夢の途中









アイリーン・カナーバらの停戦が申し込まれた後、アークエンジェルはクサナギとともに地球へ向かっていた。
アークエンジェル艦内の損傷は激しかったが、エターナルやクサナギの支援によって航行可能な程度にまで修理されたのだった。
ただでさえ人手不足だったこの艦。ヤキンドゥーエでの戦闘で多くのクルーの命が奪われたことによって、人員は一段と少なくなり、宇宙の塵となっていった仲間を偲んでか艦内はどこも静かだった。
ディアッカは艦内のあちこちで不具合が出るたびに呼び出され、ミリアリアとはなかなか顔をあわせることもできなかった。それでも地球に近づくにつれて艦内の故障箇所も徐々に落ち着き、今は食堂でぼんやりとお茶を飲む時間が持てるようになった。
ディアッカが食堂に向かったのは、夕食時が過ぎた時間だった。疲れた目を休めようとコーヒーを取りに食堂内に入ると、ぽつりぽつりと2〜3人しかいない部屋の隅っこに、ピンクの制服を見つけることができた。
「こんな時間に食事?遅いじゃん」
コーヒーを二つ持って、彼女の隣の席に腰を下ろす。すると俯きぎみに食事をしていたミリアリアが、ゆっくりと顔を上げた。
「ディアッカ」
力ない彼女の声に苦笑する。戦場から引き上げてきた今も、精神的にも体力的にも疲れはとれていないのだろう。トレーの上の料理はほとんど手をつけられていなかった。相変わらず青白い顔をしている。
「ちゃんと食べろよ。もう戦闘もないし、時間はあるんだからさ」
ミリアリアはコクリと小さく頷いた。そろそろと手を伸ばし、トマトを口に入れる。
「ほら、ちゃんとお肉も食えって」
彼女の手からフォークを奪い取り、ハンバーグを一口サイズにして彼女の口の前に差し出す。あーんと言ってみせると、意外にもクスクスと笑い出した。
「自分でできるわよ」
ディアッカの手からフォークを取り戻そうとする手を払いのけ、少し開いた口にほおりこんだ。
すると、口の端にソースがついてしまった。「もう!」と苦笑する彼女は、それに気付くなり人差し指で拭いとると、舌で舐めとっていた。
彼女にとってなんでもない仕草だったが、喉が鳴り、思わず顔を背けてしまう。
ディアッカは動揺している様子を悟られないように、「何?」と覗き込んでくる彼女と目を合わさないようにフォークを返した。
(アホか俺は)
コーヒーを一気に飲み干し息を吐く。ふと隣を見ると、彼女が怪訝な目を向けていた。
「なんだよ?早く食って、寝ろよ」
「今、ゆっくり食べろって言ったじゃない?」
ハイハイと降参のポーズをしてその場を立ち去ろうと席を立つと、なぜか後ろへつんのめった。
ジャケットの裾を彼女に引っ張られていたのだ。
「すぐ食べ終わるから、壊れた目覚まし、診てくれない?」





以前、ミリアリアは戦闘中に目覚ましが壊れたと言っていた。直してやろうかと言ったら、自分で何とかすると断られた。それから何も言ってなかったから、何とかなったものと思っていた。ヘリオポリスでは工業カレッジに通っていたらしいし、多少の事なら彼女でもできるはずだ。
なんで今頃?と聞けば、停戦前は目覚ましがなくても平気だったらしい。要はほとんど眠れていなかったのだと。
現在はシフトもしっかり決まっていて、よっぽどの事がない限り不規則な生活にはならない。熟睡はできなくても、うとうとすると、うっかり寝過ごす事もあるのだという。だから目覚ましがないと困るのだ。
まだ少し格納庫で作業があるからそれが終わってからならいいよと告げると、部屋で待ってると彼女は言った。
作業を終え、時計を見ると10時をまわっていた。こんな時間に彼女の部屋に行くのはどうかと思ったが、困っているのだから仕方がないと半ば強引に自分に言い聞かせ、部屋の前までやってきて大きく深呼吸をすると、小さくノックをした。
少し間があったあとすぐにドアが開いた。
「オマエさあ、誰か確認してからドアを開けろよ」
「どうして?アンタが来るって分かってたからいいじゃない?」
きょとんとする彼女の顔を見たら、妙にイライラしてしまった。
「なに怒ってんの?」
訳が分からないとじっと見上げる彼女から顔を逸らし横をすり抜け、部屋へ足を踏み入れる。
その瞬間、しまったと思った。
大部屋を彼女が一人で使用しているとはいえ、やはり、むさ苦しい男の部屋とは空気が違うのだ。
