アミラルに入った頃の仲間内の雰囲気は最悪だった。 皆、ロセンからの
強行軍に疲れ果て、何も言わない。 リベルダムからの細く曲がりくねった
道は湿気が多く、ともすれば小さな虫が煩くまわりを飛び交った。
たまには巨大化したモンスターにでくわす事もあったが、皆驚きもせず、
ある者は弓を、ある者は剣を構え、次々薙ぎ払った。
そこら辺はやはりベテランの冒険者たちが集うパーティではあったが、なまじ
力があるだけに皆どこか互いに距離を置いていて、あえてその事を隠そうとも
しなかった。
それでもこの港町へ着くと、セルはほっと安心の溜め息をついた。
あとは船に乗り込むだけだ。 エルズに着いてもまだ神殿への長い道を
行かなくてはならないが、とにかく少し休息できる。
レルラもセラも、そしてこの旅への同行を依頼したオイフェですらも本当は
疲れ果てている事を、セルはよく知っていた。
「今は昼過ぎくらい?」誰も答えなかったがセルは努めて明るい調子で訊いた。
「いつもエルズ行きは朝と夕方だね。 一旦解散しようか」
「そんな必要はない」
セルの言葉に一旦頷きかけたオイフェがすかさず異を唱える。
「すぐ船長に掛け合い、エルズへと向ってもらおう。 急いでいるのだ」
「冗談じゃないよ」
呆れて首を振り、ぼやくレルラの表情にはいつもの余裕が抜け落ちている。
「君は何でもネメア様の為、って言えば通ると思ってるんだね。 真剣なのは
認めるけど、僕はとてもついて行けない」
「悪いが、俺もだ」セラも口を挟んだ。 彼の分身でもある妖刀は手入れをする
暇さえなく、眉間に刻まれた深い皺はその疲労の度を物語っていた。
「お前の指図に従い、奔走するなど趣味ではないからな。 どうしてもと
言うなら、勝手に船でも何でも出せばいい。 別に止めはせん」
「ね、ねえそこまで言わんでも一一」取りなそうとするセルを遮り、オイフェは
他の二人を睨みつけた。
「この位で音をあげるなんて、大陸一の冒険者といっても底が知れるわね。
……いいわ、助けなんていらない。 私一人でも行かせてもらう」
「好きにしろ」言うなりセラは踵を返した。
「僕は暫く酒場にいるよ」レルラは少し考えてから、続けて言った。
「悪いね、セル。 でも僕は命令だとか依頼だからとかで、意に反する事を
強制され続けるのはいやなんだ。 確かに仕事を決めるのは君だけど、君の
仲間でいる事もまた僕自らの意志でしている事だしね」
言い終わると彼も、既に歩き出しているセラの後を追っていった。
「セラ、レルラまで……」呆気に取られるセルの横で、オイフェは厳しい表情の
まま身じろぎもせず立っている。
「わかってたわ、あの二人が反対する事なんて」 しかしそこには先程の強引な
様子とは微妙に異なり、妙に意固地な調子が出ているのにセルは気付いた。
「いくら腕が立っても、多少目先が利いても、所詮一介の冒険者だもの。
今ネメア様を襲おうとしている闇の恐ろしさなど、想像もつかない。
……いいのよ、あなただって。 セル、あなたも何処へでも行けばいい」
「んー? ああ、まあね」急に自分に話が向いて困ったか、セルは曖昧に笑った。
「まあ、とりあえず船着き場でも行っとくか」
ロセンやエンシャント程の都市ではないが、アミラルも中々賑わっている。
ましてディンガル軍によって商業都市リベルダムが蹂躙されたとなっては、
バイアシオン南部の主な海路は殆ど全てこの港町を経由する様になっていた。
そんな事情もあって、船着き場には大小様々な船が停泊し、積み上げられた
荷は屈強な腕により忽ち何処かへと運ばれてゆく。
エルズへ向う船も一隻きりではなかった筈だが、いつもの乗船員はセルの話に
頑として首を縦には振らなかった。
「他のお客だって乗るんだからね、特別扱いはできないな」
「そんな事情はどうでもいい」オイフェの表情は既に気色ばんでいる。
