長蘿堂通信2004

2004/12/26 Sun  浅野長矩の「非道」

 最近、浅野長矩の行跡に関する風聞を記した文書が見つかったよし、毎日新聞で報道された。
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20041224k0000m040043000c.html

 土佐の山内家から出た文書で、内容は下女の放火に関するものという。この一件については、浅野家の記録に残っており、赤穂義士史料館さんの年譜で紹介されている。私も「『土芥寇讎記』の浅野長矩評について」という一編で言及したことがある。その意味で、行状そのものは目新しくもないが、風聞がどのようになっていたかは興味深いことである。
 当該記事で気になるのは「この教訓を赤穂藩が生かしていれば、松の廊下事件はなかった?」というコメント。何とはなしに、長矩暗君説を示唆するような書きっぷりである。もともとの問題は放火犯の処断についての手続違反であり、不正とか悪行とかとは異なる。長矩個人の資質に帰するのが適当かどうかも判然としない。面白い情報ではあるが、軽々しく飛びついてはいけないと思うのである。


2004/12/14 Tue  12月14日

 今年も12月14日がめぐってきました。
 毎年この時期がカウンタの稼ぎ時。今年は特に、10月からのマツケン忠臣蔵の影響でしょう、早くまわっています。たぶんYahooかなんかで「忠臣蔵」検索かけたら出てきたけど、ちょっと見てつまんないやと次へ移った方が多いことでしょう。

 どうもすみません

と謝っておきます。


2004/12/08 Wed  菅野覚明『武士道の逆襲』

 講談社現代新書の装丁が変わった。コスト削減のためかも知れないが、さっぱりしていてなかなか感じがよい。で、その新刊の1冊が菅野覚明『武士道の逆襲』である。
 本書のテーマは帯にある「武士道は大和魂ではない!」ということになろう。武士道と大和魂を同一視するのは近代思想だというテーゼ。先頃紹介した佐伯真一『戦場の精神史』同様、世上に流布する「武士道」概念をばっさり切る快著である。
 もっとも、それでは満腔の賛成をできるかというと、そう単純にはいかない。このコーナーは本格的な批評をするには向かないのだが、ざっと読んだ感じでは、中近世の差異を軽視している点、儒教的「士道」論を軽視している点などが気になる。中世の「弓矢取る身の習い」と明治武士道との距離感を強調し、その断絶を言うのであるが、これは如何なものだろう。国民道徳の樹立を目指した時に「武士道」の伝統に頼っていったことを直視するならば、その連続性を正当に評価すべきではないだろうか。もちろんその場合、超歴史的な「大和魂」の実在を前提にするのではなく、「大和魂」自体が歴史的な所産であることをきちんと理解していく必要がある。
 ともかくも、「武士道」について考えようとする者には、大いに刺激的な書物である。

2004/11/23 Tue  田辺とおる・小畑朱実の二人会

 えー、しばしば御紹介しておりますバリトン歌手・田辺とおる君ですが、今度の日曜にメゾソプラノの小畑朱実さんと二人会をやります。
 会場は横浜市港南区民文化センター「ひまわりの郷」、開演は13時です。お近くの方、ちょっと気が向いたらでもお出かけ下さい。
 詳しくはhttp://homepage1.nifty.com/opera/2004_1128.htmをどうぞ。

2004/10/26 Tue  歴史資料ネットワーク

 台風被害のニュースがまだ続いているうちに、今度は新潟の中越地震のニュースが入ってきました。被害にあった方には心からお見舞い申し上げるとともに、一日も早い復興をお祈り申し上げます。
 ところで、こうした時に貴重な史料も被災していることがあります。もちろん生活優先に考えるべきではありますが、できることなら史料の保全にも気を配りたいものです。そういう活動をしている歴史資料ネットワークという組織がありますので、御紹介しておきます。
http://www.lit.kobe-u.ac.jp/~macchan/


