■「日本サンゴ礁学会」公開シンポジウム
11/1〜2「日本サンゴ礁学会」第1回大会が開かれました。併せて開催された、11/3「公開シンポジウム」の方に参加してきました。 参加者は、もっと多いかと思ってたのですが、500席位の会場に、150人位。取材陣も来てなかったようで、ちょっと寂しい感じでした。
議題の中心は、やはりサンゴの白化現象でした。司会の山根氏は不勉強とは言い訳してましたが、「なぜサンゴは存在するのか?」等、とんちんかんちんな質問をパネラーに投げかけ、困らせてました (^^;;;。 しかし、パネラーの方々からは色々と参考となる話があり、前向きに取り組んでいる姿勢が伺えました。
白化したサンゴは一見幻想的な美しさを感じますが、まさに死の間際の状態で、死んで藻が付いてしまったサンゴの瓦礫が広がる世界は、なんとも無残です。 この夏の白化現象の直接の原因はエルニーニョ現象の余波と台風が来なかった事による高水温のようですが、年々、海の汚染や地球温暖化が進行しています。 我々一人一人に何が出来るか分かりませんが、サンゴの白化現象は地球への警告と受け止め、今後のあり方を考えていくべきなのでしょう。
ちなみに来年は、沖縄・東京の同時開催の予定だとか。参加費は無料としても、現地に行くのは...(^^;;。
日 時
'98年11月3日(火) 12:30〜17:00
場 所
東京・高田馬場 早稲田大学「井深ホール」
参加費
無料
出席者
司会:山根一眞(ノンフィクション作家)
パネラー:近森 正(慶応大学)
大森 信(東京水産大)
土屋 誠(琉球大学)
工藤君明(海洋科学技術センター)
茅根 創(東京大学)
内 容
12:40-13:45 緊急発表会「サンゴ白化問題」
14:00-15:15 基調講演「サンゴ礁から学ぶ人類の未来」
15:30-17:10 パネルディスカッション
緊急発表会「サンゴ白化問題」
白化現象の説明。白化した時点ではまだ生きている。小さな海藻が付くと完全に死んでいる。最近では白から茶に変わってしまった。
80年代以降、小規模な白化現象はくり返し起きているが、ここまでのは初めて。7月に始まり、8月は全体に広がり、9月はミドリイシが大量死した。例年で水温28〜29℃のところが、水深20mまで30℃以上になった。1m四方の針金の枠を置いて定点観測したところ、水深2mでは75〜80%が失われた。深場はまだ白いまま。
今年の梅雨は例年の倍の降雨があり、多量の赤土や淡水が流出した。高水温とのダブルパンチで大きな被害になったのではないか? '97〜98年の冬の低水温が影響した、という考え方もある。
石垣島で100mのラインを張って定期観測した所、ニザダイなど藻類を食べる魚が増えていた。また100m中に、7月は 35%あったミドリイシが、10月には 0.5%と、壊滅的な被害を受けた。
白化現象は、地球規模で発生している。特に年々、冬の水温が上がりつづけている。
基調講演「サンゴ礁から学ぶ人類の未来」
マイアミ大学海洋大気学部 Alina Szmant 教授の講演。原題は『 Coral Reefs and Mankind : Can one survive without the other ? 』(同時通訳)
台風など自然現象によるサンゴの被害はしょうがないが、魚の乱獲など人間に原因のあるものは手を打つ必要がある。
近年海水中の、栄養塩、堆積物、化学物質が増えている。サンゴ礁は、もともと貧栄養の海に形成されるもので、このままでは藻類にとって変わられてしまう恐れがある。
ホワイトバンド、ブラックバンドなど、サンゴの病気が増えているのは、繰り返しの白化現象でサンゴが弱ってるせいとも考えられる。
サンゴを食べる巻き貝もいるが、かつてはロブスターの餌となり数が抑えられていたが、ロブスターの乱獲によりこの巻き貝が異常に増殖し、サンゴの食害が広がってるところもある。
ここ15年、世界中のサンゴが減少している。
魚の乱獲が行われている地域では、藻類がサンゴにとって変わっている。
サンゴ礁は複雑な生態系を支えており、ある捕食者を過剰に獲ってしまうとバランスを失ってしまう。
水質の悪化より、魚の乱獲の方がより大きな被害を与えている。
3億年前からサンゴはあり、人類がいなくてもサンゴは容易に生息できるが、このままで共存できるのだろうか?
パネルディスカッション
サンゴの移植はコストがかかり過ぎるので、幼生を持ってって増やしてやる方がいい。例えば那覇港のテトラポットには、5年位前から勝手にサンゴが繁殖している。サンゴの繁殖しやすい条件を調べ、生息できる環境をつくってやることが大切である。
サンゴの一斉産卵を一番知ってるのは魚達。色々な種類のものが一斉産卵するのはサンゴだけだが、これは動けないのと、まず魚の腹を一杯にさせて生き残りを増やすため、という見方もある。
サンゴの7つの役割は、防波堤、漁業の場、多様な生物が共存、環境浄化、観光・心の安らぎ、二酸化炭素の吸収、子供の教育・人材の育成であり、いつまでも維持しなくてはならない。
サンゴ礁は生態系の基礎であり、サンゴがなくなるということは、生物すべてがなくなってしまうということである。まず現状を把握し、何をすべきが考えるべきである。
サンゴ礁は多様な生物により支えられている。ただ、1つがズレると全体がダメになってしまい、脆弱な釣り合いのもとにあるとも言える。
単に高水温だけでなく、これまでの人間によるストレスがたまりにたまって、この白化現象が起きたのではないだろうか。
今後、更に環境の変化が続けば、サンゴ礁は絶えてしまうだろう。そうならないよう、緊急に対策を練らなくてはならない。
日本人は海のことをあまり知らない。堤防で海を遮断し、教えられる人もいない。子供達はもっと海を体験すべきであり、サンゴ礁はもってこいの場である。
白化現象を、すぐにみんなに考えてもらうのは難しい。きちんと記録を残して、定期的にモニタリングをしていく必要がある。
種の多様性をいかにして守るか。今や、人と関りのない自然はない。自然が発しているシグナルを人は捉えないといけない。これが分からず、乱獲、破壊を引き起こしてしまっているのではないか。
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" My Diving Page " by Lonver at 98/11/07.