天使で悪魔
哀しげな番兵
事の始まりは簡単だった。
グレイランドで体よく利用された私は街道を北上、全都市の中で最も治安の悪いと言われているブラヴィルに到着した。
途中熊に襲われたりにこやかな顔でカジートに金をせびられたりしたがそこは『愛と勇気と友情♪』で切り抜け無事にブラヴィルに到着。
日はまだ高く街道の巡察を続けてもよかったけど今日はこれで閉店という事で。
まずした事は鎧を脱ぐ事。
この恰好だと重いし街を歩くには厳つすぎる。
以前から懇意にしているブラヴィル支部の魔術師ギルドに鎧を置かせてもらった。
「あらフィーね。珍しいお客さんね」
「ハイ、グッド・エイ。相変わらず読書好きね。何を読んでるの?」
「アルゴニアンの侍女」
……エロ本かよ。
トカゲの支部長に今夜はここに泊まるわ、また後でゆっくり話しましょう恋人と何か進展あったのー、とか話をした後に宿屋兼酒場に入り遅めの昼食
を取っていたら、その今回の余計なお節介に繋がる話を聞いたわけで。
日は高いのにカウンターで酒を酌み交わす三人組。
私は暖炉の側のテーブルに座り鹿肉のソテーとチーズ、パンを食べながらその三人の話を聞いていた。
「あの奇妙な幽霊の身の上はよく知らないね」
「何だ知らないのか? 昔船が難破して随分酷い死に方をしたらしいぜ」
「別に何するでもなくニベイ湾を眺めている。かといって近づく気にもなれないしなぁ。気味悪いよ、ほんと」
哀しき番兵とか言われるここブラヴィルでは比較的よく知られている怪談の類らしい。
ほっとけばよかった。
そうすりゃ面倒な事はないけど……性格かなぁ。
ついつい三人の側に行って、噂の続きを聞いてみた。
鹿肉を頬張りゆっくりと食べてから立ち上がり酔っ払い達に近づいた。
「ハイ」
「なんだいお嬢ちゃん」
「実はさっきから興味深くで聞いてたけど結局はその番兵は何者なの?」
「悪いが俺達はそれ以上知らないんだよ。……おいギルゴンドリン」
「エール酒の追加かい?」
「いやこのお嬢さんがあの幽霊の事を聞きたいんだとよ。こいつに聞きなよ。物知りだぜ」
「ありがと」
ハイエルフの店長は情報通らしい。
「で、その幽霊は何者なの?」
「生きている頃は水兵だったらしいね。どこから来て、どうしてそんなに哀しげなのかは誰も知らないんだ」
「死んで哀しいんじゃないの?」
「死者の事を観光名物のように語るのは本位じゃないんだが……彼はもう二十年も彷徨い続けているんだよ。毎晩8時になるとニベイ湾の沿岸に
ある野営地に現れるんだ。今じゃ皆それが普通の光景だと思ってるぐらいさ」
「……嫌な普通な光景ね」
「あの幽霊は誰かに危害を加える事はない。けれど皆極力近づかないようにしているんだ」
「危害を……加えない?」
敵意を持たない亡霊か。
亡霊なんか珍しくもないけど敵意のないというのは少し興味がある。
「あんた随分と興味があるようだけどどうしてだい?」
「怖いもの見たさ、かな」
「地図持ってるかい? 印を入れといてあげるよ」
「ありがと」
興味はある。
死者は徘徊する、死霊は彷徨う。タムリエルにおいて死者は眠るだけの者ではない。
だがこの哀しき番兵とやらは毛色が違うようだ。
基本、幽霊に人格などない。
何の記憶も持たず、そして側にいるものは誰であろうと殺戮する。例えそこにいるのが肉親であっても。
人生に悔いのない奴は霊にならない。神の御手に委ねられる。つまり、天に召されるのだ。
しかし憎しみ全開で死んでいったら連中はそうはいかない。
その憎しみにより現世に留まり、ただ殺意の衝動のみで暴れまわる。
だがこの霊は……。
「未練はあるけど憎しみじゃない。……ふふふ、興味深いわね」
攻撃的でないという事は人格がまだ存在しているという事。
自分を抑えられる幽霊。
今のところ書物以外にはお目に掛かった事はない。根は魔術師だからね、そういうのは実体験で触れ合ってみたいものなのさ。
それに一応、冒険者の端くれだし。
今日は帝都兵は非番ということでよろしくー。
で、こうなると。
出現を見逃さないようにと三時間も前から現れるとされるポイントに体育座りして待っている私って間抜け?
