たまに訪れては出会う姉の笑顔は、時と共に急速に何か力強さのようなものを
帯びてきていて、その内もっと自信に満ちてくるんだろう。
きっと今でもロイは逆らえないな。 しかしそんな思いはおくびにも出さず、
ただ、いくらかぎごちなくまだ離れているその人に声をかける。
「セラ……元気そうね」
こちらを振り向き応える調子は穏やかで、よく知っているゆるやかな笑みをたたえ
微風流れる廃墟にて精霊の嘆きに耳傾けていた。
「人間は、精霊の力を魔法の火種のように扱ってきたわ……ここにいると、
失われた彼らの悲鳴がまだ微かに聴こえてくるの」
少し前までは妖しい色に染められていた目は、今はいくらか哀しげに、深く
まっすぐに黙ったまま遠くを見ている。 しかしそれも、誰か近くにいると
気付いた途端に隠されてしまい、忽ち晴れやかで、楽しそうにくるりと踊る目に
とってかわった。
多分姉は幸せなのだ。 その物憂げな手が傍らに立つ男の頬に触れ、長い指が男の
淡い褐色の髪にまつわるのをみていると、セラはつくづくよかったと思った。
もう、魔人の後を追うことも、彼らが探していたものの痕跡をたどる必要も、
今は、ない。 姉の姿をした魔人が目前で嘲笑する様を何度も思い返し焦燥に
かられることも、乗っ取られ心を深い淵に沈ませたままの姉に必死に呼びかけた
日々も、すべて終わり、過ぎ去った話だ。
隣を歩いていた者がいつものように、よくわからない、まるで辻褄のあわない
言葉をいくつか呟いて、ふいに何処かへ去っていった後、取り残されたと感じるのを
認めず、しかし胸の内にうまれた泡のような虚しさを埋めることもできぬまま、
未だ同じ道行きを歩き続けている。
「どうしたの?」一一一一
もう一度長い髪が揺れ、笑っていた口元が何か言いたげに動いた所で目が醒めた。
木漏れ日は不意に眩しく刺さり、微睡みから引き摺り出そうと試みる。
少し眠っていたらしい。 すぐには動かずまずは周囲を確かめた。
「やっと起きた」
頭上からうんざりした声が降って来る。 顔を上げると背にしていた幹の間から
乾いた砂まで零れてきた。 同じ老木の反対側にもたれていた相手の、組んだ長い
足の異様な白さに思わず目をひかれる。
「もう同じ所にいつまでもいつまでも居るなんて退屈すぎるわ。 大体何よ、
すぐ出かけるのかと思ったらひと休み? そうやって……」
声の主は齧りかけのパンを急いで口に詰め込んだ。 水筒に手をのばすその姿に
一瞬誰であるかを思い出そうとして混乱する。 しかし今はそれ以上に重要な事が
あるのに気付き慌てて口を挟んだ。
「おい、何食ってる」
「相変わらず貧相な食生活ね。 まあ、アタクシは寛容だから許してあげるけど」
「それは俺のだ。 昨日買ったばかりだぞ、俺は」
まだ村についてから何も食べてないんだ、と訴えたいのをじっとこらえ、睨みつける。
情けないわね、と如何にもいいたげな視線がちらりと返り、微笑をまじえたかと思うと
すぐまたどこ吹く風と相手は空を見上げごくごくと音を立てて水を飲みはじめた。
そ、それも自分の……と言いたいがもう遅い。 言った所で返してもらえるとも
思えない。 どうしてこんな奴が一緒にいるんだろう。 今頃ひとり旅を満喫している
筈だったのに。 困った同行者に振り回される事もなく、歴史の大舞台とやらに
無理矢理一緒に乗せられる必要もない。 ありがとう運命神、間より侵食する虚無よ
こんにちは、黄昏の小道を歩いていたらぎらつく太陽の下熱砂の上に出たような
そんな気分だ。 ここを行かなければならないのか!