「一刻も早くエルズへ行かなくてはならないのだ。 船を出してもらおう」
「おいおい」船員は呆れて言った。 「他の客はどうするんだ」
「船は明日も出るのだろう。 それに乗せればいい」
「そんな馬鹿な話があるか」平然と言ってのけるオイフェに船員の顔が引きつる。
「馬鹿ではない。 この用件は世界を変える程重大なもの、これより先を争う
理由など他にある筈もないのだ。 むしろこうした状況に関る事のできた事を一一」
「オイフェ」頭が痛くなるのを堪えながらセルは口を挟んだ。
「私はまだ一一」しかし自分をみているセルの静かな目にぶつかると、オイフェも
それ以上言うのをやめた。
「……ん」セルは軽く頷いてみせ、それから不意に微笑した。
にやりという感じの、何か悪戯でも企むような表情。 オイフェは驚いた。
「ね、待ってて」
セルはくるりと背を向け、船員に小声で二言三言話し掛けた。 険しかった
船員の様子が忽ち軟化してくる。
オイフェは黙ったまま、セルをみていた。 喋らなくていいとわかった途端、
背中にどっと疲れがたまったように感じられた。
レルラは追い付いてきてからも何もいわず、ただ黙々と隣を歩き続ける。
冒険者は町中で群れない、とはセラの持論だったものの、何を考えているか
一向にわからない相手に、セラは内心苛ついていた。
通りが大きく左へと曲る手前に、いつも立ち寄る酒場がある。 セラは
そこへ行こうとして、ふと足を止めた。 表通りに面し冒険者ギルドも
道具屋などにまじって立ち並んでいる。
「おい、レルラ」
吟遊詩人はまるで聞こえぬ様歩いてゆく。
「レルラ!」
「……何?」
振り返るレルラは一癖ある明るい表情を浮かべセラを見返す。
「俺は」
ギルドへ行く、と言おうとしてセラは急に渋面を作った。
どうして、どうして俺がこいつにそんな事を断らなくてはならない。
「……ちょっと、他に用もある。 じゃあな」
「そう、僕はそれじゃ酒場へ行かせてもらうよ」
相手の内心など知らぬ気にレルラは軽く答えると、さっさと歩きだした。
「ふう……」
セラはほっと息を吐き、安っぽい木の扉を押し開いた。
ギルドは閑散としている。 壁に張り出された依頼を前に、唸りながら
検討している者もいるにはいるが、時が過ぎてもさっぱり決めようとはしない。
駆け出しの冒険者め。 セラは考えた。 この辺で行けるとすると精々
近隣のエルフの住む森あたりが限界か。 後は入る者を皆惑わす迷宮、
奥の洞窟には用途不明の祭壇がある邪竜の断層。 いずれも一筋縄で行ける
ような場所ではない。
(いや、そういう問題ではない)依頼の詳細をみようとして、彼は躊躇った。
一体、どうするつもりなんだ、俺は。 ギルドの仕事を……受けるのか。
半日で終わる仕事などある訳もなく、それこそエルズへの配達とか
いうのでない限り、セル達と行動を別にする事になる。 ミイスからはじまった
旅も一段落した今、一緒にいる理由も特になかったし、実際あの研究所を
出た後、宿屋でセルは「好きにすりゃいい」とあっさり答えた。
「また何かやりたい事があるならやればいいし、止めはしない。
尤も、付き合う気もないが」
「それは助かる。 子守りにもいい加減飽きた所だ」
「まあ、でも急いでいるんじゃないなら、一緒に居てよ」
セルは笑い、何気ないようにつけくわえた。
「……あてにしてるからさ」
その言葉が嬉しくないといえば嘘になる。 だが、何も考えずこのまま
仲間である事を選択するには、どこかしら迷いが残っているのも事実だった。
吟遊詩人にわがままエルフ、地の巫女にアカデミーの劣等生、様々な
人物を引き付けるといえば聞こえは良いが、内実はどれもこれも一癖ある、
気が向けばまた別の天地へふらふらと出ていってしまいそうな者ばかりだ。
あてにして、というのは別に社交辞令だけとも限らないだろう。 が、旅の
最初の頃とは違う、今のセルなら一人でもやっていける事を、ずっと側で