いや最近じゃこういうのはお茶目?
鎧はギルドに預けっぱなし。
銀の剣だけは腰に差してある。まあ問題ないわね。私にとって魔法が最大の武器だから。
「しっかしギルゴンドリンにおやつでも注文して来ればよかった」
日が傾き少し冷えてきた。
喉も渇いたし、少し小腹も空いてきた。そろそろ時間だろうか?
「……来た」
ボゥ。
中年、だろうか。輪郭さえ朧で顔の判別は出来ないけど……その幽霊は現れた。
少なくとも男である事は間違いない。
「ハイ」
……。
何するでもない。ただ、立っている。
近づき手を伸ばしてみる。彼には触れる事さえ出来ない。
「……すごい」
思わず感嘆な声が漏れる。
ダンジョンなどにいる亡霊、あれは憎しみや悲しみといった負の感情の塊。つまり魂の残滓。残りカス。
自我もなく魂の欠片でしかない不完全な存在だから滅する事が出来る。
しかしここにいるのは完全な魂の存在だ。
私から触れる事は叶わない。
反面、向こうからも干渉できない……これは……。
「……なんて美しい存在……」
究極の存在。
ただ自分のなしえなかった事をなす為だけにそこにいる。そこには恨みも悲しみも憎しみもない。
ただ一途な使命感から魂がタムリエルに留まり、存在しているのだ。
この世界に死霊術師という存在がいる。
連中の最大の目的は死の超越した存在『リッチ』になる事。要は肉体を捨て魂だけの存在になるわけだが根本が違う。
リッチは所詮怪物でしかない。
高級な亡霊、でしかない風情でしかないが番兵は気高い魂の存在。
改めて声を掛ける。番兵はただニベイ湾を見つめているものの……。
「ハイ。良い夜ね」
「……私の声をかけようとしたのは貴女が初めてです」
返答があった。
なるほど。今までブラヴィルの者は遠巻きにするだけで声を掛けようとする者はいなかった。
だから二十年も彷徨っていたのだ。
随分と健気ねぇ。
もっと早く誰かが声を掛け、悩みを聞いてあげれば成仏できたのだろうか?
「私はフッツガルド=エメラルダ。でも簡単にフィーでいいわ」
「私はかつてグランサム・ブレイクリーと呼ばれていた者です。豹の口を捜してください」
「いきなり頼み事? ふふふ、せっかちな男は嫌われるぞ」
「……」
「……いきなりシカトかい」
「私を解放してください」
「はあ? 解放?」
「……」
「もしもーし?」
「……」
しかし番兵……いやグランサムはこれ以上会話に付き合う事なくただニベイ湾を眺めている。
哀しそうな顔で。
ふぅ。
また巻き込まれた……しかし今回は私の興味本位から出た事だ。
向こうも押し付けたつもりはないだろう。誰も話し掛けなかった彼に声を掛けた、その時点で契約完了と取るのも無理はない。
彼はただ切実なのだ。
自分では出来ない事を、それでも諦める事も出来ずにこの世界に留まり続けて来たのだ。
「まっ、力になりましょうか」
徹夜は慣れてる。
でも……。
「豹の口って何?」
再びブラヴィルに舞い戻り、ギルゴンドリンに話を聞きに戻った。
職業柄、彼は噂に精通しているらしい。
しかし期待は空振り。
「そんな名前は聞いた事がないなぁ。申し訳ないけどまったく覚えがない」
「はっ?」
「知らないよ」
静かに首を振った。
酒場は相変わらず喧騒に包まれている。コップとコップがぶつかる音や音程外れの歌、言い争う声。
ビールやエール酒を酌み交わす愛すべき酔っ払い達。
今が一番繁盛し、一番忙しい時間帯。
あまりギルゴンドリンの邪魔は出来ない。聞く事を聞いて退散しよう。