黙っていると不審に思ったのか、何考えてたの、と疑問が飛んでくる。
「ぼうっとしてるわね、さっきからずっとだけど」
その言葉に思わずむっとしたが、悔しいかな上手い切り返しが浮かばない。
大体何を考えてたんだっけ。 ああ、そうそう、何でこのわがままエルフがついて
来たのかと。
だがしかし、「何を考えていたのか」という問いに「何でお前が此処にいるのか」と
答えるのは文法として余り宜しくないだろう。 答えるなら「何故お前が此処にいるのか、
という事について考えていた」だが、本当にそんな事考えていたのだろうか。
いいや、特に疑問には感じなかった筈だ。 なる程確かにこんな高飛車エルフを
押し付けるなんて、運命神のバカ! とは思ったが、そこまでだ。
認めたくはないが、それもこの傲慢なエルフを一応それでも旅の仲間として……むう、
考えるだけで身体が痒くなってきた。
「別に何も考えてなどいない」
冷たく言い放ち、しかしすぐ後悔する。
ぼうっとしている、に何も考えていない、で返しては、それこそ自ら相手の言葉を
証明したようなものではないか。
ええい、とぐるぐる回り続ける思考を断ち切るように頭をふり、立ち上がった。
「十分休憩はとった、ほら、さっさと行くぞ」
フェティは何か微妙な表情を浮かべた。 それはそうだろう。 ずっと無言のまま
自問自答して顔を赤くした相手が、突然激しく頭を打ち振ったかと思うとつと立ち上がり
「行くぞ」と言い出したのだから。 それはちょっと不審なんじゃないかと……
駄目だ。 これ以上悩んではいけない。 そう思い頭を振り、振りながらああこれでは
さっきと同じだと歯噛みし、言い訳もできない事にじりじりしてついには地団駄を踏む。
くす、と背後から笑う声が聞こえた。 顔を真っ赤にしたままセラは歩を進めた。
一旦歩き出せば旅慣れた者同士だ、何も言わずとも道はわかる。
こんなに早くテラネを発つとは予定外だった為に、色々不足な物が気にかかった。
どこかで何とかしなければ、エンシャントに近くなる程調達は困難になる。
立ち寄るとすれば、と考える内、ふと馬鹿馬鹿しくなり、セラはふと右手に流れる
小川を足取りを緩めぬまま眺めた。 寄り添うようにずっとその先まで、同じ行く手を
目指して続いている。 みた所でどんな感慨がわく訳でもなかったが、何も考えずに
いる時間を増やすには役にたった。
わがままエルフは微かに息上がらせて後についてくる。 最初、いきなり差をつけ
られたのに怒り、「ちょっと、どうしてそんなに急ぐのよ!」と文句を言っていたが、
すぐに黙ってしまった。 勿論こちらが譲歩したのではない。 多分、向こうも
ド下等生物を早足で追い掛けているのだなどと認めたくないのだろう。
そう考え出すと何だか気になり、ふと後ろを向いてみようかと思い出す。
実際途中までは向いたのだが、迷ってやめた。 理由は……いや多分、そんなものは
ないのだ。 どうしてと誰かが云うので、どうしてだろうと考えなおす。
どこを見ても何も書かれてはいず、灰色にけぶる空の中、それらしい言葉を繋いで
それらしいものを作る。 が、出来上がりは大抵、どこか違和感をおぼえた。
少し前まではこんな事はなかった、と思う。 いや、あったのだろうか。
気付いていないだけだろうか。
ずっと無言のまま歩いていると、後ろの気配が手に取るように伝わってくる。
今、小さな石を蹴飛ばした。 何か口を開こうとして、ほんの一息足を止め、唾を
のみ込み、しかしこの重い空気に腰が引けたか言うのを止めて、また歩き出す。
そんな事が二度、三度と続いた後、逆にセラの方から沈黙を破った。
