、困ったような表情を見せるもコクリと小さく頷き、ゆっくりとそれを手に取る。少しだけ身体を浮かせて、静かに腰を落としていった。
「あっ…、はぁっ!」
身体を震わせながら全てを飲み込むと、彼女自ら前後に腰を振り始める。
「…くっ」
少々失敗したと思った。
縋りつく彼女の髪は甘く香り、耳元で喘ぐ声に中心がいっそう痺れ、すぐにでも達してしまいそうになる。気を散らせればと目の前で揺れる白い膨らみを鷲掴み舌を這わせれば、ぎゅうぎゅうと内部が収縮し、更に自らを追い詰めた。
(やば…、調子に乗りすぎたかも?)
勢いに任せて突き上げれば、彼女は弓なりに身体を撓らせ跳ね上がる。
「やあぁっ」
逃げる腰を押さえつけ小刻みに打ちつけたらば、いやいやと仰け反る。
彼女を攻め立てれば立てるほど、自分を追い込んでしまう。
(とんだドMだな)
「あぁん、やっ・・・あぁっ!」
一気に締め上げられ彼女の中でディアッカはビクビクと脈を打った。



「あ〜、ちぎれるかと思った」
思い切り小突いてやりたいところだが、仕事仕事でただでさえ疲れきっているのにいきなりこれで、どついてやるほどの体力すらもう残ってはいなかった。脳みそも溶けてなくなりそうだ。彼の胸に身体を預けて、ドクドクと早鐘のように打つ生きている証に耳を傾ける。
「あんなふうにさ、あんま裸で部屋ン中うろうろすんなよ。誰に見られてるかわかんないだろ?」
一瞬にして、酔いが醒めるかのように思考がはっきりとした。
そうだ。嘗てエリートだった彼が一度は降格したとはいえ、前大戦の功績を認められ昇格。そこへ時折りやってくる怪しいナチュラルの女。元・地球軍人で、元・オーブ軍人で、今はジャーナリスト。高官のまわりをうろつく妙な女。スキャンダルにはもってこいの材料だ。彼の失脚を狙う者が一人くらいいたっておかしくない。いや、それだけではない。反クライン派にとっては格好の餌になるやもしれない。
脳裏にゲートの守衛の怪訝な表情が思い出される。
「ごめんなさ…」
ミリアリアは慌てて身体を起こし、青ざめた顔でディアッカを見上げた。
自分がジャーナリストだという事をすっかり忘れていた。セキュリティが万全の高層マンションとはいえ、窓際に立てば外からは丸見えだ。性能の良いレンズなんていくらでもある。イライラしていたとはいえ、軽率だったかもしれない。どこの国でも、ゴシップ専門の記者なんていくらでもいる。なんでもない写真にスキャンダラスな内容を面白おかしく書きたてることなど簡単なことだ。
「しっかし、知らなかったよな〜。ミリアリアがそういうのがまんざらでもないなんて」
「ちがっ、ご、ごめ…!」
「視姦プレイがイイなんてさ〜」
「は?」
ぐるぐると頭の中で今後の事やあれやこれや考えを巡らせていたが、それがピタリと止まった。
「俺以外のヤツにミリィの裸を見られるの、本当はイヤなんだけどさぁ。あ、別に服着たままでもいいか」
一瞬にして全てが消去される。
「何を言ってるの?」
「え?こう、見られると燃えちゃうんでしょ?」
「はぁ?」
なにかが頭からポロリと剥がれ落ちた。
「今度、外でシテみる?」
カッと頭に血が昇る。
「だってさー、さっき鏡越しに見ただけで濡れ濡れだったじゃん?」
あ?欲求不満だった?と彼の言葉を聞くか聞かない間に、ゴッと鈍い音が部屋に響いた。
ヘトヘトで残ってはいないはずの体力がまだあったことにミリアリアは驚いた。
「信じられない!バカみたい!」
「痛いよ〜、グーで殴るなよ〜。軽い冗談だろ?」
「なによっ!心配して損しちゃった!」
「・・・心配って、ナニさ?」
「私が怪しいせいで、アンタに迷惑かけちゃうって思ったのよっ!」
「はぁ?誰がオマエのこと怪しんでんだよ?」
「・・・警備員よ?」
「…は?」
鳩が豆鉄砲をくらったような目を向けられた。
「警備員が?変な目で見るの?」
「そうよ!私のこと、怪しいナチュラルって思ってんじゃないの?」
こっちは軽く傷ついているのに、ものすごーく軽い物言い。いつも親身になって相談にのってくれていたのはなんだったのか?
なんだか悔しい。
「あはははは!」
「なっ!なにっ!?」
突然、ディアッカは腹を抱えて笑い出した。
「なんなのよぉ!」
「いや、ごめん!あはは、そりゃ、変な目で見られるわなっ」
傷つけられた上に笑い飛ばされる。こんな腹立たしいことこのうえ無い。
「もうヤダ!」
ミリアリアは、ディアッカから離れようと胸に思い切り手を付いた。
「ごめんごめん!待って!」
ディアッカは涙を流しながら必死に笑いを堪える。
「あのさ、ミリアリアは家族として登録してあんの」
「は?」
「だから、俺の家族として登録してあるわけよ」
「どういうこと?」
「つまりは、奥さん」
一瞬、ミリアリアの思考が停止した。そして暫く考えた後、やっとで理解した。
「えぇ?奥さんって!」
ディアッカは未だ止まらない笑いを、口元に拳を当て必死に堪えている。
「だから言っただろ?登録上は俺の嫁さんなの!ミリィは」
「えー!?」
信じられない。いくら勝手にID登録をしたからといって、ディアッカの妻としてだなんて。
そりゃ、怪しいに決まってる。妻なのに、数ヶ月に一度しか帰ってこないなんて、おかしな夫婦だと思われているに違いない。
なんて事をしてくれたのだ。
「だからさ、ここ、一応プラントでセキュリティが一番厳しいの。官僚クラスのヤツばっかだからさ、基本、家族以外は出入り禁止なんだよ」
「はあぁ!?」
「いっそのこと、オレの嫁さんになっちゃえば?」
「は?何バカな事を言ってるの?」
ディアッカがひょいとミリアリアを押すと景色が反転した。
「ひゃっ!なに?」
「だーかーらー、既成事実作りをしよう」
ディアッカはちゅっと頬に口付けると、いそいそと服を脱ぎ始めた。
「それって…」
「わかった?」
考えが安易だ。
「そんなに簡単に出来るわけ無いでしょ?」
「出来るまでやればいいでしょ?」
「バカじゃないの」
「頭いいと思うけど」
もう一度、ガツンと一発お見舞いしてやろうと、ミリアリアは拳を振り上げるが、あっという間にそれは頭上でおさえつけられてしまった。ならば何か罵声を浴びせてやろうかとも思ったが、すぐに口は塞がれてしまい、目の前が真っ暗になったと思ったら、見る見るうちにすべてが白く甘く溶けていった。


end


ヤマなしオチなしイミなし・・・スミマセン