天使で悪魔
聖アレッシアの石
一斉蜂起。
ブラックウッド団の最終目的らしい。
ただのジョークなのか、それとも現実が理解出来ていない狂人どもの戯言なのかは知らない。
たかだか100名程度の組織に過ぎないブラックウッド団。
魔力装備を大量に保有していようが兵力の差を覆せるほどではない。
何か策があるのか?
何か手があるのか?
まあいいさ。
とりあえずは戦士ギルドとしての責務を果たそう。普通のお仕事をこなすのだ。
さてさてお仕事お仕事♪
シェイディンハル。
闇の一党の聖域があったりその関係で以前色々と葛藤したりと、あまり好きではない街。妙に感傷的になってしまう。嫌な意味でね。
オレインの指示で私はこの街に来た。
戦士ギルドとしての仕事があるらしい。追放されたとはいえオレインは隠然たる権力を保持し続けている。
結局オレインがいてこそのギルドなのだ。
ヴィレナでは人は集めれても組織の維持は出来ない。かといってオレインでは人は集めれない。
二人三脚の組織なわけだ。
それが今崩れつつある。
戦士ギルドの内情も既に崩壊を始めている。
……崩壊を。
さて。
「降格されたらしいな」
「まあね」
戦士ギルドのシェイディンハル支部長バーズと接触。
人員が不足しているので本部に援軍を要請したツンデレオーク。卿も倣岸な葉緑素(?)全開のグリーンマン。
そのグリーンマンが声を潜める。
多少同情が込められてた。
「まあ、心配するな」
「……?」
「アンヴィルのアーザンとは既に話は付いている。お前が戦士ギルドにとって必要な人材だと見せ付ければいい。そうすれば復帰できる」
「……?」
「ちっ。相変わらず鈍いな。お前が実績を示せば俺達の権限で復帰させてやると言ってたんだ」
「それはどうも」
気遣いも出来るらしい。
相変わらずツンデレだなー。
「仕事は?」
感傷を振り切った。
私はここに仕事をしに来たのだ。
仕事の大切さは、まあ、理解出来るもののとっとと終わらせてコロールに戻りたい。オレインの手伝いもしなきゃならない。というかブラックウッド団
との抗争の方が私的には気になる。アリスを叩きのめした連中に報復するのが私の目的だ。
仕事は仕事でやるわ。
けれどとっとと終わらせたいのが心情だ。
「今回の任務はかなり重要な任務だ。心して聞けよ、クズ」
「はいな」
「ブルーマ聖堂から聖アレッシアの石が盗まれた」
「ブルーマかぁ」
雪深い北方都市だ。
亜熱帯の気候の南方都市レヤウィンも好きじゃないけど、ブルーマの方がもっと嫌いだ。
何故って?
寒いもん。
「不服か?」
「大いに」
「じゃあやめるか?」
「うん」
「……」
「冗談」
「お前はどうかは知らんが信仰心の厚い住人は多い。連中にとってあの石には大きな意味があるんだ。このままブルーマに飛び、聖堂のシロック
と接触しろ。そいつが依頼人だ。詳しい話しは奴に聞け。面倒は起こすな、迅速に行動しろ。……他に何か訓示は欲しいか?」
「はあ」
溜息。
訓示かよ今のが。
さすがはツンデレオーク、素直じゃないです。
「じゃあとっとと行けクズめ」
「はいはい」
口の利き方ってもんがあるでしょうに。
まあいいさ。
ちゃっちゃっと終わらせるとしよう。
北方都市ブルーマ。
雪深い街。
住人の大半がノルド。連中は寒さを感じない、そういう特性の種族。……私は異なりますけどねー。寒いの嫌いっ!
