天使で悪魔






成長





  時が経てば人は成長する。





  翁の一派。
  レリックドーン。
  わざわざ同日にアルケイン大学に襲撃。結果は明白でしたけどね。撃退成功。翁は戦死、一派は全滅、襲撃して来たレリックドーンも全滅した。
  もちろん完全勝利とは言い難い。
  アルケイン大学にも被害は出た。バトルマージの死者が続出した。負傷者はさらに多い。
  レリックドーンの本隊の居所が判明したもののバトルマージの遠征は不可能。
  ならばどうする?
  簡単だ。
  私が自らで向けばいい。
  目的地はブルワークの砦。そこにレリックドーンは集結し、その砦に眠るとされる聖戦士の盾の発掘作業をしているらしい。
  決着を付けてやる。
  決着を。




  天気は上々。
  太陽は輝き、暑くなく寒くなくまったりと過ごすにはまさに最適で快適。そんなうららかな午後。
  私は愛馬とともに街道を進む。

  「一緒に旅は久し振りよね、シャドウメア」
  愛馬の首筋を撫でる。
  久々の乗馬。
  ……。
  ……ほんと。シャドウメア登場も本気で久々よね。今までシャドウメアの設定と存在を忘れてたかも(汗)
  私はシャドウメアに乗り街道を進む。
  旅程はまず帝都を北上、そこから街道沿いに南東に進む。ブルワーク砦に向かうにはこの旅程が、まあ、妥当だろう。
  もちろんブルワーク砦にストレートに向かうつもりはない。
  レヤウィンに向かう。
  そこを拠点として向かった方がいいだろう。
  それにベルを待たなきゃいけないし。
  至門院残党のベルファレスは私に能力に惚れこんだ(本人談)らしく喜んで犬馬の労を取ってくれている。レリックドーンがブルワーク砦に集結中
  というのも彼からの情報だし、砦襲撃する手勢を集めるべく奔走しているらしい。
  まあ、軍資金を都合したのはラミナスだけど。
  一応私は殴り込みにいく予定なので完全武装です。
  魔力で強化した鉄の鎧に身を包み、背にはパラケルススの魔剣。護身用&不意打ちの用にナイフを隠し持ち、魔力増幅&魔法耐性強化の為
  の指輪と首飾りもしてる。絶好調だしまさに完全な喧嘩支度ですな。
  あとは殴り込みの頭数か。
  ベルは都合出来たのかなぁ?
  「軍師、か」
  シャドウメアに揺られながら私は呟く。
  ベルは軍師を自称している。
  正確には通称として呼ばれている、と言った方が適切なのかもしれない。
  通称<聡明の軍師>。
  よく分からん奴だけど私に肩入れしてくれてる。もしかしたら敵なのかもしれない、そうなのかもしれないけど仮にそうだとしても近くに置くしかないのは
  確かだ。何しろベルの雇い主はカラーニャらしいからね。万が一にも欺いているのであれば必ず私の寝首を掻こうとするだろう。
  ともかく。
  ともかくカラーニャと依然繋がっている場合を考慮すると側に置くしかないわけだ。
  まあ、人柄は悪くないからそんなことはないだろうけど。
  少なくとも性格的にはそこまで陰険ではなさそう。
  演じているだけなのかもしれないけど陽気すぎるほどに陽気。
  「別にいいけどさ」
  例え敵であっても、ね。
  私にだって人を見る目はある。その上でベルを信じている。つまり例え裏切られても自己責任の範疇。
  別に裏切られたって後悔はしない。
  その場合は私に見る目がないだけだ。

  ひひーん。

  「ん?」
  突然いなないてシャドウメアが止まった。
  すぐに意味が分かった。
  私は愛馬から降りる。
  武器は抜かない。
  腕組み。
  街道を塞ぐ形で数名が立ち塞がっていた。数名、正確には7名。
  カジート、カジート、カジート、ノルドにブレトン、アルゴニアン、アルゴニアン、もう1人は……覆面したローブの奴は顔が見えないから種族は分からない。
  その覆面が中央にいた。
  こいつが頭目かな?
  手下と思われる面々は皮鎧、そして手にはそれぞれ斧だの剣だのを持っている。典型的な賊の武装(超偏見)
  覆面は薄汚れたローブを纏っているけど物腰から察すると魔術師ではなさそうだ。少なくとも腰に差している長剣の使い方は知っていそうだ。
  「何か御用?」
  「女」
  覆面が言う。
  「何?」
  「有り金全部と馬を置いていけ。……それと、まあ、ちょっと皆で楽しいこととかもしようか」
  「……懐かしい……」
  「何だって?」
  「懐かしいって言ったのよ。……最近登場する奴らは全部ボスキャラ級だったから久々に雑魚雑魚な追い剥ぎ会えて感動してるってわけ」
  「雑魚だとぉーっ!」
  あっ。
  お怒りになりました。
  それにしても懐かしいな、色々と。帝都軍巡察隊としてこの道を通ったなぁ。物語序盤参照っ!
  あの時と比べると私は格段に強くなった。
  別人と思えるぐらいにね。
  当時だってこんな追い剥ぎは雑魚でしたので、今の私には雑魚雑魚でしかなく。
  「俺様を誰だと思ってるっ!」
  「知らない」
  「何故顔を隠しているのか、その理由は簡単だ。俺様の首には高額の賞金が……っ!」
  「煉獄」

  ドカァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァンっ!