「じゃあ豹の口は?」
「ああ、それなら分かるよ。この辺の者なら誰でも知ってるよ」
「まさか動物の豹じゃないでしょうね? 私噛まれるの嫌よ」
「ははは違うよ。豹の口って言うのはパンサー川がニベイ湾に注ぎこむ場所にある三角州の事さ」
「三角州? でもそれがなんで豹の口なわけ?」
「名前の由来はあの辺りの水面に突き出した尖った岩から来ているんだ。牙のように見えるからね。パンサーは豹だし牙のような河口だ。……ははは、
これで所以は分かるだろ」
「ま、まあね」
……駄洒落かよ。
「船はまずあそこを避けて通るね。霧なんか出て視界の悪い時はなおさらだ。あの岩にまともにぶつかれば船なんて粉々だよ」
「それ、どこにあるか教えてくれない? 今夜ここに私は宿を取ってもいいんだけどなぁ」
「ははは。喜んでその条件で手を打つよ。地図を貸してごらん、印を入れてあげるから」
「ありがと」
でここが豹の口、と。
目の前に川が流れている、そして岩。まあ……牙……に見えるかなぁ?
一番最初に『豹の口』と命名した奴はよっぽど想像力豊かな詩人のようだ。
難破した船はすぐ見つかった。
船底に大きな穴が開いている。
上からは無理ね。
扉にマストが突き刺さっていては入れそうもない。
「よっと」
看板から飛び降りる。
座礁したのは分かるけど、完全に粉砕はされていない。内部は比較的まともそうだ。
エマ・メイ号。
ズタズタとなった船体の一部にそう書かれたプレートがあった。
「エマちゃんね」
松明に火を点ける。内部は暗いだろうから必需品だ。大きな穴から入るしか手はないけど……大丈夫かなぁ。
この穴の位置からすると野生動物が入り込んでいても不思議じゃない。
それにグランサム・ブレイクリーは解放してほしいと言った。
一体何から?
それは……。
「うわわわわわわわわーっ!」
赤い光がその場に倒れた私の頭の上を通り過ぎる。やべ、松明落としたっ!
コロコロと薄汚れ、傾いた船内を転がる松明の明かりが攻撃の主を不気味に照らす。
それは姿なき者。
いや違う。まるで背景に溶け込むような『それら』はかつて人であった者達。
そこらの雑魚死霊術師が召喚できる類の霊ではない。怨念の類だっ!
二体いる。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」
ブォン、ブォン。
生きている私が妬ましいのか赤い二条の光を放つ怨霊達。
ちっ。
何とかかわすもののこう狭いと回避するのも楽じゃない。
あの連中が放っているのは攻撃系の力じゃない。当たっても死にはしない。どんな効果かぐらい魔術師たる私が見れば一目瞭然。
あれはドレイン系の魔法だ。
おそらく筋力が一時的に奪われる。何発か当たれば私は立つ事も出来ないほどに力を奪われ嬲り殺される。
かといって広範囲魔法は使えない。
探索するには問題ないが私の放つ攻撃系の魔法に耐えれるほどエマちゃんは頑丈じゃない。いつもならそれでもいい。
哀しき番兵の依頼が何であるか分かるまではそんな迂闊な事はできない。
「くそっ!」
タタタタタタタタ、バタン。
走り手近な船室に閉じこもる。……があまり意味はない。
どうするどうするどうする?
「ちくしょう。こんな事なら単体系魔法も覚えるべきだったぁ」
亡霊系は普通の武器では斬れない。
帝都軍支給の銀製のこの剣なら斬れるけど……あの連中に迫り斬り伏せるにはここは狭すぎる。
透明化の魔法で近づくか?