2004/10/21 Thu  台風見舞

 台風23号は今年最大の被害をもたらしたそうです。罹災された方々には心からお見舞い申し上げます。
 特に、りくの里・豊岡には以前からお世話になっているS氏がおいでなので、他人事とは思えません。様子をお伺いするメールを送ろうか、かえって御迷惑だろうか、と悩んでいるところです。


2004/10/20 Wed  テレビ朝日の「忠臣蔵」

 松平健さん主演の「忠臣蔵」が今週から始まりました。
 いやもう、史実にこだわるなんて野暮なことは、言わないつもりです。楽しんで見ることにいたしましょうね。

2004/10/12 Tue  陶房のぎ展

 しばしば御紹介しております「陶房のぎ」。本日から横浜で展覧会をやっています。
  http://www2.nns.ne.jp/pri/nogi/n010-010.htm
 期日 10月12日(火)〜17日(日)
 時間 11:00〜19:00(最終日は16:00まで)
 場所 ぎゃるり じん
    横浜市中区石川町2-85 電話 045(641)1777
 お近くの方、ぜひお立ち寄り下さい。

2004/10/04 Mon  いかん

先日お知らせしたオペラ「魔笛」は大盛況だったそうです。
それにひきかえ・・・。
全く更新せぬまま10月を迎えてしまいました。反省。

2004/09/28 Tue  ヨコハマ・オペラ「魔笛」

ときどき紹介している田辺とおる君が出演するオペラです。
歌劇「魔笛」
 指揮・珠川秀夫、演出・飯村孝夫
 10月3日(日)14:00開場 14:30開演
 横浜市栄区の栄公会堂(JR本郷台駅)
 前売り4000円、当日4500円
お近くの方、よろしかったらお出かけ下さい。


2004/08/28 Sat  更新情報

 通信も書かずにUPしてましたが、「寺坂問題小考」三部作、その1「吉田忠左衛門の狼狽」、その2「身分の壁」、その3「小身者の悲しさは」ということで一応の完結です。
 皆さんが片山さんの本を読んでいてくれればもっと別のスタイルで議論できたような気もするんですが、逃亡説と密使説の両方を敵に回すので、どういう風に進めたらよいのかちょっと困惑してました。一本で書かなかったのも、そのあたりの苦心の反映です。それが成功しているかどうか、心許ない限りです。

2004/08/20 Fri  4万ごえ

 ふと気づくと、カウンタが4万を超えてました。2万が2002年12月、3万が2003年8月ですから、大体同じペース。10ヶ月に1万、月に1000、日に30ということですか。
 更新も間遠な弱小サイトですが、皆様に支えられてここまで来ました。今後ともお見捨てなく御贔屓のほど、隅から隅までずずずいーっと・・・って歌舞伎の口上じゃないよ。


2004/08/10 Tue  片山伯仙「義士寺坂吉右衛門」

 再燃した寺坂問題について、以前「寺坂逃亡論争の問題点」(li0008)を書いて、一応の所見を示しておいた。私としてはそれ以上関わりはないのだが、聞くところでは、その後もくすぶっているらしい。それなら私見をまとめておくのも無駄ではあるまいと思って書き始めたものの、どうもうまくいかない。理由ははっきりしている。駄文を弄するまでもなく、片山伯仙師の名作「義士寺坂吉右衛門」を読めば済むことだからである。
 赤穂花岳寺から昭和37年に出版された『義士研究叢書第二編』は「大石良雄と良雪和尚」「義士寺坂吉右衛門」の両篇から成る。本書において伯仙師の出した結論は
 一 寺坂吉右衛門は確かに討入りをしている。
 二 その欠落は逃亡ではなく、帰されたのである。
というものだった。豊富な知識と穏健な判断によって示されたこの結論に、私は満腔の賛意を表するものである。
 逃亡説は正しくない。といって、密使説も妥当でない。40年も前に決着はついているのだ。もちろん時代がかわり、論者がかわり、新しい知見や新しい理論が生まれてくれば、新しい議論のまきおこる余地があるだろう。しかし、それは旧来の説をきちんとふまえた上での話である。今、寺坂論争に参加している人々が、伯仙師の見識をきちんと継承しているとは、私には思えないのである。
 私家版の『義士研究叢書』は稀覯書に属する。この書が広く読まれていれば、と思うのは私だけではあるまい。赤穂には伯仙師の他にも内海定治郎・平尾孤城といったすぐれた郷土史家がいたはずだ。今では入手難になっている彼らの論稿を編集・復刻していくことこそ、不毛な議論に終止符を打つ捷径に違いない。