みていたセラはよくわかっていた。
一一そうだな、やはり今度は一一
木戸が小さく音を立てた。 風かと思いセラは特段注意も払わなかったが、
まもなく入ってきた人物は小さな靴音と共に彼の背後で立ち止まった。
「……今日はまた随分と邪竜の断層の依頼が多いねえ」
聞き慣れた声と、いつも前置きをはぶく癖。
「そうらしいな。 日付けは少し前まで遡ってるが」
セラは振り返らず答える。
昼間の酒場はどことなく落ち着かない。 夜の賑やかさもなく、ただ
気だるく、干涸びた退廃が漂っているがそれもどこかよそごとに思える。
いつもなら吟遊詩人になりたいリルビーや、旅の途中の船乗り達がいる筈
だったが、今は行くあてもないようなからっぽな顔をした者が数人、
暗い隅にぽつりぽつりと腰をおろしているだけだった。
レルラ=ロントンはカウンターの真ん中あたりに座った。
目の前の棚に置かれていたメニューは2冊とも消え失せている。
「悪いな、今出払っちまってね」
主人が奥から出てきて詫びた。
「ほら、急に遠くからお客さんが来たもんだからさ」
一体どこに、と聞きかけてレルラは、店の奥に更に狭い部屋が続いている事に
気付いた。
成る程、全く暇ってこともない訳か。
「遠くって、ロストールとかかい?」
「いいや、アキュリュースって言ってたよ。 途中でロストール寄って、
ノーブルに寄って……旅の商人ってのも大変だな。 おや、注文だ」
主人は隣へと走ってゆく。 レルラも立ち上がった。 すっかり等閑に
されていた楽器を取り出し、弦の張りを確かめる。
「遠くからのお客さんか。 ……1曲いかがですか、っと」
旅の最初の頃も、よくこうしてセラと依頼をみていた。
お互いまるで偶然そこに居合わせた顔をして、避ける理由もないのだから
ギルドで話していたっていいだろうと自分を納得させて。
そうじゃなきゃ、到底あの頃のセラとは話せなかった。 怖くて、何か
気にさわればすぐに怒られそうで。
(変だな、ずっとそんな事忘れてた)セルは不思議に思った。
一緒にいる内、おどおどするのも減り、新しい仲間も加わって、もう
ごく自然に話していたと思うのに。
今になって、何故かあの頃の感情が蘇る。
「何をしに来た」
セラの声には何の抑揚もない。
「い、いやその……ほら、まあどうでもいいんだけど、船をね、あの」
「何だ、本当にどうしたんだ?」
振り返りこちらをみるセラは、取って付けた様に吃驚した顔をしてみせる。
(嘘だ、あんた本当に驚いちゃいない)そう思う事には僅かな苦味を伴った。
(あんたがその為に心を動かすのはいつだってたった1人だ)
でもセルはそれを気付かない事にしていた。
一瞬、走らせた視線をすぐまたセラは壁に貼られた依頼へと戻す。 セルの
言葉が要領を得ないのはいつもの事だったが、思わず笑いかけたその表情を
悟られない為に、彼は注意深く顔を背けた。
一方、セルの顔は何を考えているか一目瞭然だ。 妙にぎごちなく、
逃げ腰でけれど必死にそれを隠そうとしている。
(何を怯えている)
「何故探しに来た」
セラは素っ気無く口を開いた。
「冒険者なら自分の為すべき事をしろと言っただろう」
「あ、そ、そう……そうだね」
「それとも」
自分の一言に一々びくりと反応する相手に、セラは段々楽しくなって来た。
「俺が……本当にどこかへ行くと思ったのか」
違う、とセルは言えなかった。 でも言いたかった。 いや本当の所それすら
確かなのか曖昧だった。
研究所で互いの旅の目的にも一応の幕が降りた。 一緒に居る理由は無くなり、
理由はなくとも一緒に居たいと言う確信もなく、一緒に居るために理由を探す事も
去る事をほのめかす相手を目にしては辛くなり、結局そちらへは目を向けぬ様に
してただ徒らに時を長引かせようとしていた。
今のセラの問いに否定の答えが用意されているのはわかっている。
でも、その先は?
