韻律
1.脚
まず、詩について述べてみたいと思う。日本で詩というとなんだか特殊な文学界の一部という気がする。ヨーロッパでも、そうかもしれない。しかしヨーロッパでの古典言語であるギリシア語とラテン語は、ある種の詩である古典を最古の言語的資料として持っているのである。
ギリシア語であれば、ホメロスの『イリアス』、ラテン語であれば、ウェルギリウスの『アエネイス』が、韻律を持つ古典文学作品として大変有名である。
韻律とは、ある種の音声的パターンの繰り返しの構造である。繰り返される構造は、脚 (詩脚、韻脚、フット、foot)という。脚はいくつかの音節のまとまりである。音節はいくつ集まってまとまることで脚を作るのか、さらに、その脚の中に強勢もしくは長さはどの場所に持つのかという2点で分類できる。このようにグループ化された音節群としての脚には、いくつかのパターンがある。以下にそのパターンをいくつか列挙しよう。
まず音節2つで作られる脚は、以下のように分類できる。
1.短長もしくは弱強 (iamb/iambus)
ラテン語 amō
英語 before
ドイツ語 gefühl
2.長短もしくは強弱 (trochee)
ラテン語 rure「田舎で」
英語 hero
ドイツ語 Garten
3.長長もしくは強強 (spondee)
ラテン語 vīcī「征服した」
次に音節3つで作られる脚には、以下のような代表例がある。
4.長短短もしくは強弱弱 (dactyl)
ラテン語 lītora「海岸」
5.短短長もしくは弱弱強 (anapaest)
ラテン語 aliō「よそへ」
2.行
脚は、一定数集まることで、行 (line)を形成する。行は、詩または韻文が文字に書かれた場合、最もわかりやすい特徴である。すなわち脚が集まって行が完成すると次の行が形成され、結果的に改行がなされるのである。例を挙げよう。
参考文献
言語学大辞典 術語編
英語の構造からみる英詩のすがた 岡崎正男
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