2004/08/07 Sat  宮地正人『歴史のなかの新選組』

 半年ほど前、松浦玲『新選組』(岩波新書)の紹介をしたが、その後間もなく同じ岩波書店から宮地正人『歴史のなかの新選組』が出版された。ちょっと手に入れるのがおそくなって、ようよう読了した。
 松浦氏の著書同様、幕末史の専門家の手になるもので、「尊皇/佐幕」では割り切れない政治のダイナミズムの中に、有志集団新選組を位置づけたものである。幅広い視野と堅実な史料批判で、優れた成果をあげた。同時代の風説書を利用したところは、著者ならではの独擅場である。考証的には、いわゆる隊規の成立時期に関するものと、大和屋焼き討ちに関する部分が興味深かった。
 全編がおもしろいのではあるが、あえて本書の最良の部分をあげるなら、第10章「史実と虚構の区別と判別」から第11章「新選組研究の史料論」にかけてであろう。子母沢寛『新選組始末記』への歴史学者としての思い入れが本書に結実したことには、一種の感動を覚える。
 新選組自体の評価には、まだ物足りない感じがしないでもない。本書を手にした時には、身分制との関係でもっと鋭利な議論が展開されることを期待していた。同志的結合を強調することが、子母沢同様の爽やかな新選組像につながってしまったのではないか。同志的結合が誅戮組織として利用されることの政治的意味、あるいは幕末政治史におけるテロの役割が、いまひとつ鮮明になっていない憾みなしとしない。しかし、ないものねだりをしても始まるまい。
 数多の研究蓄積をもちながら、なお新選組研究は緒についたところである。とりあえずは、著者とともに『近藤勇書簡全集(仮題)』の刊行を切望しておこう。

2004/07/28 Wed  岩波文庫『松蔭日記』

 岩波文庫今月の新刊に『松蔭日記』が入っていた。
 念のために言っておくと、これは元禄時代の『栄華物語』、柳沢吉保を光源氏か道長になぞらえて、吉保の愛妾・町子が著した、雅文体の長編ノンフィクション・ノベルである。
 元禄の文学と言えば、芭蕉・西鶴・近松である。近世文学史のなかで、この種の作品があまり重視されないのは、やむを得ない。この書はむしろ近世史の史料としての価値が高い。柳沢に近い立場で成立したもので、曲筆・美化があることはやむを得ない。しかし、そのことに注意して読みさえすれば、大名の生活や元禄の政治について、実に多くの事を教えてくれる。少なくとも『護国女太平記』よりは良質である。
 私は『甲斐叢書』所収のテキストで読んでいたのだが、中古文学になじみのうすい身としては、文体に辟易していた。今回は多くの注をつけて、実に読みやすくなっている。ありがたい本が登場したものだ。
 文学作品としての評価は、恐らく高くはない。早晩絶版が予想されるので、元禄時代に興味のある方は今のうちに購入されることを、強くお勧めする。

 ところで、前から疑問に思っていたのだが、この著者は正親町町子でよいのだろうか?吉保・町子の共著とすべきである(校注者・上野洋三氏のこの見解には賛成だが)とかいうのではなく、正親町氏を名乗らせる事に問題はないだろうか。なるほど実父は正親町実豊に違いないが、田中氏(別にうちの親戚ではありません)の養女となっていたのだから、“田中町子”せめて“田中(正親町)町子”と表記すべきではないだろうか。『寛政重修諸家譜』の柳沢家の部分、町子の子どもたちについての記述でも、「母は田中氏」となっている。現在の表記では、正親町を公称できない町子の地位を、正しく伝えられない。ひいては、江戸時代の家・身分についての理解にも関わるのではないだろうか。