さて。
外にいるのはとてもじゃないけど耐えられないので目的の建物に向かう。
タロスを祀る聖堂だ。
九大神の1人タロスは九大神の末席に位置する神様で、元々は帝国の皇帝。死後神格化したらしい。
まあ何でもいいけどさ。
聖堂に入って司祭を探す。信者に聞くと中途半端ハゲらしい。
ああ、きっとあいつね(超偏見☆)。
声を掛ける。
「ハイ。戦士ギルドのデリバリーです☆」
……なんじゃそりゃ。
……。
自分で言ってて少し恥かしい二十歳のフィーちゃん。
お茶目がウリだけど限度もあるよなぁ。
今後気をつけよう。
さて。
「貴方がシロック?」
「はい。えっと、戦士ギルドの方ですよね? 貴女の手助けに感謝します」
律儀にも一礼。
丁寧な奴らしい。しかし長々と話をする気もない。
話を先に促すとしよう。
「それでどんな厄介が?」
「アレッシアの石が奪われた話は当然聞いていると思います」
「ええ」
「伝承によるとその石は聖女アレッシアの祝福を受けたもので、石が我らの元にある限り教会にはどんな災いも降り掛からないと言われています」
「へー」
災いが降りかからない、ね。
それどんな冗談?
現に災いは起きてるでしょうに。アレッシアの石盗難されました。
災いを遮断する力を持つ石も、石自体には祝福は及ばないらしい。災いの結果盗難されちゃうわけだし。
「それで?」
「その聖なる石が最近盗まれてしまったのです。石を奪われた夜に謎の一団が聖堂から出て行くのを目撃した信者がいます。おそらくは盗賊の
一団でしょう。盗賊の一団は数人、東に向ったそうですどうか聖アレッシアの石を取り戻してくださいっ!」
「分かりました」
極めて単純な任務。
奪還。
それが今回の目的らしい。至極簡単で単純よね。よくある任務だ。
私は微笑する。
「戦士ギルドにお任せを」
一路東に。
……。
……てか漠然と東にと言われても難しいのでは?
考えてみれば面倒だぞこれ。
逃げた当初は東かもしれないけど途中で北か南に折れる可能性もあるわけだ。そのまま東に向い続けたとしても遭遇する可能性は低い。
まあいいさ。
東に行く前提で考えよう。
東にある遺跡か洞穴、砦の類をシラミ潰しに探すとしよう。
「頑張れシャドウメア」
ヒヒーン☆
不死の愛馬は頑張るよと答える。……すいません適当です。さすがのフィーちゃんも馬語翻訳機能はありませんので。
馬に跨り東に向かう事一時間。
疲れすら知らない愛馬はまさに私の最高の相棒。
闇の一党ダークブラザーフッドには敵意しかないけど、家族と愛馬をくれた事には感謝してる。
さて。
「おっ」
ラッキー☆
きっと日頃の行いが良いからよね。挙動不審なカジートを発見。
日頃の行い?
……。
……まあ、何をして神様の受けがいいのかは不明だけどさ。
ともかく幸運。
「ハイ」
カジートに声を掛ける。
「……けっ。どうしようもない人生だよ」
「はっ?」
やさぐれてる。
見た感じヤケクソにも見えるし。何があったわけ?
「俺の名はクシャー。……ああ、いい。あんたは名乗らなくてもいい。どうせ聖堂からの追っ手なんだろ?」
「ええ」
人生ついている時はついているものらしい。
いきなり犯人発見。
「アレッシアの石はどこ?」
「あの忌々しい石は悪いが、ない。あれがそもそもの災厄の原因さ」
「はっ?」
なんじゃそりゃ。
どういう意味だ?
しかし少なくともこのカジートは嘘を付いている風には感じられない。つまり……どういう事だ?