「何だ」
「別に」間髪入れずに返ってくる。 「どんな依頼か気になっただけよ」
「下らない仕事だ」口に出すと尚更そう思える。
「ロセンに手紙を配達するよう頼まれた」
「ほんと、くだらないわね」調子をあわせるように言った後、また沈黙が戻るのを
嫌がるようにフェティは言い足した。
「確か、霊峰トールの怪物退治とか、紺碧の洞窟のコロル石とかあったから、
気になっただけよ。 ……まあ、どれもくだらない面白くもない依頼だけど」
「確かに下らないな。 それに、そんなものはやらん」思ったより語調が強くなる。
「当分は配達だけだ」
「配達ですって? 手紙だの甲羅だのアタクシに持てというの」
「いや、甲羅は採取しに行かねばならんからその気はない。 まあ、手紙とか、
墨とかだな。 ロセンとテラネとをずっと往復している」
これには少々驚いたらしい。 露骨に天を仰ぐのが視界の端にみえている。
「あんたはそんな仕事、絶対やりたがらないと思ってたわ。 ロセンとテラネねえ」
「エンシャントを経由して、だ」同じ驚愕するならもう云ってしまえ、とばかり
セラは付け加えた。
「ロセンから西に進み、帝都を迂回してテラネに向かう。 テラネから南下し、
大門まで近付いたら左に折れる。 その繰り返しだ、それ以外は受けない」
最後の方はやや早口になった。 フェティはそれ以上聞かず、ただ感歎とも
呆れたともにわかに判別つかないような声で唸り、ふうと大息を吐く。
文句があるなら一人で行けばいい、と緊張し待ち構えていたセラはいささか
拍子抜けし、がこちらから切り出す訳にもいかず、少し待ったあと何となく
軽い失望を感じながらそのまま歩き続けた。
大分日が傾いて来た頃だった。 道筋に何か岩のようなものが転がっていた。
「そろそろね」
「ああ、そうだな」
上空からぎゃあぎゃあと啼く声がし、次いで巨大な鳥が空を黒く染める程
十数羽も集まり群れをなして飛び回っている。
下はとみれば、岩にみえた物体がぞろり、ぞろりと起き上がり獲物がくるのを
待っていた。
「全く、数がいればいいってものじゃなくてよ。 鬱陶しいこと」
頷こうとして、ふと何かがそれを引き止める。 ……長い黒髪が、風に揺れ、
微笑と共に哀しげな眼差しが脳裏に浮かんだ。
「セラ」穏やかな声。
「あなたは、わかってくれるわね」一一
「魔法は使うなよ」
「えっ、どうして」
「それは一一」振り返りきょとんと見開いた目にぶつかって言葉を失う。
何で、何でこんな時だけ素直に質問してくるんだ。 いつものように
こちらに十倍する文句が返ってきたら「うるさい」の一言で片が付くのに。
「いいから使うな」
これが通らなければもっと卑屈に頼むかもしれない。
お願いだから使わないで、くらいの勢いには最低でもなるだろうし、勢い余って
余計な言葉まで付け加えそうだ。
「ふうん」
フェティはひとりで考え込んでいたが、手にした槍でとん、と地面を軽くつき頷いた。
「わかったわ」
ごく簡単な答えながら、どこか嬉しそうな表情が混じっている。 そして、
何故か彼女はこの時、こちらの指示を待っていた。
「じゃ、地上の敵だけ倒せばいいのね」
「そうじゃない」
ゆっくりと近付いてくる怪物の群れに目をやり、その先を見通す。
「木を利用して逃げるんだ。 さあ行くぞ」
言うが早いか走り出す。 真っ先に翼をもった奴が急降下してきた。 影が
自分を中心に円を描くや横に跳び、生い茂る木の枝に勢いが削がれたのを背中に
聞きながらまたも土の道に戻る。
「ちょ、ちょっと」
呼び止める声に振り返る余裕はない。 今度は岩でできた巨大な腕もつ怪物が