さっさと直して部屋を出ようと心に決め、どれ?と聞いた。ミリアリアは入り口を入って左側のベッドを指差す。一瞬戸惑ったが、気を取り直し靴を脱ぎ捨てベッドの上に膝をついて、ジャケットのポケットから工具箱を取り出した。そして精密ドライバーで壁に備え付けられたパネルのネジを一つずつ外していった。
ふわりと空気が動いたと思ったら、石鹸の香りが鼻先をかすめた。
香りのする方向へ顔を向けると、ミリアリアがスグ脇で膝をつき、両手で水をすくうような形を作り目の前へ差し出してきていた。
ネジをここへのせろといっているのだ。
片手に握り締めていた三本の小ネジをそこへ置き、残りの一本を外し終えると、それも手のひらにのせた。ゆっくりとパネルを壁から外し、細いケーブルを一本一本手繰り寄せては確認する。すると、一本だけ引きちぎれているケーブルを発見した。
「わかったよ」
「え?」
どれ?と彼女が顔を覗き込ませてくるので、思わず身を引くと、お互いの肩がぶつかり手のひらから小ネジが零れ落ちた。
「あ!やだ!」
「おまえなぁ」
パネル用の特殊なネジは細く目だけでは見つけづらく、二人して必死になりながらシーツの上を手でさする。なんとか三つは自分が拾い上げあと一つを更に目を凝らして探す。
すると、あ!とミリアリアが声を上げた。彼女が手を延ばす先を目で追い掛けると、自分の右膝の内側にあったネジを人差し指と親指で摘みあげた。
「これも大事な備品のひとつよね?大切にしなくちゃマードックさんに怒られちゃ・・・」
そう言いながらミリアリアは、顔を上げた。
「・・・っ」
互いの鼻先が今にもぶつかりそうな距離に、驚き目を見開く。
ほんの少し体をずらせばいいのに、それができない。離れろと脳が命令をしているのに、動く事が出来なかった。
数秒だったか?数十秒だったか?長くも短くもない暫くの間、無言のままじっと見つめ合う。
ツイと少しだけ距離を縮めるとミリアリアが瞳を閉じた。
ディアッカはほんの一瞬戸惑うが、かまわず唇を重ねた。
前に一度触れたことのある唇の感触が蘇る。今まさに触れているそれはあの時と同じように柔らかく、また眩暈を起こしそうになる。
少しして顔を離すと、ミリアリアは瞳を伏せたまま、のそのそとベッドの端に腰掛け背を向けてしまった。
(・・・なにやってんだ)
ディアッカはそんな彼女の背を見て気まずいと感じながらも、頭をぽりぽりと掻き修理を再開した。
着弾の衝撃からか、一本だけ引きちぎれたケーブルを束の中から引き出し、ビニールの表皮をカッターで剥ぎ取る。剥き出しになった芯線同士を捻り繋げると、その上からテープで保護し束の中へ戻す。パネルを壁にはめ込み、彼女に向かって手を伸ばすと無言でネジがのせられた。ドライバーでネジを締め終え、アラームが鳴るか確認する。
「ありがとう」
ピーピー鳴る音を聞いた彼女が先に口を開いた。
「いーえ、どういたしまして」
彼女に並んで少し距離を空けてベッドに腰掛け、そそくさと工具を片付ける。
「コ、コーヒーでも持ってくるわ」
ミリアリアが部屋を出ようと立ち上がった瞬間、ディアッカは咄嗟に手を掴んだ。
(ホント、なにやってんだ俺・・・)
そう思ったが、もうどうにもならなかった。自分も立ち上がり、彼女を正面から見下ろす。
ミリアリアは俯いていたが、そのうちにゆっくりと顔を上げる。
真っ直ぐに見上げる彼女の瞳に、もう俺の腹の中は読まれていると思った。
掴んだ手を軽く引きながらベッドに腰掛けると、抵抗なく彼女もそれに続いて座った。
空いた手でそっと頬を撫で、今度は彼女が瞳を閉じる前に口付けた。
唇にそっと触れては離れ、触れては離れ、何度目かに舌で上唇を撫で、薄く開いたところへ深く口付け舌を差し込んだ。
「ん・・・」
小さく声を漏らし身を引く彼女の頭に手を添え、そのままゆっくりとベッドに体を横たえさせ た。
彼女に覆いかぶさったまま唇を押し付け舌を絡ませあう。
どれくらいそうしていただろうか?ディアッカはそうっと体を離し横たわる彼女を見下ろすと、ミリアリアは腕を真っ直ぐに伸ばしたまま、じっと目を閉じていた。
ベッドに片手をついて、彼女の制服のファスナーをゆっくりと下げる。するとベルトの位置まで下ろしたところで手が止まった。それまで気付かなかった、制服内にこもっていた石鹸の甘い香りが辺りに広がったのだ。
(こいつ、シャワー浴びたのか・・・?)