答えようとして言葉が止まり、迷うセルの目に、ふとセラの横顔が映った。
……真剣な言葉と裏腹に、瞳は楽しそうに踊り、口元は笑いをこらえている。
忽ち動揺は納まり、セルはぐっと声を低く抑えながら言った。
「……なーに喜んでんだか、変な奴」
「うん?」意外そうな声に取り合わず、続ける。
「そんな心配する程ヒマじゃないから、私」
ヒマという言葉に少しだけ力を入れて、嫌味を強調してみる。
(言ってやった、言ってやった)
どこかへ行くなんて思ってないとか、思うがそれはとても寂しいとか、もっと
直接に「行っちゃやだ」とかその場の雰囲気で言わなくて本当によかった!
けれどいつもならすぐ無愛想な表情に変わり、皮肉で切り返してくるセラが、
今日はそれを聞いても穏やかに笑みを浮かべている。
(あれ……?)
はじめてセルの胸中に不安の念がよぎる。 確かに無口だけど、決して
こんなのじゃない。 静かで落ち着いていたりは決してしない。
でも、目の前にいるセラはそうとしか言い様がなく。
どうしてそんなに穏やかでいられる?
「出発は、夕方だったか」
静かに、何か考えこむ様子のままでセラが問いかける。
「あ、それね」答えるのに少し躊躇った。
「すぐにでも出発できる船に乗せて貰える事になったから、だから……」
「そうか。 なら早く行ってやれ」
何でもなく答えた筈だった。 少なくともセラは、その積りだった。
けれどその言葉を聞いて相手は、寂しいとも醒めているともとれる、
微妙な表情を浮かべた。 怒るにしろ笑うにしろ、いつもとても単純で
わかりやすかった筈が。
「おい」何となく気になり、セラは確認するように付け足した。
「別にパーティから抜けると言った訳じゃない。 ただ少し離れて
やりたい事があるだけだからな」
「わかった」
それを聞いても特に表情は変わらず、セルは頷いた。
「終わったら、アミラルに寄るよ」
「あ、ああ」
立ち去るセルの背中に、まだ声をかけたくなるのをセラはこらえた。
誤解したようではなかった、ただ淡々と会話をし、受け入れただけだが。
が、何故だろう、それが却って「わからない」と感じさせる。
考えていても埒があかず、セラはひとまずその疑念を心の奥に仕舞い、
眠そうに頬杖をついて座っているギルドの主人に話し掛けた。
「ちょっと聞きたいんだが」
主人は慌てて顔をあげる。
「この大量の依頼はどういう事だ? 邪竜の断層で何かあったのか? ……」
確かにもう一緒には居られないという事じゃない。 そんな事はわかってる。
でも、何故だろう、その言葉を素直には受け取れない自分がいる。
セラはいつになく優しかったのに。
(違う)セルはすぐに気がついた。 (優しいからだ)
だから、不安になる。 そんな所、今までみた事なんか、なかったから。
ギルドを出て、道沿いに歩くとすぐ先に酒場がみえる。 入ってゆくと、
奥の部屋でレルラは数人の旅人と談笑していたが、セルをみると顔を輝かせた。
「よかった、セル。 会えたらいいって思ってたんだよ」
「どうしたの? ……」
「それがね、」小さく笑い、レルラは手招きして陰の方へとセルを誘った。
「そこに居るのは大陸中を廻ってる商人達。 まだもうひとり後から来る