  「行こう、シャドウメア」
  ポンと愛馬の首を叩いて私は飛び乗る。
  ウェルダンになった連中など、どうでもいい。とっととレヤウィンに向かうとしよう。
  一路レヤウィンに。





  南方都市レヤウィン。
  ブラックマーシュ地方、ヴァレンウッド地方に隣接するシロディール最南端の都市。
  気候風土は亜熱帯に近く東に広がる密林はさらにその傾向が強い。
  発展度は特に高くもなければ低くもない。
  この都市の他都市にはない異色な面がある。それは他種族がせめぎ合う都市という事だ。
  アルゴニアンがもっとも多く、次いでカジート、ダンマーとなる。
  人口比率は亜人が圧倒的に多い。
  もっともここレヤウィンで有名なのは気候風土でもなければ他種族のせめぎ合うという事でもない。
  それは動乱の多さ。
  深緑旅団戦争。
  ブラックウッド団の反乱未遂。
  2つの動乱で都市の半分が荒廃し、治安は悪化。
  また、この動乱の際にレヤウィン領主であるマリアス・カロ伯爵の無能さが内外に露呈された。
  深緑旅団戦争の際には真っ先に都市の外に逃亡、ブラックウッド団事件の際には衛兵隊長シーリア・ドラニコスに責任をなすりつけて罷免した事もあり
  伯爵の権威などなく荒廃している(注釈→伯爵がブラックウッド団の後見人となっていた際に衛兵隊長が積極的に仲介したという濡れ衣を着せた)。
  現在衛兵の大半は仕事をボイコット状態、らしい。
  結局のところ衛兵隊長シーリア・ドラニコスのカリスマ性で纏まっていた都市だった、ということだ。
  衛兵隊長が解任された以上、働く意欲がないらしい。
  ……。
  ……まあ、どのような状況であれ給料貰う以上は仕事は仕事なので、ボイコットするのはどうかと思うけど。
  そのような状況なので治安維持はもっぱら戦士ギルドが受け持ってる。
  その戦士ギルドもブラックウッド団事件で弱体化しており、またレヤウィンがブラックウッド団の本拠地だっただけあり他の都市よりも支部のメンバーは
  少ない。新人教育を経てない新米をすぐには送ることも出来ず戦士ギルドもレヤウィンの現状には手を焼いている。
  ただ戦士ギルドも魔術師ギルドも私の組織。
  なのでバトルマージの一隊をレヤウィンに送り込む(バトルマージは大学駐留が基本で支部には駐留していない)ことにより戦士ギルドの支援をしている
  状況。このような状況でレヤウィンの治安は維持されている。
  私がレヤウィンに入った時、既に夜になっていた。




  「あー、良いお湯だった」
  旅装を解いて私はお風呂を満喫。
  白いバスローブで体を包んで宿屋の一室にいる。最上の部屋なので浴室付き。
  あっ、3階です。
  既に時間が遅いので戦士ギルドにも魔術師ギルドにも泊まらずに宿屋に泊まっている。
  まあ、時間帯以前に私が行くことにより業務に差支えがあっても困るしね。一応、どちらの組織にとっても私は総帥なわけだし。
  シャドウメアは厩舎に預けた。
  さてさて、何しようかな。
  一応ベルが軍資金で仕立て上げた援軍がここに来ることになっている。合流してからブルワーク砦を攻めることになっている。
  つまり合流出来るまでここで待ち。
  「ふぅ」
  今夜はもう寝ようかなぁ。
  それとも勉強でもするべきかな。
  銀色対策の魔法開発、まだ出来てない。
  ……。
  ……そりゃそうだ(汗)
  私がどんだけ天才でも1日で開発は出来ない。銀色対策開発しようと思った瞬間に翁一派の襲撃、レリックドーンの攻撃、そしてその事後処理。
  ずっと魔法の開発は無理でした。
  もちろん開発以前に発動の基本理論から始めなきゃいけないけど。
  大学を出る際にラミナスが言っていたシェイディンハルを中心とする連続猟奇殺人の件は、まあ、私が関与するまでもないだろ。
  既にラミナスに対処の指示を出しているし、彼が戦士ギルドにも通達するわけだから問題ない。
  シェイディンハル都市軍のギャラス隊長も動いているだろう、地元の事件だし。
  わざわざ私が介入するまでもない。
  どっちにしろ手口は分かってる、これは<人魚の涙>が関係している。手口が分かっている以上、ラミナスの出す指示は徹底している。人魚の涙は
  魔道法に引っかかる、つまり魔術師絡みの事件。
  魔術師には魔術師を。
  それが常識。
  手口が分かってる、それはつまり対処法も分かっているという事だ。魔道法がある以上、捜査の主導権はこちらにある。
  都市軍も協力してくれるはず。
  何故?
  それが法律だから。
  ラミナスなら抜かりなく処理するだろう。
  わざわざ私が出張るまでもない。
  それよりも勉強しなきゃね。
  魔法開発が急務。
  「少しはやっとこうかな」

  もふ。

  ベッドに倒れこんで私は呟く。
  銀色は強い。
  ただし対策魔法さえ出来たら奴の絶対的な防御力なんか怖くない。
  ハーマンの台詞から銀色の防御力の秘密は既に私にもおぼろげながら分かっている。
  ならば。
  「少し徹夜するかな」
  銀色との再戦の為に。
  私は立ち上がって夜食のルームサービスを頼むべく部屋の外に出た。