天使で悪魔






黒魔術師ハーマン





  ついに巡り合った。
  2人の天才が。

  この時代における稀代の魔術師2人の邂逅。






  白骨のザギヴ関係で無駄足を食った私。
  奴が封印されていた(取り殺されていたとも言う)生きたアイレイドの遺跡から脱出し、シロディールに帰還した私の前に1人の少女が立ち塞がる。
  ダンマーだ。
  ダンマーの可愛い女の子。
  緑色のローブを着込んでいるその少女は可憐さこそ宿していたものの瞳は冷たく冴えていた。
  そして私は知る。
  その少女の底の知らない実力を。
  直感で感じ取る。
  「子供と思ったら灰になるよ。私は黒魔術師ハーマン、よろしく」
  「ふぅん。それで?」
  「今から殺しますのでよろしく」
  「はっ?」
  「Fireっ!」
  少女は、ハーマンは叫ぶ。
  攻撃が……あれ……?
  可視できない。
  魔力の波動は確かに揺らいでいる、そしてそれは私に向ってくる。だけど可視できない。
  ……。
  ……いや、これ……まずいっ!
  「はあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」
  「へぇ?」

  ギィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィンっ!

  私は咄嗟に魔力障壁を張った。
  全力で。
  その瞬間、私の魔力障壁がハーマンの魔力の干渉を遮断。
  「ふぅ」
  額の汗を腕で拭う。
  何だ、今の攻撃?
  まったく見えなかった。
  不可視。
  ただし殺意と威力を秘めた、不可視の攻撃だった。
  「私の攻撃防ぐなんてなかなかやるじゃん」
  「そりゃどうも」
  「だけど次はもっと強くいくけど問題ないかな? あんたきっと死ぬよ。問題は?」
  「私の問題を聞く気あるの?」
  「ない」
  「じゃあ無駄な問答よね」
  「そうね」
  「私からも行くわよ」
  私の手に炎の球が宿る。
  「煉獄っ!」
  「弾けて散れ」
  「……っ!」

  ドカァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァンっ!

  「くっ!」
  私の手の中で突然煉獄が爆発した。
  魔法の法則上、自分の魔法では傷付かない。……たまに例外もあるけど。
  傷付かない理屈として自分の放つ攻撃魔法の波動と自分が纏う波動とが一致している為、中和される。まあ、理屈はどうでもいいか。
  ともかく。
  ともかく私の手の中で爆発した。
  爆炎が視界を塞ぐ。
  来るっ!
  「ハーマンロケットっ!」
  「はっ?」

  ガンっ!

  爆炎を突破してハーマンと名乗る少女は飛び蹴りして来た。
  こ、この攻撃方法はさすがに予想できなかった。
  まさか飛び蹴りとはね。
  まともに受けて体勢を後ろに崩す私。それとは逆に地面に着地し、体勢を素早く安定させて私の腹部に強烈な拳を叩きこんでくる。
  「ハーマン千年殺しっ!」
  「……っ!」
  技名の意味は不明だけど腹部に強烈な一撃が入る。
  鎧?
  鎧は着てます。
  ただしハーマンの拳が直撃した瞬間、鎧がどろっと溶けた。その部分だけ融解して拳がまともに腹部に入る。
  いったーいっ!
  腹部は溶けていない。
  どうやら鎧だけを溶かしたらしい。
  もしくは金属しか溶かす事ができないのかもしれない。
  ……。
  ……だけどこいつ何者だろう?
  今の鎧融解は破壊魔法?
  そうかもしれない。
  武器や防具を破壊する魔法は確かに存在するけど……今のは系統が少々異なる気がする。あんなの見たことがない。
  少女は冷たく呟く。
  「トドメしてあげる」
  「……っ!」
  思わず私はぞくりとする。
  この少女の言葉には凄みがある。そして直感的に分かる、この少女には容赦などないということを。
  「ふふふ」
  私は笑う。
  少女は少し怪訝そうな顔をしたけど私はそれに口で答える代わりに両手で答えた。
  つまり?
  つまり突き飛ばした。
  幼女相手でも私は手加減しません。容赦しない、そういう意味ではこの少女とは考えが一致しているのかもしれない。
  ま、まあ、この少女相手だからこういうことをするんですけどね。
  この少女は強い。
  強過ぎる。
  少なくとも礼儀や相手の年齢を考えていたら勝てない。
  妙な魔法に対抗するには礼儀は捨てよう。
  そのとき私は気付く。
  これ外法?
  そういえば黒魔術師とか言ってたな、最初に。確か外法使いと黒魔術師は表裏一体だったと思う。
  基本的に呼び方が違うだけで2つは同じ。
  外法使いは欲得で術を行使し、黒魔術師は知識の探求の為に術を学ぶ。
  まあいい。
  相手が黒魔術師だろうが外法使いだろうが処方箋は1つだけ。
  排除のみ。
  ……。
  ……子供相手に大人気ない?
  そうかもしれない。
  少なくとも傍目にはそう映るだろう。しかし魔道を極めた者の端くれとしてハーマンと名乗る少女の底の知れない天才性は私にも分かる。
  手加減は出来ない。
  むしろ手加減して欲しい(懇願)。
  外法の類は一般的に広まっている魔法とは一線を画す代物で対処に困る。
  「裁きの天雷っ!」
  「雷? だったらこれぐらいしてよ」

  
バヂバチバチィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィっ!
  