「つまりどういう意味?」
「確かに俺達が盗んだ。今更隠すつもりはないさ。だが残ってるのは俺だけだ。聖堂を襲って石を盗み出したのは俺達だが、さらに俺達を襲って
石を奪った連中がいるんだ」
「連中って誰?」
「オーガの集団だ」
「オーガかぁ」
あの灰色の巨漢には綺麗なモノを収集する習性がある。
収集して何するかは不明。
貨幣概念とかないくせにお宝溜め込んでるわけだから意味不明。まあ冒険者には良い相手よね。倒せば財宝手に入るし。
「オーガはどこに行った?」
「喋れば俺は見逃してくれるか?」
「いいわよ。あんた個人には用ないし」
「あの連中は綺麗な光物には目がないらしい。皆殺られちまった。……ああ、ボスは石を追ってオーガの巣窟であるセドールに向ったな」
「セドール」
アイレイドの遺跡だ。
確か東にある遺跡のはずだ。ここから少し離れているけどシャドウメアの足なら問題はない。
「ボスって誰?」
「ボスの事は言わないでくれ。袂を分かったんだ。金の為に命を捨てる気は俺にはない」
「ふーん」
アレッシアの石を取り戻す為にオーガを追撃か。
それなりに腕に自信があるのだろう。
まあいいさ。
やり易くはある。
そのボスがオーガを蹴散らして石を奪還するのを待つのも手だ。そいつから取り上げれば楽だし。
「行ってもいいか?」
「ええ」
カジートは見逃した。
始末?
その必要はないわ。討伐は依頼されてないし。それに見逃したところで私に祟るわけじゃないし。……まっ、敵対するなら次は殺すけど。
分かれて東に向かう。
「行こうシャドウメア」
「ヒヒーン☆」
東へ。
セドール。
アイレイドの遺跡。
基本的にアイレイドの遺跡は魔術師ギルドの管轄にある。よっぽど珍しい、遺跡的に価値のある場所以外は立ち入りはフリー。
冒険者達の資金稼ぎの格好の穴場となってる。
私は魔術師ギルドの人間。
発見済みのアイレイドの遺跡の名前ぐらいは覚えてる。
私は優等生ですのでね。
ほほほー♪
「ここで待っててね」
「ヒヒーン☆」
愛馬にそう告げ、私は遺跡に潜る。
カジートと分かれて一時間。私はセドールの遺跡内に突入。距離的に片道ニ時間って距離かな、ブルーマから。
はぁ。単純に考えて帰りも二時間掛かるのかよ。
寒いの嫌いなのに。
憂鬱だ。
「とっとと終わらせるかな」
遺跡内には冷気はない。
外の冷気もここには及ばないものの、石造りのまるで生気の感じられない場所に潜ると別の冷気を感じる。
霊気?
まあ冷気だろうが霊気だろうが何でもいいけど、人が滞在するには憂鬱過ぎる。
無機質。それが適当な言葉かな。
かつてここに住んでいただろうアイレイドエルフ達の感覚意味不明。
コツン。
コツン。
コツン。
足音が響く。
アイレイドの遺跡にはウェルキンド石やヴァーラ石といった魔力の結晶の鉱石が数多にある。それが発光しているので明るいから松明要らず。
片手が松明で塞がれないので都合がいい。
片手塞がれると戦いづらい?
いいえ。
ただ単に手が疲れるから嫌なだけ。
正直な話ダース単位の敵が雇用と私は片手で対処出来る。
そして等しくデストロイ。
大抵の事は何でも簡単に出来る女を舐めるなよー。
「なかなかやるわねー」
私は広間に出て感嘆。
オーガの死体が転がっている。無数にね。
多分アレッシアの石の奪還に来た盗賊団のボスの仕業だろう。一刀の元に切り伏せられているオーガの死骸。
よっぽどの剣術の遣い手であり、それと同時に強力な魔力剣の持ち主なのだろう。
何故?
切り傷よ。
焼き切れてる。それもこの切り口から察するに炎系ではなく雷系の魔力剣と見た。
私の持つ雷の魔力剣と比べると格下だけど市販に出回ってるモノよりは性能が良い。……まあ、どれをとっても私の敵じゃないけど。
『……グルル……』
「はいはい」
倒し切れなかったオーガだろう。数匹、広間に顔を出す。……律儀な事で。お客のもてなしはオーガの礼儀らしい。
ボスの死体はない。
奥で死んでるのかまだ生きてて奮戦してるのか食べられた後か。
まあどれでもよろしい。
灰色の巨漢。
シロディールのモンスターとしては強い部類だ。ミノとどちらが強いかはよく魔術師ギルド内では議論の原因になるけど、私はオーガの方が強
いと思う。個体数が多いからだ。つまり繁殖率が高い。基本的に徒党を組んでるし。
ミノタウロスは両手の感覚が発達してるので武器を使うけど繁殖率は低く個体数は少ない。
そういう意味でオーガの方が強いと思う。
……。
……ああ。
繁殖率高いで補足。
オーガはオークとは混血が出来る。たまにオーガの女性を拉致して自分達の子供を生ませる事もあるし。
もっとも男性のオークは食料。オーク以外の女性も食料でしかない。
ま、まあミノタウロスは人間系も恋愛の対象らしいけどね。私何気に二度もミノタウロスに性的な意味で体を求められたし。
心の傷?