男性用と女性用は、モノが違うのか?この艦にそんなところにまで配慮があるとは思えないが。とにかく匂いが違った。
(まいったな・・・)
もっとキツくて甘い香水を知っている。それが体から出るなにかと混ざり合って、 もっと酔ってしまいそうな独特の香りになる。
そんなものとは全く異なるものだが、彼女の体から香る甘い何かは石鹸の成分だけではないことは分かった。
もうそれだけでどうにかなってしまいそうだった。
上着の中に手をいれ、インナーを下着ごと乱暴に捲りあげる。
「あっ・・・」
すると予想外に大きさのある二つの膨らみが顔を出した。その頂には薄いピンクの飾りがある。
頬を真っ赤にし潤んだ瞳で自分を見上げる彼女を見下ろす。
いつかこんな日が来たならと、頭のどこかで思い描いた事もあったけれど、まさかこんなにも早く彼女に触れることが出来るなどと思いもよらなかった。
ひどく興奮する。
高ぶる気を抑えながら、彼女の髪に指を入れゆっくり梳かしてやる。
すると目を伏せ、灯りを消して欲しいと彼女は顔をそらした。ディアッカは体を放しベッドから降りると、ドア近くのスウィッチに手をのばしオフにする。室内は突然暗闇に包まれるが、スグに目が慣れ、足元を照らす非常灯のみでも十分な明るさがあった。
一歩一歩ベッドに近づきながら、自らジャケットを床へ脱ぎ捨てる。ゆっくりとベッドに手を付き、彼女の体に跨り顔を覗き込んだ。
ミリアリアは目を閉じて固まったまま身じろぎ一つせず、じっとしていた。そっと頬を撫でると一瞬ピクリとするが、相変わらず動かない。薄暗い中でも、彼女の体は白くはっきりと見える。小刻みに震えているようだったが構わず胸に顔を埋め、愛撫した。
「・・・あっ」
胸の頂を舌先で刺激しながらスカートの中に手を入れ下着を下ろした。
「やっ・・・」
ミリアリアはあまりの羞恥に体ごと壁に向く。
ディアッカもインナーを手早く脱ぎ床へ放り投げ体を横たえると、壁に向いたままの彼女の体を後ろから抱きしめた。
(小さい)
自分の腕にすっぽりと納まってしまうミリアリアの体の小ささに胸が痛む。
訓練も何も受けていないただの学生が、前線で恋人や仲間の命が消えていくのを見ていたのだ。よく神経がもったものだと思う。
茶色い跳ねた髪の間から少しだけ覗く細い首筋に唇で触れた。 腕の中で、小さな体がピクっと反応する。ディアッカは両脇から手を差し込み、柔らかな乳房を掴みできるだけやさしく揉みしだく。
「・・・んんっ」
時々、強く掴んでは緩め、先端の硬くなった部分を指で弾く。
繰り返される手の動きに、ミリアリアは次第に羞恥よりも全身を包み込む暖かさとその心地よい快感に身を委ねていった。
小さく縮こまっていた体が緩んだと感じたディアッカは、そろそろと手を滑らせ彼女の下腹部へと移動させ、茂みの中へ指を偲ばせる。
「あっ」
ミリアリアは体を仰け反らせ、声をあげた。温かな蜜の溢れる入り口を数本の指で擦ると、更に大きく声をあげる。
体を起こし、彼女の体を仰向けにさせる。ミリアリアは一瞬、目を見張るがかまわず両膝に手を当て、左右に大きく開かせると、その中心を指で撫でた。
「やっ・・・ああっ!」
ゆっくり、じっくり、感触を確かめるかのように指を滑らす。彼女がビクビクと体を震わせる様子を眺め、数度入り口で円を描くと、数本の指を蜜壷へと沈みこませた。
「・・・んあっ!」