わさわさ動き行く手を遮ろうとする。 その下をさらにかいくぐり、次は上に
駆けのぼり、まだ来る相手には月光を振り回し、怯んだ所で一気に抜き去る。
一瞬、敵がとぎれた。 振り返るのとガン、と鈍い打撃音が響くのが同時だった。
「これでいいのね」
槍を抱え直し、目だけ異様に血走らせた形相で、フェティは淡々と口をきく。
「ああ」
再び曲りくねる道の先に目をこらし、セラは呟いた。
「もう少しだ」
怪物はまだしつこく襲ってくる。 だが先程の勢いはもうなくなっている。
ここよりもう少し南に下ると、完全に途絶えてしまう筈だった。 それより先は
こんな有象無象の怪物など消し飛んでしまう強大な闇の気配に包まれている。
「怪物に魔法使っちゃだめって言ったわね」
「そうだ」
「じゃ、あれは?」
顎でしゃくって示した先に、木陰に若い男がいた。 立ち止まって覗き込むと
今にも泣き出さんばかりの顔で震えて後ずさる。
よくみれば、額に大きな角が生えていた。
「コーンスか」
男はその言葉を聞くと一瞬立ちすくみ、牛を思わせる丸い瞳を見開いた後、
足をもつれさせながら逃げ出した。
「コーンスは駄目だな。 セリューンの眷属だ」
「それ、ダルケニスじゃなかったかしら」
「猫屋敷の不細工な方も確かそうだぞ。 前に言っていた」
「親戚だらけで賑やかそうね。 あ、じゃあ、あれは?」
反対の茂みからディンガルの兵士らしき男が飛び出してくる。
「人間か」
人間はどうなんだろう。 特に何の眷属とも云われなかった気がする。
精霊の力とかそんなのは、むしろ浪費する側だ。
「人間は、……いいんじゃないか」
兵士はやにわ剣を振り上げ、斬り掛かってきた。
「あの喋る木もノトゥーンか何かが作ったように言っていたが、それこそ
親戚はそこら中にいる訳だしな。 精霊の力というのも、結局は」
「バカじゃないの、何ぼうっとしてんのよ!」
一一「そういえば、エルフは何かの眷属ではないのか」
「え、アタクシが? 高貴で優雅なエルフのアタクシが、そこらへんの
リルビーとかと近いっていうの」
昼間散々走らされたせいか、これでもかとばかり嫌味をきかせた答が返ってくる。
あれ程文句たらたらだった宿屋の決まりきった食事も、すごい勢いでたいらげていて、
空腹は最高の調味料とはまことに至言だ、と深く納得すると「それもお姉ちゃんの
お言葉、ってワケ?」とバイパーにでも出くわした様な目で見られた。
椅子に浅く腰掛け、頬杖をついた姿勢でフェティは目の前の酒杯を取り上げる。
あれだけドワーフが酒臭い、酒臭いと嫌っていたのに変わるものだ。 いや尤も、
そちらの方はそのままらしい。 言葉の端々からそれは何となく察せられた。
だがお得意のド下等生物が云々〜という高説はいつの間にか影をひそめている。
何を話すにも、相手がいてこそという訳だろう。 あのまま酒場にいて、居合わせた
冒険者たちに自慢話を聞かせていた方が本当は良かったんだ。 いくら知った顔に
出会ったからといって、こんな所までついて来る必要は相手にも、自分にもない。
暗く弱々しい灯がぼんやりと辺りを照らしている。 他に誰の姿もなかった。
冒険者達は皆エンシャントを避けるからだと主人は言い、思い出したように
付け加えた。
だから此処に来てくれるお客さんなんて本当に僅かなんだよ。 あんたたちに、
ノエルとかって若い子に、後何人か位かな。 ああ、セルもついこの前顔みせたから、
乙女の鏡に出るっていう化け物退治を頼んだんだけど、あれどうしたかね。
そのまま帰ってこないし、どこかまた旅に出たんだろうか。
