れでぃあ 赤穂事件研究書目

 赤穂事件の研究に参考となる文献(単行本)のリストです。一度にはできないので、順次更新していきます。著者名(50音順)で配列してあります。

最終更新日2000-08-04(現在20件)

著者名 書名
コメントがはいります。評価は星で示しています。満点は5つですが、別格です。研究になくてはならない…4つ。必読文献…3つ。一読の価値あり…2つ。コレクションには入れてもよい…1つ。関係者の方、怒っちゃいけません。独断と偏見によるものと御理解いただき、気にしないでください。
★★★★★ ←こんな感じ
発行年(原則として奥付の表記に従います)、出版社

赤穂義士事典刊行会 赤穂義士事典
内海定治郎氏の遺稿を整理して刊行された事典。内海氏の蘊蓄と後継者たちの苦辛には頭が下がる思いである。なお、佐佐木杜太郎氏を中心に増訂版も作られた。
★★★★
昭和47、赤穂義士事典刊行会。増訂版、昭和58、新人物往来社
飯尾精 実録忠臣蔵
赤穂大石神社宮司の飯尾氏は、現在では義士研究の第一人者である。著書は数多いが、事件の全体像を描いて今日の研究水準を示すものとしては、この書を挙げておくべきであろう。
★★★★
1996、神戸新聞総合出版センター
石井紫郎 近世武家思想
史料集としても有益である。日本国制史の研究者である石井氏が赤穂事件に着目したことは、画期的なことであった。解説の論文‘近世の国制における「武家」と「武士」’が紙数の関係もあって中途半端な終わり方をしていることは、いかにも残念である。
★★★★
1974、岩波書店、日本思想体系27
伊東成郎 忠臣蔵101の謎
表題にあるとおり、101のテーマを設定して書かれた考証読み物。あまり目に触れることのない古い雑誌論文などをよく掘り起こしており、参考となる点が少なくない。
★★★
1998、新人物往来社
稲垣史生 考証 元禄赤穂事件
かつてテレビドラマ時代考証の第一人者だった稲垣氏の著書である。よくまとまってはいるものの、独特の考証成果は見られない。にも関わらずここに載せるのは、本書の第一部がもと学研の少年読み物「物語日本史」中の一編で、私が最初に読んだ赤穂事件の本だったという個人的な理由による。
★★
1998、PHP研究所
内海定治郎 真説赤穂義士録
赤穂事件研究の最高峰。現時点にいたるも、(部分的にはともかく)全体としてこれをしのぐものはないと言って過言でない。忠臣蔵ブームの時に、孫引きだけでできてるようなつまらない本ではなく、こういうものを復刻する出版社が出てほしいものである。
★★★★★
昭和8、士道教育研究会
片山伯仙 赤穂義士の手紙
片山氏は赤穂花岳寺の住職だった。表題の通り、書状を中心に関連史料を集めたものである。本書を研究書に数えるのは如何かという気がしないでもないが、編集に研究姿勢がはっきりあらわれているので、単なる史料集と言うよりも研究書に近い性格をもつと考え(石井紫郎氏の『近世武家思想』も入れたことだし…)挙げておく。実際問題として、読みやすく使いやすい。大変に便利である。
★★★★
昭和45、「赤穂義士の手紙」刊行会
熊田葦城 日本史蹟赤穂義士
『元禄快挙録』などと同じく、明治末のジャーナリズムの所産。日本各地から集められた材料や写真には大きな価値がある。
★★★
明治43、帝国講学会
斎藤茂 赤穂義士実纂
グラフィックデザインを本職とする斎藤氏が、長年にわたって集めた貴重な資料を惜しみなく図版として使った快著。考証も堅実で、「学者」の肩書がないからといって軽視してはならないということの見本である。自費出版なので入手しづらいのが難点。
と、書いていたら小泉義士堂(泉岳寺前土産店)で入手可能とのこと。くりんくりんくにリンク貼ってます。
★★★★★
昭和50、赤穂義士実纂頒布会
佐佐木杜太郎 元禄事件始末記