ミリアリアは堪らないとばかりに背を仰け反った。彼女の脚が閉じられないよう片足を抱え上げ、内腿に舌を這わせながら、一番声を上げる場所を順番に探っていく。するとそのうちに触れるたびに甲高く声を上げる部分にたどり着いた。
ディアッカはここぞといわんばかりに内壁を擦りながら親指で肉芽を潰し、一気に彼女を攻めたてる。
「やっ・・・あ、やぁっ」
すると、ミリアリアは全身を震わせながら、瞬く間に絶頂を迎えた。
彼女の中から指を引き抜けば、トロトロと愛液が溢れ出る。
ディアッカはズボンのファスナーを下ろし、膨れ上がった自身をその入り口に添えあてた。
「あっ・・・!」
未だ荒い呼吸をし続けるミリアリアが、体を捩じらそうともがく。
そうはさせないとばかりに自分の肩に彼女の足を抱え上げ、体重を軽くかけて押し入れる。
しかし、先程までは放さないとばかりに指をくわえ込んでいた秘部が、受け入れようとしない。
何度か試すが、固く閉じられた門は開いてはくれない。
蜜で濡れたソコで、自身は早く彼女と一つになりたいとのた打ち回り、暴れるソレを握り閉ざされた扉をこじ開ける。
「・・・待って」
グチュリと音を立て括れ部分まで入ったところで、きつく締め上げられた。
「ミリ・・・、・・・っ!」
「やっ!」
それはそれで気持ちいいが、欲望の塊はもっと奥へ入りたいと荒れ狂う。
自分の体の下で跳ね回るミリアリアを押さえつけ、更に体重をかけ押し込む。
「だめっ!・・・痛っ!」
「だいじょうぶ、ゆっくり息をして」
ディアッカはゆっくりと彼女の中に埋め込まれていく様を見ながら、言い知れぬ何かが湧き上がってくるのを感じていた。
久しぶりだからか?それとも彼女だからか?めちゃくちゃに暴れてしまいそうだ。
ディアッカは正気を取り直すように何度も頭を左右に振った。
(いけない、 やさしくしなければ。 こんな小さな体、壊れてしまう。 やさしく)
「ミリアリア・・・」
(もう少しだ、 もう少しで一つになれる)
「待って・・・、ディアッカ!いやぁっ!」
突然、彼女の抵抗がなくなった。
「・・・うっ・・・」
足を抱えあげられ体をくの字に折り曲げた状態で、両手で顔を覆ったミリアリアの指の間からは、薄明かりにキラリと反射するものが見えた。

(最低だ)

がたがたと震える足を肩から外しベッドにそっと下ろす。
腕を伸ばし彼女の体を抱きしめたい。
ディアッカは、後少しでその肌に触れられるところでグッと手を握り締めると、足元でクシャクシャになったブランケットを彼女の体に掛け、床に足を着いてベッドの端に腰掛けた。
「・・・ゴメン」
やっとの思いで出たのがその一言で、自分が情けなくミリアリアに気付かれないよう苦笑し立ち上がった。
「待って!」
突然、手首に巻きつく冷たい感触に驚き振り返った。
「わたし・・・、初めてじゃない・・・けど・・・、わたし」
ミリアリアは今にも消えてしまいそうな声で呟いた。
彼女なりに必死で戦い、やっと手に入れた平和。 けれど失ったものはあまりにも多く、やっと帰るべき場所へ戻れるという喜びを恋人や大切な仲間と共に味わうこともできない。
突然訪れた安息の時間。 戦争だったんだと割り切ることはできないのだろう。やりきれない思いをどうすることもできず、きっと、とてつもなくただ、淋しいのだ。
先程の熱とはうって変わって、氷のように冷え切った手をとり、彼女に並んでベッドに座ると、温めるように両腕で包み込んでやる。彼女の冷たい手の平が脇腹から背中に移動し、ゾクリとした。
「ミリアリア・・・」
俺ではオマエの心の拠り所にはならないのか?