主人は言うだけ言うと洗い終えた皿を持って奥へと引っ込んだ。
「……そうだ、エルフは妖精種族に入るのだったな」
「あんたね」フェティは呆れ顔で絶句する。 「気にならないわけ?」
何がだ、と言おうとして躊躇う。 不自然な間があいた。
問いの向かう先にはあの赤毛が佇んでいる。 何処にいてもすぐにわかる妙な奴だ。
思い出そうとする事すら避けてきた。
黙っていると相手も何か感じたのか、それ以上は追及してこず、話題を変えようと
でも思ったか、いつになく不安げに、ぽつりぽつりと語りだす。
「エルフは妖精種族ね。 そう、それならアタクシも聞いた事があってよ。
誰かが勝手に、表とか作ったりして、それでアタクシ達が誰の仲間だとか、
どこに属するとか言いだすの。 馬鹿馬鹿しいわ。
そんな風に分けて、何がわかるというのかしら。
アタクシはアタクシよ、高貴で優雅なエルフ。 それでよいのではなくて?」
だんだんと、独り言でも呟くようにかぼそくなり消えた所で、そうだな、と言おうと
したが声にはならなかった。 ゆっくり頷くと、フェティは一瞥してややほっとした
表情を浮かべ、それから急に顔を真っ赤にするとそっぽを向いた。
まったくおかしな成行きになったものだ。 すでに幾らかろれつの怪しくなって
いる相手に行く先はないのか訊ねると、少し黙りこみ、それからかなり調子よく
「ロセンよロセン、決まってるじゃないのー」と呵々大笑していた。
いかにも嘘っぽい響きだったが、わざわざ本当の所を知る必要もあるまい。
部屋に入りいつもの癖で窓に近い左側の寝台に荷物を置いた後、不意に気になり
もう一度袋を抱え上げた。
「どうして冒険者の宿ってどれもこれも寝台が狭いのかしら」
反対側の寝台にぽん、と荷を投げ出し深々と腰をおろす。
「まあいいけど、長居する訳でもないし。 あら、どうしたの?
アタクシの側にきたいのなら、そこの床の上に侍らせてあげてもよくてよ。
板の固さなら寝台とどちらでも大して変わりはしないわ」
よく喋る、とつい笑みを洩し今度こそ寝台に入る。
背を向け、壁の節目をぼんやり眺めていると、何か懐かしいものに自分が
捉えられてゆくのがよくわかった。 否定しようとしてもしきれない、
忘れられない感情が。 昼間は無理矢理どけて進んでも、夜は駄目だ。
考え事が、しやすくなる。 いつまでも深みにはまっていたくなる。
そう、いつも決まった位置を占めて、おどおどした表情を浮かべていた。
常に斜め後ろの寝台に膝を抱えて座り、じっとこちらを見つめていて。
そちらを向くと慌てて視線を避けるので、別に何か言いたい訳ではなく、
ただ見ていたいらしい事だけはわかった。
変な奴だ。 今そこにいる相手もそうだが。
「それにしても驚くわねー、まさかあんたが配達なんて。 うん、驚いた。
くだらないって言いつつ引き受けちゃって、怪物でたら逃げるだけ。
なーんか、誰か思い出しちゃったわ、今日」
そうか。 何か懐かしい気がすると思っていたが。
似ているのだ。 もっといえば、似てきたのだ。
「ちょっと、アタクシが酔ってるとか思ってないでしょーね? これくらい、
何でもなくてよ、全くのしらふよ、アタクシ」
しかしこんなにうるさく喋りちらす事もなかった様に思う。
「おい」
「何よ」
「床に落ちるなよ」
少しの沈黙があった後、予想通り相手は怒りだしたが、無視しているうちに
それもやんで静けさが戻ってきた。
疲れてはいたが、眠れる気はしなかった。 いや半分は眠っているのかも
しれなかった。 その点は昼も夜も同じで、ただ邪魔するものが多いかどうかの
違いだけだった。