心の傷さ☆
うがああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ嫌な過去思い出しちまったーっ!
「ふーふーふー♪」
不敵な笑み。
色々と嫌な事を勝手に思い出したら腹が立って来た。
自分勝手?
ふふん。自分勝手上等っ!
お前らデストロイっ!
「煉獄っ!」
ドカァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァンっ!
現れたオーガ七匹を粉砕。
……って……。
「嘘っ!」
耐えやがったっ!
普通ならこれで一撃なのにっ!
どうやらここのオーガはそれなりに強力らしい。地域によっては能力は変動する。私が知ってるのは基本能力だ。この遺跡にいるオーガは結構
強力な部類らしい。だけどまあ2発は耐えないだろうさ。それにそれほど慌てる状況でもない。
「裁きの天雷っ!」
バチバチバチィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィっ!
煉獄よりも強力な魔法。
死に掛けのオーガどもには勿体無さ過ぎるほど強力な魔法だ。
今度こそ完全に粉砕。
「ふふん」
胸を張り勝ち誇る。
オーガは私のトラウマだ。昔非常食として飼われてたからね。そのオーガを嬲り殺しする現在。
「人間ってどうなるか分からないわね」
オーガを粉砕して奥に。
奥にも死骸が転がっていた。どうやら盗賊のボスはあの広間で敗北して食われたわけではないようだ。
死骸は既に合計で10を越えてる。
盗賊のボス、なかなかやる。
「私には遠く及ばないけどねー」
鼻歌交じりで進む。
それにしてもここ最近私は働き過ぎだ。ブラックウッド団が一段楽したらしばらく休もう。
ま、まあ、スキングラードのローズソーン邸に戻ったら戻ったでアントワネッタ・マリーとの執拗な戦いが待ってるだけだけどさ。
何気に私ってばアブノーマルの烙印を押されてる気がする。
……ちくしょう。
「はあ」
溜息。
累々と転がるオーガの死体。
これを見てると昔の時分を思い出して嫌な感じになる。オーガの非常食として飼われてた頃の記憶だ。一緒に飼われてたエンツェは既に死んだ。
昔の事はあまり良い思い出ではない。
過去が私を祟る。
「はあ」
溜息。
あの頃の罰ゲームは何の罰だったのか不明。
生まれた事が罰?
ちっ。
だとしたら九大神を粉砕してやるわ。
生まれた事を罰だと定義するならね。もしもそれが罪だったなら偉大なるお力で私の存在自体を最初から抹消しろ九大神め。
だから神様なんて信じないし嫌い。
大嫌い。
「おっ。行き止まりか」
目の前には部屋が無数に並ぶだけ。
網状の扉。
この網は鉄ではない。まず粉砕出来ない高密度の代物で材料は不明。
「そこのあんた」
「ん?」
「助けてくれないか?」
「……?」
ああ。いたいた。
声の主は扉の1つに閉じ込められていた。扉の向こうには狭い奥行き。他のも同じだ。牢屋みたいなもんか。
ここは牢獄の区画?