  「……っ!」
  ハーマンの手から幾条もの雷撃が放たれる。
  私の魔法は相殺された。
  もちろんそれだけでは終わらない。
  相殺されて消滅しなかった残りの幾条もの雷撃が私に直撃。そのまま後ろに吹っ飛ぶ。魔法そのものの威力は私には効かないけど衝撃で引っくり返った。
  倒れる瞬間に見る、ハーマンが消えたのを。
  空間転移っ!
  魔力の揺らめきが倒れる私の上に……まずいっ!
  そして現れる。
  倒れる私に馬乗りになる恰好で。
  だが……。
  「あまーいっ!」
  「ちょっ!」
  私は倒れる瞬間に馬乗りになる体勢で現れたハーマンを投げ飛ばす。
  トモエ投げの要領。
  ぴょーんと飛んでいくハーマン。
  即座に私は立ち上がって魔法のモーションに入る。何の魔法を放つかはまだ決めてないけど、これで決めるっ!
  「我ハーマン、大地に干渉するっ!」
  「うひゃっ!」

  ずぼっ!

  地面に体半分まで吸い込まれる。
  な、なんだぁ?
  慌てて抜け出す。
  特に地面の中で麻痺状態というわけでないのですぐに抜け出せたけど、その間にハーマンも無事に着地していた。
  やり辛い。
  やり辛い相手だ。
  魔法の系統がまったく別物だから読み辛いしトリッキーすぎる。
  ハーマンは呟く。
  「なかなかやるじゃん」
  「そりゃどうも」
  「ああ。そういえば名前聞いてなかったね。特別に名乗らせてあげる。感謝してよ? 黒魔術師ハーマンに名乗れるんだからね」
  「そりゃどうも」
  どういう教育受けてんだこの餓鬼っ!
  関係者の顔を見てみたいものだ。
  「フィッツガルド・エメラルダよ」
  「フィッツガルド・エメラルダ?」
  「そう」
  「……へー? あんたが常勝の戦姫? これは好都合ね。私、あんたを探してたの。正確にはあんたが奪ったものにね」
  「奪ったもの?」
  「虫の王マニマルコが保有していた禁断の不死魔道書ネクロノミコンよ」
  「禁断の不死……」
  こいつの狙いはそれ?
  だけど問題がある。
  ……。
  ……禁断の不死魔道書って何?(汗)
  知らんってそんなもんっ!
  持ってないし。
  ハーマンは続ける。
  「シロディールに外法使いや黒魔術師が集結している理由、それは伝説の死霊術師にして歴史上最強の存在マニマルコの遺産目当て」
  「へぇ?」
  興味深い話ではある。
  だけどまったく知りません、そんな遺産。
  もちろん言っても信じてもらえないだろう。それに問題はこいつに理解してもらうことではなく、私が持っていると信じて乗り込んできた連中の対処だ。
  突如集結してきた理由。
  私っすか?(滝汗)
  面倒だなぁ。
  遺跡に潜っている間にハーマンがこの場に集結してきた白骨のザギヴの派閥を一掃してくれたみたいだけど厄介なのが残ってる。
  それは……。

  「神は示した。運命は必ず存在すると。……その小娘が、そうか? 翁よ」
  「そうです、銀色殿」
  「こいつの眼には興味ないけど楽しみ楽しみっ!」

  妙な三人組が現れた。
  銀の鎧に身を包んだアルゴ……いや、ドラゴニアンか、あれは。全身を銀の鎧に身を包んだ銀色のドラゴニアンがいる。武器は所持していない。無手だ。
  翁と呼ばれる老人と、嬉々として楽しんでいる青年。
  何者だ?
  だけどある程度の推測は出来る。
  老人は<銀色殿>と言った。
  おそらくあのドラゴニアンこそがシルヴァ。最強と謳われる外法使いだ。ハーマンは舌打ちした。幸いにも連中の仲間ではないらしい。
  さらに……。

  「……厄介なのを相手にしているな。手助けは必要か……?」

  黄泉っ!
  虫の王マニマルコの手下の生き残りが登場する。
  こっちは私の仲間?
  分からない。
  少なくとも協力の意思はあるのかもしれない。
  銀色はわざわざ名乗ろうとはしなかった。
  ただ芝居気のある動きで両手を大きく広げて天を仰ぎながら叫ぶ。
  「本日神はこの場に虫の王の遺産を巡る戦いを開催されたっ! さあ子羊たちよ、互いの欲望の為に争おうではないかっ!」


  銀色襲来っ!