慰めてやる事も出来ないのか?
ディアッカはミリアリアの背に回した手に力を込めた。
まだ冷えたままの体にまわした腕に力を込め、彼女の顔を覗きこんだ。暗い宇宙空間に浮かぶ青い地球のような瞳が、今にも泣き出しそうな情けない顔をした自分を映し出していた。
目じりに雫を溜めた瞳が弱々しく微笑むと、情けない男の姿が消え唇がヒンヤリとした。未だ体の火照る自分には、心地よい感触だった。互いの体温を確かめ合うように唇で触れあう。すると、なまぬるい舌先が控えめながらも差し出された。
条件反射というべきか?すぐにそれに応えるべく自らも舌を差し出し絡める。何度も角度を変えて、離れてはまた互いの舌を求め唾液を交換し合う。
(ミリアリア・・・)
ゆっくりと体をずらしながら、彼女の体をベッドに横たえた。背中に回っていた腕は、いつしか首に巻きついていた。





長い長い口付けだった。もうどれくらい唇を押し付けあって、舌を絡めているのか分からない。
ゆっくりと彼女のから離れると、荒く短い息を何度も繰り返した。
「だいじょうぶか?」
「平気・・・」
そっと頬を撫で、必死に呼吸を整えようとする彼女を見下ろした。ゆっくりと、本当にゆっくりと、伏せていた瞳が開き、まん丸の蒼い珠が自分を真っ直ぐに見上げた。
「・・・私、お願いをしたの」
「うん?」
「皆を・・・、ディアッカを連れて行かないでって」
「・・・神様にか?」
そっと髪をやさしく梳かしてやる。ミリアリアは小さく首を振った。
「・・・トールに」
自分でも愕くほど心臓が跳ね上がった気がした。
今、きっと、えらく余裕の無い情けない顔をしているんだろうと思う。それなのに彼女は、今にも零れそうなほど涙をいっぱい浮かべて、それでも堪え、口元では必死に笑みを浮かべている。
まるで“私って、サイテーでしょ?”と言っているかのように。
「ミリアリア・・・」
ディアッカはミリアリアの制服のベルトを外し上着から腕を抜き取り、インナーもスカートも剥ぎ取った。
「ディアッ・・・」
そしてミリアリアが何かを言う前に唇を塞いだ。
この子を死なせたくない。ただそれだけの思いでここまできたというのに、それが、この自分の存在が、彼女を苦しめてたというのか。
(何も言わせない。もう、何も)
ディアッカは少々乱暴に二つの丘を掴みあげながら、彼女の脚を割り、中心に腿を擦りつけた。
「んっ!・・・ぐっ」
無造作に唇を離すと、筋張った首筋を滑り、胸元を所々チュっと音を立てて吸い上げた。
「あ・・・」
ミリアリアの細い指が髪に差し込まれる。
ディアッカの舌が白くしっとりとした肌の上を余すところなく這いまわりながら下腹部へ移動をしていき、彼女にとって一番敏感な部分に触れた瞬間、ミリアリアは大きく声をあげた。
舌全体を使って秘部を舐めまわしては、先を尖らせ、割れ目の先にある突起物を刺激する。
先程とはまた違う甘美な感覚に、ミリアリアは溺れ酔いしれた。
「ディアッ・・・あっ!」
やさしく撫で回していた指先が、突然、髪をぎゅっと掴みあげる。
「やあぁっ!」
昇りつめようとする快楽から逃れるかのように暴れる腰を無理矢理ベッドに押し付け、一番過敏に反応する部分だけを愛撫し続けた。
「あっ!・・・あぁっ!」
ミリアリアは大きく悲鳴をあげた後、グッタリとカラダの力が抜け、余韻に浸るかのように体を捩じらせた。しかし、ディアッカはすぐさま彼女の脚を開き、自身を間髪いれず埋め込んだ。
「あうっ!あぁっ!」