だとしたらどこかで間違えたわね、道。
私が探していたのは宝物庫の区画。そこに過去の遺産と一緒にアレッシアの石があるはず。オーガは一箇所に光物を置いておく習性がある
からだ。もしかしたら宝物庫ではなく別の場所かもしれないけど、宝の山が出来てるのは間違いない。
ここにはそれがない。
つまり外れだ。
「うげっ!」
「ん?」
牢屋に収容されているのは男。薄暗いので顔は判別出来ないけど声は室内が明るかろうが暗かろうが関係ない。
男の声だ。
その男の声が震える。
「んー」
目を凝らす。
……身知った奴だった。
「クロード・マリック?」
「勘弁してくれよまたお前か、フィッツガルド・エメラルダ」
以前アイレイド遺産の収集家ウンバカノに雇われていたトレジャーハンターだ。
まあトレジャーハンター以外にも色々とやましい事してたみたいだけど。
「何してんのここで?」
「それは……」
言葉を濁す。
ははあん。そういう事か。こいつ盗賊団のボスだな?
「泥棒さんなわけよね?」
「人は傷付けてない」
「傷付けたわ」
「誰を?」
「私の心。……貴方の事、まっとうな人だと信じてたのに……」
「とっとと出してくれ」
無視かよ。
……ちくしょう。
「何してんのここで?」
「アレッシアの石の奪還だ」
「それ奇遇。私もよ」
「ここにはどうして……そうかクシャーだな? あのお喋りカジートめ。しかしまあそれで俺は助かるわけか。出してくれ」
「お断りします」
「……」
「冗談」
「……」
「ついてるわね」
「ああ。まったくだ」
「オーガにとってあんたはただの餌。多分今夜のご飯よね。じゃ、潔くね♪」
「待て待て待て待て待てっ!」
「何よ?」
「助けてくれたらアレッシアの石を返してやるぞ」
「……何?」
ペンダントを見せるクロード。
あれがアレッシアの石?
「どうしてこれを?」
「オーガから取り戻した。しかし背後から殴られてここに放り込まれた。連中は石を取り戻されたのは気づいてないようだな」
「ふーん。でもどうして返すわけ?」
「取引の材料になるからだ」
「なるほど」
石を返す→ここから釈放、そんな感じかな。
それでも……。
「納得出来ない。何故返す?」
「でっち上げだからさ」
「でっち上げ?」
「こいつはただの石ころだ。宝石を散りばめた、作り物だ。聖堂にしてみれば信者向けのでっち上げだ。もしかしたら実は随分昔に本物は盗まれ
たのかもしれん。盗難犯が模造品と摩り替えたのかもしれん。少なくともこれはレプリカだ」
「ふーん。あんたを信じる根拠は?」
こいつ自身が模造品を用意していた可能性もある。
模造品を私に渡して釈放してもらう→後で本物を高額で売却の可能性もあるのだ。
クロードはニヤリと笑う。
「信じる根拠は、あんたの善意さ。あんたの善意に従ってくれよ」
「やれやれ」
そう言われると弱い。
それにクロードは悪党だけど根っからの悪党ではないのも確かだ。少なくとも人情味はある。……まあ、少なくとも。
マラーダでは襲われたけど結局返り討ちにしたし特に意趣はない。私はね。
ネナラタでは共闘した仲だ。
「これを恩義に感じるなら、いつか私への恩義を返してよ?」
「分かったよ嬢ちゃん」
「見つけてくださったのですねっ! どうお礼を言ったらいいか……その、月並みですがお力添えに感謝します。貴女に神の祝福を」
ブルーマ聖堂では大感謝。
シロックは大喜び。
あの石はクロードが用意した偽物ではないらしい。まあ何でもいいけどさ。本人がそれで納得してるなら。
クロード・マリックとは遺跡で別れた。
あの男が今後私の人生にどう絡むかは不明。
まあいいさ。
私はブルーマを後にしてシェイディンハルに。
バーズに報告だ。
そのバーズの言葉。
ツンデレらしく天邪鬼な評価。
「よくやったっ! 本当に良い仕事をしてくれたな。……次に与える任務が最後の任務なのが残念だぜ、クズ野郎」
「最後?」
「ブラックウッド団に仕事を全部持って行かれて不景気でな」
「ふーん」
「受ける用意はあるだろうな、愚図」
「もちろん」