事件の経緯を一冊にまとめたものとしては、恐らく最高の出来である。大石をはじめとする人々をいきいきと描写しているという点で、下手な小説など寄せ付けない力をもっている。このスタイルからはやむを得ないことであるが、個別の考証については物足りない。その後明らかにされた新事実を取り入れた飯尾氏などの著書も出ているので、利用価値は落ちる。それでも、個人的な思い入れのせいかも知れないが、名著に数えたいと思う。
★★★
昭和50、新人物往来社
佐佐木杜太郎 実証赤穂義士
義士研究家として有名な佐佐木氏の著書。「吉良邸討ち入り実況」で考証家としての腕を見せているが、最も利用価値の高いのが銘々伝の決定版「四十七義士の人間像」である。この部分はもともと『歴史読本』昭和46年12月号に掲載されたものを補訂したのだが、同社の『別冊歴史読本・元禄忠臣蔵』(1998年)にも転載されている。出版社の姿勢としていかがなものかという面がないでもないが、それだけ信頼性が高いことを示している。
★★★
昭和47、新人物往来社
田原嗣郎 赤穂四十六士論
石井紫郎氏・尾藤正英氏の著書とともに、1970年代中葉を代表する学問的赤穂事件研究。主たる関心は事件後の評価に向けられているが、事件そのものについても『堀部武庸筆記』の分析によって、水準を示している。
★★★
昭和53、吉川弘文館
中島康夫 大石内蔵助の生涯
中央義士会理事の中島氏の著した大石の伝記。平易な文章の中にも、最新の考証結果が盛り込まれている。
★★★
1998、三五館
野口武彦 忠臣蔵
野口氏は国文学の研究者で、近世思想に関する刺激的な論考が多数ある。本書もその一つであるが、文学・思想よりも史実そのものを明らかにする目的で著されている。年号が平成に変わって以降に限れば、最高水準の研究書と言ってよいだろう。
★★★★
1994、ちくま新書
尾藤正英 元禄時代
1人1冊を担当した通史中の1巻。「赤穂義士」に1章を割いている。書物の性質上、実証面では物足りないが、理論的な部分では他の追随を許さない。私もいろいろと考えてみるのだが、この本を読み返すと既に指摘されていることを言い直しただけのように思われ、釈迦の掌から逃れられない孫悟空の気分を味わっている。
★★★★
1975、小学館『日本の歴史』19
平尾孤城・都築久義 滅びゆくものの美
都築氏の「ふるさとの吉良上野介」が付載されているが、まず平尾氏の著書として見るべきであろう。平尾氏の著書は数あるが、古書店などでもあまりお目にかかれない。私が持っているのも、本書以外は山鹿素行に力点をおいたものである。この本は軽い読み物のタッチになっているが、考証は堅実で、しかも大体の場合典拠を示す良心的な執筆態度である。平尾氏が可能性として指摘したものが、後になって根拠を吟味せずに「定説」化してしまったらしいケースも見られるので、研究を志すほどの人は是非あたっておいてほしいものである。
★★★★
昭和49、三交社
福本日南 元禄快挙録
桃中軒雲右衛門の浪曲とともに、「忠臣蔵」の時代から「義士伝」の時代への扉を開いた歴史的名著。その後の研究で否定された部分もあるが、この書の価値をいささかも減ずるものではない。自ら改訂した『元禄快挙真相録』もある。
★★★★
明治42、啓成社。現在は岩波文庫に収録(3冊)
松島栄一 忠臣蔵
事件そのものよりは、演劇との関係の方に力点のおかれたもの。考証面でとるべきものは少ないが、近世から近代にかけての多くの書物を紹介しており、研究史の整理に有効である。
★★★
1964、岩波新書
八木哲浩 忠臣蔵 第1巻
赤穂市史編纂室の大事業『忠臣蔵』全7巻の第1巻、史実本文編。経済史を本領とする八木氏だが、先入観の少ないことが独自の見解を打ち出すのに有効に機能した。現時点でのひとつの水準を示すものと言えよう。
★★★★
平成1、赤穂市
渡辺世祐 正史赤穂義士
日本中世史の権威・渡辺世祐氏は、東大史料編纂所にある赤穂事件関係史料を活用し、研究を深化させた。中央義士会の会誌『新民』に昭和33〜37年に掲載された遺稿をまとめたこの書は、史料に基づく義士研究のひとつの到達点を示している。
★★★★
昭和46、光和堂(井筒調策校訂)