いきなり塊を埋め込まれたことによって、彼女の全身が強張った。
「だいじょうぶ、ゆっくり動くから・・・・」
そんな言葉をかけたところで、彼女が安心するとも思えなかったが、ゆっくりゆっくりと腰を前後させると、徐々に彼女の中は緩んでいった。
「んっ、・・・はぁ・・・」
どちらともなく溜め息が零れ落ちる。
ディアッカはあまりの心地よさに、めちゃくちゃに動いてしまいたい衝動を堪えるのに必死だった。
ゆるゆるとミリアリアが手を伸ばし、そっと頬を撫でる。
「アンタが生きて帰ってきて、嬉しかった。・・・けど、どうしてだか分からないけど、不安なの・・・」
「・・・言うな」
同じ気持ちだった。
どこまでが現実で、どこまでがそうでないのか、信じたいけど信じられない。
俺はそう、捕虜になったあの時からずっと、夢じゃないかって、そう思ってきた。
ミリアリアと出会ったことも、三隻側に加担したことも、今、こうしていることも、多分、夢なんだと。 夢だからきっと、不安なんだ。
ならば覚めないで、永遠に夢みたままでいさせてくれ。
ディアッカはゆるりと腰を押し付け、彼女の内部をいっそう深く抉った。
(夢なのにどうしてこんなにも気持ちがいいんだ・・・)
眉根を寄せながらもうっとりとした表情で目を閉じるミリアリア。
「・・・はぁ・・・・すごい」
何度か吐く息の中に混じって出た彼女の一言に、それまで必死に抑えていた何かが弾けた。
彼女の両足を抱え上げそのまま体重をかけて覆いかぶさる。
「うっ!あぁぁっ!」
突然の状況の変化に、ミリアリアは目を見開いた。
「はっ・・・、あっ!」
焦がれて焦がれて、やっと掴んだミリアリア。こんなに傷つけてるとも知らずに。
(オレはバカだ)
今までのが嘘のように、激しく腰を打ち付ける。
まるで吸い付くかのような内壁を、ディアッカはひたすら擦った。
「あっ、あっ・・・、やぁーっ!」
「はぁっ・・・くっ!」
みるみるうちに彼女の内壁が収縮してゆき、一気に締め上げられてしまう。ディアッカは果てる寸前で彼女の内部から自身を引き出すと、仰け反る彼女の身体をきつく抱きしめた。
静かな室内に響く互いの荒い息と、肌を通して伝わる早鐘のように打つ鼓動がシンクロする。
暫くすると、どちらも徐々に落ち着きを取り戻していった。ディアッカは腕の力を緩め、そっと彼女の顔を覗きこむ。
(たとえこれが夢だとしても、オレは彼女の事が好きだと言う事は事実だ)
瞳を閉じたままいっこうに開く様子のないミリアリアの顔を見つめている内に、ディアッカの意識は遠のいていった。





静かだ。 静かすぎても、チーンと耳鳴りがして辛い。いっそ、何か物音がすれば、そこに自分以外の誰かがいることに安心するのに。
無意識の中で、思わず耳を懲らしてしまう。
(あぁ、なんの音だろう?いつか聞いた、アラームだな。くそっ、まだ夢をみていたいのに)
ピーピーという電子音がけたたましく鳴り響いていることに覚醒する。
腕の中で身動ぎするミリアリアを見て、夢じゃなかったんだなとなぜか安心する。
「いったい、どっちがいいんだ・・・?」
ディアッカはゆっくりと身体を起こし自嘲すると、壁に備え付けのスィッチに手を伸ばした。
その日アークエンジェルは地球に降りる朝を迎えていた。



ずっと思っていたんだ。
心のどこかで、きっと俺は夢を見ているんだと。





後始末は?とか、ミリタンのソックスは?とかのツッコミはどうぞご勘弁ください(土下座)