……あー、いや待て待て待て……。
「ふぅ」
あんまり使いたくなかったけど仕方がない。背に腹は変えられない。
「スケルトンっ!」
扉の向こう側に歩く骸骨を召喚した。魔術師ギルドご禁制の死霊術。……出来れば使いたくなかった。
あんまり良い思い出でもないし。
コツコツコツ。
スケルトンは骨の足で一直線に怨霊達に向っていった、はずだ。私が召喚したのはもっとも低レベルなスケルトンで高位の怨霊にはダメージを与える
事は出来ない。そもそも新米戦士にすら一撃で屠られる。
もちろんそれでいい。
バタン。
扉を開けて私は一直線に走る。怨霊達は赤い光をスケルトンに一生懸命叩きつけていた。
スケルトンは囮っ!
「はあっ!」
「ルオオオオオオオオオオオオオオオオオオっ!」
銀の剣が凪ぐ。怨霊を一体撃破っ!
「炎帝(えんてい)っ!」
残りの怨霊の体にゼロ距離魔法を叩き込んだ。私の掌から放たれた炎の波動を受けて炎上。
持続十秒の炎は怨霊を焼き尽くした。
「はい、お終い」
剣を収める前に敵を探しているスケルトンを斬り飛ばしてから、刃を元に戻した。
死霊術師の叔母から叩き込まれたこの魔法、あまり使いたくはなかった。あの叔母、私をゾンビの材料にしようとしたし。まあ、逃げたけどさ。
トラウマの能力ですなぁ。
……。
……まあいい。
さてさて。いやな思い出カミングアウトは置いといてー。
船内を漁る。
さっきのはこの船の船員なのだろうけど……よくもまああそこまで憎悪の塊として現世に留まったもんだ。
おや?
「航海日誌かしら?」
ペラペラとめくってみる。
『レヤウィンで少し追加の物資を積み込んだ際、ラフトン船長は帝都へ向けて舵を北に取った』
『我々は明朝まで待つように言ったが船長は空模様を無視して予定通りに出航した。この決定は船長のものという事をここに明記しておく』
船員の記録か。
書かれている年数は第三紀421年だから……大体20年前か。哀しき番兵の出没とほぼ一致する。
続きを読むとしよう。
『すぐに嵐に見舞われた。我々の言った通り大嵐だ』
『船長は入り江を見つけたと叫んだ。そこに入り嵐をやり過ごそうと言った。その時同僚のゲイブルが私に合図を送り我々は船長に襲い掛かった。
ゲイブルは船長の座を狙っていたしこの状況はまたとない状況だった』
『愚かなブレイカリーだけは船長の味方をしたが他の全員は皆船長を縛り上げていた。我々は船を乗っ取り、船長と愚かなブレイカリーを船底の倉庫
に閉じ込めた。新船長となったゲイブルは船を入り江に向けさせた。そこでしばらく退避させる事に……』
でエマちゃんはドカーンと座礁して全員死亡なわけね。
だけど。
だけどそうなると解放して欲しいってどういう意味?
しかも座礁して死んだにしてはあそこまで怨念に満ちている怨霊になる意味が分からない。
「うーん」
さて、どうしよう?
さらに下に行く階段がある。おそくはグランサムが閉じ込められている場所だろう。
覗き込むと……。
ブォン、ブォン。
うおっ!
「危ないな何すんだこの野郎ぉーっ!」
バチバチバチィィィィィィィィィィィっ!
裁きの天雷を……あわわわわ、しまったーっ!
