イー・アル・カンフーの秘密
 イー・アル・カンフーは1985年にリリースされたKONAMIの格闘ゲームです。かなり売れたソフトで、ケースが「旧ケース」「新ケース」の2種類、ラベルが「アニメ調」「カシオOEM版」「リアル調」の3種類の組み合わせで6種類が存在します。「旧ケース」x「カシオOEM版」と「リアル調」の実物は入手できず、外見の写真だけ入手できました。(Thanks to Mr.Manuel!)

旧ケース/アニメ調
 旧ケース/アニメ調

旧ケース/カシオOEM版
 旧ケース/カシオOEM版

旧ケース/リアル調
 旧ケース/リアル調

新ケース/アニメ調
 新ケース/アニメ調

新ケース/カシオOEM版
 新ケース/カシオOEM版

新ケース/リアル調
 新ケース/リアル調

 ゲームの中身については基本的には同じなのですが、バージョン違いがあるという噂があります。見分け方としては。デモがちょっと違うのと、2面のタオの吐く炎を正拳突きで消せるかどうかのようです。


 タイトル画面の後に表示されるデモです。左が旧ROM、右が新ROMです。


 2面のタオの炎の検証です。左が旧ROM、右が新ROMです。

 実際にケースを開けてみるとこんな感じです。新ケース/リアル調は4個分解してみました。「旧ケース」x「カシオOEM版」と「リアル調」の基板写真はありません。

旧ケース/アニメ調
 旧ケース/アニメ調の基板

新ケース/アニメ調
 新ケース/アニメ調の基板

新ケース/カシオOEM版
 新ケース/カシオOEM版の基板

新ケース/リアル調1
 新ケース/リアル調1の基板

新ケース/リアル調2
 新ケース/リアル調2の基板

新ケース/リアル調3
 新ケース/リアル調3の基板

新ケース/リアル調4
 新ケース/リアル調4の基板

 旧ケース/アニメ調の基板ではEEPROMを使っています。新ケース/リアル調の3, 4では基板の色が変わっています。ROM番号も大きく変わっているように見えます。ROMの内容を吸い出してみたところ、やはり新ケース/リアル調3, 4のROMの内容だけ変わっていました。遊んでみると、やはりリアル調3, 4だけ2面のタオの吐く炎を正拳突きで消せるようになっていました。後は何が違うのか・・・アクションゲームが苦手なのでこれ以上先へは進めまず、分かりませんでした。

 表にまとめるとするとこんな感じです。
Type 基板番号 ROM番号 ROM内容
旧ケース/アニメ調 430023B98A EEPROM RC725
新ケース/アニメ調 350098A 050207 / YM2211-22845 / 52 11 82 C
新ケース/カシオOEM版 350098A 050207 / YM2211-22845 / 53 84 C
新ケース/リアル調1 350098B 050207 / YM2211-22845 / 53 03 84 C
新ケース/リアル調2 350098B 050207 / YM2211-22845 / 53 27 84 C
新ケース/リアル調3 350155A 050441 / YM2211-22856 / 56 10 84 C
新ケース/リアル調4 350155A 050441 / YM2211-22856 / 56 10 85 C

 プログラムが入っているのはROMですので、ROMに書かれている番号等で見分けるべきなのですが、表記の差が結構あるので、どれがポイントか分かりません。いずれにせよ、お店等で購入するときにケースを開けてROMを調べることはできません。新しいROMが必ず新しい基板に載っているかは分かりませんが、基板の色で見分けるしかなさそうです。下側から見ると、基板の断面はどちらも茶色ですが、基板表面の色で見分けることができます。

新ケース/リアル調旧基板
 新ケース/リアル調の旧基板

新ケース/リアル調新基板
 新ケース/リアル調の新基板

 ちなみに、「コナミゲームコレクション Vol.1」に収録されている「イー・アル・カンフー」では、正拳突きでタオの吐く炎を消せるようです。プレイステーションの「コナミアンティークス MSXコレクション」に収録されている「イー・アル・カンフー」でも消せるので、以降にリリースされたものはすべて消せるのだと思います(未確認ですが)。

 ファミコン版でもバージョン違いがあるという噂があり、検証しているサイトがありました。やはり基板の色が違うとROMの中身が違うようでした。ゲームとして何が違うのかまでの情報はありませんでした。ひょっとしたら同じような修正が入っているのかと、ちょっとだけ調べてみました。

ファミコン版x2
 ファミコン版

 ファミコン版も基板の色で見分けられるという情報があったので入手は簡単でした。左が旧バージョン、右が新バージョンのようです。ROMを取り外し、ROMライターでROMイメージを吸い出すつもりでしたが、新しいバージョンではベアチップ実装でした。ベアチップ実装だとROMライターでROMイメージを吸い出せないので・・・手持ちのミニファミコンに収録されているROMイメージと比較してみます。

ミニファミコン
 ミニファミコン

 ミニファミコンに収録されているROMイメージの吸い出し方法についてはネットで情報があふれているので省略します。吸い出したデータはこんな感じです。

旧イメージ
 旧バージョンのROMイメージ

新イメージ
 新バージョンのROMイメージ

 新バージョンのROMイメージはエミュレータ用の?ヘッダーが16bytes追加されています。それを除いて最初の部分を比較すると・・・。
・旧バージョン:RC8021.2 850325
・新バージョン:RC802 1.4 850430
 最初のRC802はケース等に書かれているゲームの番号です。次の1.2とか1.4がゲームのバージョン、その次の850325と850430はプログラムが作られた日付(1985年3月25日と1985年4月30日)でしょうか。
 とりあえず2種類のバージョンがあることは確認できました。手順は省略しますが、旧バージョンのROMイメージをミニファミコンに入れ、とりあえず2面のタオの吐く炎を正拳突きで消せるかだけ確認してみました。結果としてはどちらも消せましたので、MSXと同じような修正をした訳ではなさそうです。

 余談ですが、週刊アスキーの記事によると1, 2, 3, 4を中国語で「イー・アル・サン・スー」と発音するのをもじって「イー・アル・カンフー」と名付けたとか。ちなみに「イー・アル・カンフー2」は「イーガー皇帝の逆襲」というタイトルで、こちらの由来の方は有名だと思います。あの「餃子の王将」で餃子を一個注文したとき、店員さんが厨房に注文を知らせる声が「イーガーコーテー」と聞こえるのが由来だとか。漢字で書くと、おそらく「一個鍋貼」です。「一個」は良いとして「鍋貼」は「焼き餃子」のことです。中国で餃子というと一般的には水餃子のことで、焼き餃子は「鍋貼」と言うようです。何故、日本発祥の「餃子の王将」で、中国語の発音で注文を連絡するのかは謎ですが・・・。
 さらに余談ですが、1980年に公開された「スター・ウォーズ/帝国の逆襲」があまりにも有名だったためか、「イーガー帝国の逆襲」と間違えて覚えた人がいたとかいないとか・・・。

 イー・アル・カンフーのバージョン違いの情報を下さったtyr105さん、Manuelさんに感謝します。