2004/07/13 Tue  大人の猫展

しばしば御紹介しております「陶房のぎ」ですが、
現在、下北沢の「器」で開催されている「大人の猫展」に参加しています。(7月25日まで)
http://www.utsuwa.co.jp/saiji/saiji_top.html
同時に長野県安曇野の「ギャラリーぬく森」で「陶房のぎ展」も開催中(7月19日まで)
http://www2.nns.ne.jp/pri/nogi/n010-000.htm


2004/07/03 Sat  佐伯真一『戦場の精神史』

 佐伯氏は中世文学の研究者である。『平家物語』などに見える「だまし討ち」の事例から、堂々と戦うという武士像に疑問をもち、ついには副題に「武士道という幻影」とあるとおり、いわゆる武士道が幻影であることを喝破していくのである。
 行論は明快。きわめてスマート。たいへん魅力的な出来になっている。
 もちろん異論はある。近世の部分については結構いい線まで行ってるのに、と思うところがしばしば。「武士道」と「士道」の別扱いを安易に継承しているのは、著者の関心からは問題だろう。近世後期にこれが一体となっていることをふまえないと、近代の武士道論が理解しづらいはずである。また、演劇や俗文学を捨象してしまっているのは、“幻影”の成立を考えるのには致命的だろう。
 しかし、である。そうしたことを差し引いても、いわゆる武士道論のために本書は必読のものとなるだろう。出版社の営業上の理由もあってか、近世史研究者の著作がしばしば武士道礼賛に陥ってしまっているのを考えれば、こういうスタンスの本は貴重な存在だと言わざるを得ない。

2004/06/06 Sun  足助本『赤城義臣伝』

 「日本の古本屋」で『赤城義臣伝』の写本が出ていた。あまりこういうものは買わないのだが、そんなに高くなかったので、たまにはと思って購入してみた。
 帙入10冊揃。多少虫食いはあるものの、保存状態はまずまず良好。だが、内容を読んで驚いた。明らかに片島深淵の『赤城義臣伝』とは異なっている。うむ、しかし、どこぞで見たような・・・。幾冊かと見比べた結果、熊本の堀部家に伝来したものを明治42年文昌閣が翻刻出版した『誠忠武鑑』と同一である事を確認した。書名だけではわからないこと、よくよく気をつけて見るべきである。

 ところでこの写本、帙の内側に筆写者の署名があった「当家三代之姓 小出権右衛門 藤原多善(花押)/時于天保丁酉龍次中夏写之/号百畝園蘭所」。また各冊に「通俗三州足助/油屋権右衛門」の蔵書印があり、第十巻の終わりの方には「天保八歳丁酉之夏当御陣屋宮川様ニテ拝借仕、当家三代目小出権右衛門多善謹テ写之者也」云々という奥書。
 どうやら足助の小出権右衛門という人物、屋号を油屋という足助の豪農文人だろうと思われる。そこで足助の地域情報を発信しているサイトを検索して、情報提供をお願いしてみた。
 サイトを運営されているKeyさんは歴史にお詳しくないという事で、ありがたいことに御知友にお聞きいただいた。その結果、大庄屋小出氏の分家であることが確認できたのである。

 それにしても、この手の実録本は各地に色々な形で伝わり、そして散佚している訳だ。義士伝がどのように広まっていったかを知る貴重な手がかりなのに、残念なことである。本書のように古本屋に流れていったものは、原型のまま残っているだけ運がよいと言えよう。ましてや元の持ち主が判明するなどは僥倖。大事にしたいものである。

 なお、足助での情報確認の顛末はKeyさんのウェブログ日記にあるので御参照ください。
http://asuke.air-nifty.com/blog/2004/06/post_3.html
 Keyさんはじめ足助の皆様の御厚意に、あらためて感謝の意を表したいと思います。その御厚意に報いるため(?)私はこれを足助本『赤城義臣伝』と呼びたいと思います。