らしいんだけど、その人が知ってるらしいんだ。 例の事を」
「え、何を知ってるって」
「行き先だよ、行き先。 それもリベルダムの豪商アンティノの」
一瞬意味がわからない、という様にセルはレルラを見つめた。 やがて
その表情に驚愕の色が現れた……レルラは自分の言葉の効果に満足し、続けた。
「あの研究所で、いくら探しても禁断の聖杯はみつからなかった。
アーギルシャイアも、今更持っているわけもない。 だったら、やはり
アンティノしかいないんだ、聖杯を持って逃げたのは」
禁断の聖杯。 アンティノ、アンティノの研究所、アーギルシャイア、セラ。
色々なことが絡みあっている。 思い返すと叫び出したくなった。
でも、そうだ……まだ、終わってはいなかった。 きっと、……きっと、それは
セラも決着をつけたいと望むだろう事が。
「でも、でも……もうすぐエルズへと向う船が出る」
「僕は行けない。 セル、君とオイフェなら大丈夫だよ、自信もって。
君たちが風の神殿へ行っている間、僕はもう少し情報を集めてみる。
大陸一の冒険者の歌に、聖杯を探す旅を書き入れよう、ね?」
ふふっ、とセルはくすぐったそうに笑った。
「わかった」
奥の部屋を陣取っていた旅人達がレルラの名を呼んでいる。
「終わったら、アミラルに寄るよ」
「うん、待ってるからね」
港でじれったそうに待っていたオイフェは、セルをみると眉を吊り上げた。
「遅いわ、すぐにでも発つと言ったでしょう」
「ああ、ごめん」セルは笑った。
荷を積んでゆくボルダン達のかたわらで、釣れそうにもない釣り竿を、
延々垂らしている老人が座っている。 ヒトデの貼り付いた路面。 波とも
思えぬ弛緩したうねりを、たぷんたぷんと揺らせている茶緑の海は、遥か
向こうへと目を移す中で次第に薄い青へとその彩を変えてゆく。
「行こうか。 その端に泊ってる船だよね」
「行くって、でも……」オイフェは訝しげな表情を浮かべる。
「あ、あの二人なら置いて来たから。 大丈夫、帰りに拾うし」
まだ顔を曇らせるオイフェに、安心させるようにセルは言った。
「後少しだもん、たまには静かなのもいいでしょ。 オイフェが居るから
モンスターや海賊が来たって怖くないし。 大体あの二人がいると
煩くってねー、配達引き受けただけで延々ぶつぶつ言われるはで……」
「セル」
喋り続けるセルをたまらずオイフェは制止する。
「ねえ、やっぱり……」
「……やっぱり?」
オイフェは何か言いかけた、がセルに漂う緊張に気付くと言葉は止まった。
「……いいえ」重ねて言う。 「いいえ!」
「行きましょう、船が待っているわ」
船がアミラルを離れる際、セルは一度だけ振り返った。 港には、
いつも夕方に出るエルズ行きの船が、ぽつりと出発を待っていた。
その他誰の姿も、もうただの点にみえる。 もう一度その中に知った姿を
見分けようとして、しかしどうしようもないとわかるとセルはそれ以上
探すのをやめた。
重苦しい気分と場違いに、立続けにふわあと欠伸が出てくる。
疲労は正直だ。 ずっと前方を見つめ早く行けと仁王立ちのオイフェにもはや
畏敬の念を抱きながら、でも凡人はひと眠りだなとセルは船室へ降りていった。