闇で見えないものの下の階層にいる怨霊からの攻撃なのだろう。いきなり攻撃されたから思わず反撃したけど……。
「ま、まあいっかぁ」
解放とはこの船にしがみ付く怨霊退治、なのたろうから。……多分ね。
「ほいっと」
松明を一本下の階層に投げる。光が……淡い光ではあるが、下の階層を照らしている。
覗き込む。
何もいないように見える。左手でハシゴを一本一本掴みながら慎重に降りる一方で、右手はいつでも抜刀出来る体勢。
下の階層に到着。
そこに、いた。
スラリと剣を抜く。こいつが元凶か。おそらく、こいつが怨念達の大元。
「コノ船ハ俺ノ物ダっ! 俺ガ船長ダっ! 俺ノ許可ナク下船ハサセネェェェェェェェェェェっ!」
禍々しく光る剣を手にした、怨霊の親玉だ。
こいつが他の船員達を死してなおこの地に縛っていたのは間違いない。グランサム同様に怨霊達もこいつに縛られてい
たと見て間違いない。つまりこいつさえ倒せば……。
「あんたさえ消せば船員は船を下りて天に召す事が出来るわけよねぇ?」
「ココハ俺の船、俺ノ物ダアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアっ!」
「怨霊は成仏だけ考えればいいのよ」
滑るように、まぁ宙に浮いてるわけだから滑るように動くのは当然だけど、怨霊親玉は私との間合いを詰める。
不用意っ!
「炎帝ぃぃぃぃぃぃぃっ!」
ゴオオオオオオオオオオオオオオオっ!
燃え盛る。しかしまだまだっ!
「成仏なんてさせないわよ。魂そのものを壊してやるわっ! 妄執よっ!」
「全テハ俺ノモノダアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアっ!」
「煉獄っ! 魂すらも焼きつくされるがいいわ」
「嫌ダアアアアアアアアアアアアアアアア船ヲ失イタクナイ俺ノ船ナンダアアアアアっ!」
「……しがみ付くんじゃないわよ。永遠なんてないのよ。……物も命も。仲間も……親も」
壮絶な断末魔を残し滅びる亡霊には私はそう、吐き捨てた。
……私は執着する事に意味のない事を知っている、もの。
ボゥ。
人影が浮かぶ。グランサムだ。
静かな微笑を浮かべているように見える。あの怨霊が全てを縛っていた。
死してなお船に拘り船長として君臨し続けていた亡霊船長は始末した。そして解放される。
グランサムも。
他の船員達も。そしてエマちゃんもようやく眠れるのだ。
二十年、か。長かっただろうに。
「グランサム。これで満足?」
「いつの日か不屈の闘志を持った者が私の悲痛な叫びを聞き遂げてくれると信じていた。貴女は自らの危険を顧みずその身を投じ他人でしかない
私の為に戦ってくれました」
「そんな高尚なものじゃないわ」
「貴女のその尊い行いは報われるべきです。この牢獄の床を見てください。貴女への御礼の品がありますから」
「いらないわ。この船の全ては貴方達海の勇者の墓標よ」
「……本当にありがとう。さようなら……」
「ええ。じゃあね。……次に会う時は私がそっちに行った時ね」
消えた。満足そうに微笑んで。
反乱を起こした者達。
あくまで節義を護ったグランサム。
どちらかが悪いという事はないと思う。少なくともどちらもそれが最善だと思い行動したのだ。
自分達の選んだ行動の方が、生き延びるのに最善だと信じて。
私が口を出し、断定する事じゃあない。
しかしあの怨霊の親玉は何者だったのだろう?
あくまで船にしがみ付き船員達をも縛っていたのは船長のラフトンか反乱の首謀者ゲイブルか。
まあどちらでもいい。
「ようやく航海が終わって楽になれたわね。……グランサム」
そしてお疲れ様。
ふぁぁぁぁぁ。眠い。
今夜は約束通りギルゴンドリンの宿に宿泊する事にしよう。宿代浮かす為に魔術師ギルドに泊まろうと思ってたんだけどなぁ。
異種族の恋愛をしている支部長グッド・エイに進展具合聞こうと思ってたのに。
まっ、明日でもいっか。
「ふぁぁぁぁぁぁ。あー、ねむ」
考えるのはいいや。
今はただ暖かいベッドの中でゆっくりと泥のように眠りたいだけだ。