2004/05/17 Mon  復刊要望『五次元世界のぼうけん』

 書籍の復刊運動をしている「復刊ドットコム」のことは、皆様御存知かと思います。児童SFの古典マデレイン・レングルの『五次元世界のぼうけん』も候補になっていたのですが、このたび50票になりました。100票集めると復刊交渉に入るという事で、今までは遠い話でしたが、ちょっと可能性が出てきたので、サイトの趣旨とは関係ないのですが、
御協力いただける方にはお願いしたいと思います。
 投票はhttp://www.fukkan.com/vote.php3?no=3923から。



2004/05/16 Sun  新選組!展

 江戸博の「新選組」展に行ってきました。別に特に新選組ファンという訳ではありませんが、せっかくやっているので・・・。
 タイトル文字はNHK大河のロゴを使用しているので「!」が入るのですが、博物館の展覧会の名称としては入らない方が正しいらしい。
http://www.edo-tokyo-museum.or.jp/kikaku/page/200404.html

 それはさておき、休日ということもあってかなりの人手でした。前半部分はあまりゆっくり見る雰囲気ではありませんでしたが、まんなかへんからは少しゆとりがありました。さすがに思いがけないというほどのモノはありませんでしたが、「ああ、これが実物ね」というのはいくつか。けっこう小島資料館のものも出てました。小島氏が企画委員のひとりであることが大きいのでしょう。近いのでいっぺん行こうと思っているのですが、開館日が限定されているのでなかなか機会のない同館のものが見られたのはうれしかった。(もっとも、今は小島資料館がスカスカってことでしょうかね?)
 図録もまずまずの出来。江戸博では今月の23日までですが、6月5日〜7月19日に京都文化博物館でありますので、関西地区の方はそちらへどうぞ。


2004/05/09 Sun  『後鑑録』に見える乳母の自害

 うっかりしていましたが、内匠頭乳母の自害の説は『忠誠後鑑録』にも載っていました。これは武林母になっています。前に書いた「乳母の自害」で、自殺する乳母が間喜兵衛妻から武林唯七母に変更になるのは都の錦=宍戸円喜の都合だとしたのは勇み足かも知れません。『後鑑録』は『内侍所』の参考文献に挙げられていますから、『後鑑録』の記事によってより正しそうな方に改訂したとする方が実際には近いように思われます。
 いずれにしても、作品の年代特定などに役立つと思われるので、前の論考は注意書をつけて残しておくことにします。読者諸賢よろしく諒とせられたい。

2004/05/05 Wed  更新情報

 前日に引き続いての更新です。まあ、1本にしてもよさそうではありましたが・・・。
 「多門筆記偽書弁」にはじまった宍戸円喜(都の錦)問題にいちおうの区切りをつけるつもりだったんですが、どうもまだ納まりはよくない感じがしています。もうちょっと踏み込もうか、いやいや、深みにはまらないうちに撤退しようか、悩ましいところ。とりあえずUPしました。


2004/05/04 Tue  更新情報

 しばらくあいてしまいましたが、今までの続きみたいな更新です。
「宍戸円喜の述作姿勢」と題して、『介石記』との比較を試みました。今回のポイントは、円喜が『介石記』以外の材料を持っていないらしいという点です。直接証拠がないので断言はできないのですが・・・。


2004/05/01 Sat  ちょうちょうの謎

 しばしば紹介しているバリトン歌手の田辺とおるですが、5月3日の夜、NHK総合に出演します。
 番組は「今夜は童謡」というもの。わが国最初の「唱歌」ちょうちょう・・・ルーツはスペイン民謡か、ドイツ歌曲なのか、あるいは日本のわらべうたなのか?云々。
 お時間があったら御覧下さい。

2004/04/24 Sat  谷春雄・大空智明『ふるさとが語る土方歳三』

 日野の新選組フェスタに行った時に入手した1冊がこれ。
 郷土史研究者の谷氏(大正15年生)に、後輩の大空氏(昭和19年生)が聞くという形式。児玉幸多氏(93歳ですって!)が監修している。史料に基づいた確かな土方像が描かれているという点で優れた書物であるが、それ以上に、序章に示された谷春雄という人物の足跡が興味深い。郷土史が、新選組研究が、こういう人たちの地道な活動に支えられていたのだと、改めて感心させられる。
 日野郷土史研究会から出版されているこの本、定価1500円とお手頃なのだが、残念ながら通常の書籍販売のルートには乗っていないらしい。いちおうこんなサイトを紹介しておきます。

