東京大学海洋調査探検部の30周年記念シンポジウムが開かれると知り、聞きに行ってきました。場所は、東京大学内の山上会館。初めて東大の赤門くぐっちゃいました (^^;。
東京大学海洋調査探検部とは、合宿活動を通して形作られ、各自がテーマを持って潜ることが目標となっているそうです。 このような発表会は5年ごとに開かれ、今回の内容は現役部員3名による研究発表と、パネルディスカッションでした。
研究発表1「潮と回遊魚」 角田真彦氏(学部4年)
日 時 '99年10月9日(土) 13:30〜16:30 場 所 東京・本郷三丁目「東京大学山上会館」 参加費 無料 内 容 第1部 現役学生研究発表(3編)
第2部 パネルディスカッション
「海洋調査探検の将来を語る」
- 潮の変化と回遊魚の出現の関係を調べるため、探検部の過去5年間の八重山諸島での春合宿のログブックから、グルクン等の「小型回遊魚」、イソマグロ等の「大型回遊魚」の出現割合と潮の状態を照合した。
- その結果、大潮の時がピークで、小潮の時がボトムとなる、相関関係がみられた。
- また満潮・干潮の1〜2時間前が、最も魚影がうすい。満潮・干潮後は潮の流れが逆になり、海底の栄養分が海中に舞うが、直前は一番落ち着いている時だからと思われる。
- 大潮で、満潮・干潮の時が最も魚影が濃いので、積極的に潜るべきである。
研究発表2「潜水計画(減圧)理論」 岩上寛氏(学部6年)、阿部 浩一氏(学部4年)
- まず、ダイビングコンピューターや指導団体によって減圧理論が微妙に異なるがなぜ統一されていないのか、次に、現在最も一般的に使われてるHaldaneの減圧理論の説明、最後に、現実的にどのように減圧理論を利用していくかについて。
- 現在の減圧理論に用いられてるガスの動態はあくまで想定でしかなく、基本となる考えにもそれぞれ相対立する考え方がある。
- さらに減圧表の評価にヒトを用いた実験はできず、実際の潜水からフィードバックして検証して確認する、というのが大半の考え方である。
- 減圧表やダイコンは、統計学的に安全と保障されたものではない。個人差、体調といった要因が大きく、体調不良、潜水後の運動やアルコール、熱いシャワー、山越え、飛行機搭乗などのリスクを避け、水分を多く摂る必要がある。
- ホールデンの理論の説明はあまりに難解で、意識がトンでしまいました (__)zzZ。
研究発表3「サンゴとサンゴ礁魚類との関わり」 山下貴之氏(学部3年)
- '98年夏、世界中のサンゴ礁域で海水温の異常上昇による白化現象が発生し、その影響を調査するため、'99年春合宿で宮古地方の伊良部・下地島を潜った。
- 2×10m内の生存サンゴ被度と魚種・数を調査したところ、生存サンゴ被度と魚の個体数の間に相関が見られた。
- 今回の調査は計測が6回と少なく、調査魚種を限定したので、明確な結果は得られなかったが、'95年の佐野光彦氏の調査によると、樹状サンゴが死滅すると、そこに棲む魚類の個体数・種数は減り、特にサンゴ食魚、採餌場・隠れ家グループ、隠れ家グループが減少するが、採餌場・ねぐらグループには影響しなかった、との事である。
パネルディスカッション「海洋調査探検の将来を語る」
- 我々はプロではないのだから、プロと同じアプローチではかなわない。しかし、生物学など最低限のバックグランドは必要で、部員のレベルをある一定まで保つ必要がある。OBには各種専門家もいるので、レクチャーしてもらうのもよい。
- アマチュアの強みとしては、長期的にデータが取れる事、大勢揃っていることなどがある。プロが思いもよらない斬新なアイデアで、自由にやってもらいたい。
- 最近、人間関係の苦手な学生が増えているが、合宿のキャンプなどは集団活動やリーダーシップの取り方など、いい経験になる。