2004/04/18 Sun  井上源三郎資料館

 ずいぶん更新していないので、忘れられないように(苦笑)ちょっとだけ。
 近くに行く用事があったので、「新選組フェスタin日野」に行ってみました。日野駅からいちばん近いのが井上源三郎資料館。といっても、子孫(厳密には兄の子孫)の方の自宅に作られた小規模なもの。NHK大河ドラマにあわせて新設されたようです。展示品は少ないものの、御当主自ら解説するという暖かい雰囲気でした。
 「井上松五郎源三郎兄弟の事跡」「文久三年御上洛御供旅記録」といった貴重な文献も手に入れることができました。一度行ってみる価値はあると思います。

2004/03/06 Sat  更新情報

 前回に引き続き、宍戸円喜=都の錦に関連した話題での更新です。「乳母の自害」と題して、武林唯七の母が自害したという伝説の生まれてくる過程を検証しました。
 前回のは、今回のような考察を進めるための基礎作業だと認識しています。もちろん今回ので完結でもなく、少なくともあと2回分くらいはやらないといけない“計画”があります。見通しはあるつもりですが、どういうことになりますか、やってみないとわかりません。

2004/02/29 Sun  更新情報

 いちおう2月のうちに更新しました。前にちょっと予告しておいたのですが、都の錦こと宍戸円喜の義士伝ものについてのノートです。ここまでのところは、国文学の成果を整理しただけで、あまりオリジナリティはありません。ただし、次に進めるために必要な作業だと思っております。国文に詳しい方、誤りなど指摘していただければ幸甚です。
 

2004/02/28 Sat  訃報 網野善彦氏

 網野善彦氏がなくなりました。
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040228-00000054-mai-peo
 謦咳に接したことはありませんが、我々が学生のころに『無縁・公界・楽』が出て、“社会史”ブームを巻き起こしておられました。日本中世史研究、というよりはわが国の歴史学に、ひとつの時代を作った方です。76歳と、まだまだ御活躍が期待できる年齢でしたのに、残念なことです。
 合掌。


2004/02/15 Sun  陶房のぎ展 @国立ゆりの木

おなじみ陶房のぎ展が火曜日から国立のギャラリーゆりの木であります。
詳しくはこちらをどうぞ。
おひまがありましたらお越し下さい。

2004/02/04 Wed  都の錦追跡中 〜言い訳がわりに〜

 また更新が滞っていますので、言い訳がわりに近況報告。
 前回書いたとおり『赤穂精義内侍所』について国文学の成果があることを知ったので、現在山本氏の論文を手がかりにして資料収集中です。大分たまってきました。
 まず「都の錦獄中獄外」を収める野間光辰『近世作家伝攷』。この本には前に「元禄若草物語」で利用した「原惣右衛門手簡について」も収められていました。
 それから川元ひとみ「『当世敵討武道穐寝覚』成立考」を載せた『近世文芸』62。同論文により知った同氏の「〔翻刻〕『当世敵討武道穐寝覚』」が載っている『芸能文化史』12。また『江戸時代文学誌』1の若木太一「都の錦『播磨椙原』をめぐって」でその翻刻も入手できました。赤堀政宣『内侍所仁の巻』も無事GET。元から持っていた『赤穂精義三考』とあわせ、どうやら利用可能なものは揃ったようです。あとはこちらの腕次第・・・って、そこが最大の問題なんですが・・・。
 それにしても「日本の古本屋」は便利なサイトですね。ずいぶんお世話になってしまいました。

2004/01/21 Wed  山本卓氏の「『赤穂精義内侍所』攷」

 国文学の方面には疎いのだが、たまたまWEB検索に引っ掛かってきたのが山本卓氏の論文「『赤穂精義内侍所』攷」である。ぺりかん社の出している雑誌『江戸文学』の29号「実録」特集(2003年11月発行)所収である。
 拙稿「多門筆記偽書弁」で『赤穂精義内侍所』に言及した。山本氏の論文を読んでからだったら、もう少し違う書き方ができたなと残念である。というより、拙稿ではすっかり無知を露呈している訳で、恐らく原型である四巻本『内侍所』も知らないまま、その成立を論じているなど、恥ずかしい限りである。
 とはいえ、私の論点が全く見当はずれという訳ではない。氏が扱っている場面は、まさに浅野切腹の箇所なのだが、片岡との暇乞いのくだりや、介錯に自分の刀を使ってほしいといったくだりなどが、後からの増補であることが確認されている。つまり、こうしたものがセットになっているのは増補版の『赤穂精義』だということであり、『多門筆記』がそこから作られた可能性はますます高まったと思うのである。
 とはいえ、結論は急ぐまい。まずはこの論文を足がかりに、先行する文献をきちんと勉強しなければならない。併せて氏の主題である『太平記』との関係も考えていく必要があるだろう。取りあえず同好の士にこの論文の所在をお知らせするため斯くの如し。

2004/01/12 Mon  松浦玲『新選組』

 大河ドラマの力はすごい、というべきだろうか。背に腹はかえられなくなった、というべきだろうか。岩波新書までが『新選組』を出す御時世になった。とは言え、さすがに他書とは一線を画す優れた出来ばえである。
 何と言っても、幕末政治史の中に位置づける、という視点がしっかりしている。もちろん従来の著作物がそうした点を無視していた訳ではないのだが、新選組ファンの立場から幕末を捉えるのと、幕末政治史研究の立場から新選組を捉えるのとでは、基本的な指向が異なっている。
 そのことが、史料の選択を特色あるものとしている。「特に知りたいと思うところに限って・・・既刊のものには収録されていない」(あとがき)というのは、要するに著者の関心が他の著述者とずれていることの証左に他ならない。
 こういう点で、他書にない視点で新しい位置づけを示した本書は、今後の新選組、いや幕末史研究に逸すべからざる一冊になるだろう。
 ただ、内容とは関係ないのだが、ファンによる研究とそれに触発された出版に対する敬意は、もう少し前面に出してもよかったのではないかと思う。もちろん「本当に敬服し感心している」(あとがき)と書いてはおられるのだが、ファン批判にはじまったという印象は拭えない。学問としての歴史がほとんど無視してきた事柄についての史料発掘と細密な考証には、いくら感謝しても感謝しきれないはずではないか。こんなところから反発を買っては、折角の本書の価値に疵がつこうというものである。

2004/01/06 Tue  更新情報

 今年2回目の更新、「岡野包住の死亡時期について」です。畏友(っても怒らないよね?)赤穂義士史料館さんに掲載されたものに刺激されての論考です。まだ確定という訳にはいきませんので、ご批判賜れば幸甚です。
 余談ながら、「恋の絵図面取り」も『赤穂精義参考内侍所』が出所らしい。講談の種本として貴重なようですから、同書の成立事情は興味深い。これについても情報がいただければ、と思っています。

2004/01/04 Sun  更新情報

 おめでたモードは三ヶ日で終了。今年最初の更新です。
 と、言ってもネタは昨年末の副産物。「浅野長矩の遺言は伝えられたか」という表題で、結論と言うほどのことはなく、疑問の提示にとどまります。
 そうそう、前の「多門筆記偽書弁」大事なことを落としていたので、大晦日に加筆しました。あわせて御覧おきください。

2004/01/01 Thu  謹賀新年

あけましておめでとうございます。

 壁紙を正月ヴァージョンにしてみました。
 更新も間遠な弱小サイトで御座いますが、おかげさまで昨年は3万アクセスも達成できました。これも皆々様の一方ならぬお引き立ての賜物と、篤く御礼申し上げます。
 本年もよろしくお願い致します。