天使で悪魔
運命と伏線と人間模様
繋がっていく。
人と人とは見えない運命の糸……いや、意図によって繋がっていく。
それは人を神の御手と呼ぶ。
だけど本当はそうではない。
それは錯覚でしかないのだ。結局のところ人と人とを繋ぐのはただ一つ。
人だけだ。
「陣形を組みなおせっ! 決して敵を近付けるなっ!」
叫ぶ。
フローミルの氷杖を手にした男性は必死になって叫ぶ。
彼の名はラミナス・ボラス。
現在この軍勢を指揮している人物だ。
軍勢の構成と内訳、それは魔術師ギルドのバトルマージが120、魔術師が100、戦士ギルドの精鋭が100、シャイア財団の私兵(実際は名だたる
傭兵団の連合)が50で構成されている。さらにハシルドア伯爵率いる精鋭の親衛隊30が合流。
合計で400。
数としては多いほうだろう。
だがそれに対する黒蟲教団の軍勢は死霊術師300。人間の人数では連合軍が勝っているものの、アンデッドの軍然が推定3000。
圧倒的な兵力差。
現在は魔法や火矢で迎撃しているものの次第にアンデッド軍団は近付きつつある。
さらに。
さらに倒しても倒しても山彦の洞穴がある山の麓に陣取る死霊術師の軍団が新たなアンデッドを召喚、差し向けてくる。連合軍が打ち倒すアンデッド
の数よりも召喚される数のほうが多い。つまり倒しても倒してもキリがない、そしていずれは数で押されて全滅だろう。
「放てーっ!」
フローミルの氷杖を鼓舞の為に振るいながら懸命にラミナスは叫ぶ。
その都度、様々な魔法が飛び、火矢が飛ぶ。
確実にアンデッドは倒れていく。
だがその数は底なしに近い。
「……」
ぎりりり。
歯軋りしながらラミナスはアンデッドの軍団を睨みつける。
数で押せば簡単に勝てたはずだ。
それにも拘らず死霊術師の大軍団の歩調はゆっくり。さらに言うのであれば死霊術師大軍団の主力たる死霊術師300名はまったく動いていない。
これはつまり……。
「遊びか」
ラミナスは思った。
虫の王マニマルコにとってこれはただの遊戯なのだと思った。
そう。
つまり奴にしてみれば魔術師ギルドの掻き集めた連合軍など潰そうと思えば簡単に潰せるし皆殺しにしようと思えば簡単に出来るのだ。おそらく虫の王単独
で殺せると思っているのだろう。軍団も戦力も奴にとっては暇潰しなのだろう。
「……そういう事か」
おそらくそう間違いではないはず。
フィッツガルド・エメラルダを誘い込むようにまったく動かなかったのもその為。
怖くもなんともないのだ。
虫の王マニマルコにとって、何百年も生きている奴にとってこの世の全てはただのお遊びなのかもしれない。
「……」
だが奴の遊びに付き合う必要はない。
新任アークメイジは、ラミナスにとって実の妹ともいえるフィッツガルド・エメラルダは虫の王を討ち取るべく行動を開始した。そこに遊戯など欠片も存在しない。
ラミナスは知っている。
彼女にとって父親であるハンニバル・トレイブンの死を悲しむ間もなく様々な雑務を処理し、魔術師ギルドを運営し、懸命にこなしている事を。
本当は誰よりも悲しみたい彼女はその感情を殺して頑張り抜いている。
ならばそれに付き合うのが筋だろう。
兄として。
そして彼女の部下として、補佐役として、盟友として。
「全軍崩れるな、敵を寄せ付けるな、我らのアークメイジの志を無駄にするなっ! 攻撃続行っ!」
『おうっ!』
白い雪原の大地に雪が舞い散る。
陣形が崩れたのはそれから間もなくだった。アンデッド軍団が再接近してきた……わけではない。
軍団そのものは突然停止した。
前面にスケルトンの部隊が突出、盾を構えて停止した。
ラミナスはそれを突撃の準備だと想定した。その想定そのものはあながち誤りではない、戦士ギルドを指揮しているモドリン・オレインもそう見ていた。
だがそれが最大の誤算となる。
そう。
相手が人間ならその案が妥当だろう。
だが対峙している相手はそもそも人ではない、損害すら気にしないアンデッドの軍団が陣形を整える必要もない。数で押せば、接近戦にさえ持ち込
めばアンデッドの軍団は無条件で勝利するだろう。それだけ数に圧倒的な差がある。その差の前では技量など関係ない。
なのに軍団は停止した。
そこで彼らは怪しむべきだった。
結局のところラミナスは補佐役には適していたものの、オレインは戦士としては適していたものの、指揮官ではなかった。
少なくとも大局を見る指揮官ではなかった。
「はあっ!」
ラミナスはフローミルの氷杖を振るって応戦する。
陣形は完全に崩壊していた。
敵はダイレクトに攻めて来たのだ。
ゴーストの群れだ。
空間を飛ぶ能力を有しているゴーストの群れがダイレクトに陣形のど真ん中に出現した。能力そのものはそう高くはないものの陣形は乱れ、指揮は乱れる。
さらに。
「愚かなるトレイブンの支配はついに終わったっ! そして今、汝らの終わりの時ぞっ!」
「くっ!」
虫の隠者、出現。
山彦の洞穴内部。最下層。
私は膝を付いて相手を睨みつけている。邪悪な笑みを浮かべて立っている虫の王マニマルコを睨みつけている。
「はあはあ」
「その程度か。まあ、お前はよく戦ったよ。少なくともガレリオンには劣るがね」
あれから。
あれから何度殺したか分からない。
虫の王の耐久度そのものは実際に大した事がないものの3000回死なないと滅しないのは……正直滅茶苦茶だろうがーっ!
殺しても死なない。
くっそ。
こんなに厄介だとは思ってなかった。
「外ではお前の大切な仲間達がバタバタと倒れているぞ。余に逆らった者は絶望を植え付けて殺す必要がある。そしてそういう魂が実に美味なのだっ!」
「語ってるんじゃないわよっ!」
グググググ。
全身に力を込めて立ち上がる。
ダメージそのものより疲れの方が大きい。
「知りたくはないか?」
「何を?」
「お前は感じたはずだ。結界をな」
「結界? ああ」
この山を登った時に感じた。
気配が完全に読めなくなる結界。敵が隣にいても、ちょっかいを仕掛けてこない限りは分からないって感じだったかな。
「あの結界が何?」
「ここを中心に、つまり余の足元を中心に、余の意志と同時に結界が弾けるのだ」
「はっ?」
「そして雪原を駆け巡る。少なくともお前達の軍勢を完全に飲み込むほどの広がりを見せるだろう。……意味は分かるかな?」
「……」
こいつ何を言っている?
こいつ何を……。
「あんたっ! まさか全部生贄として取り込むつもりっ!」
「そのつもりだが?」
「最初からそのつもりだったわけっ!」
「余はそのつもりだよ。お前達は実に良く踊ってくれた。トレイブンがその背にある黒魂石に自らの魂を閉じ込めるの読んでいた、余はここにいながら
トレイブンの魂を得る事が出来るという寸法だ。魔術師ギルドをここまで連れてきたのも想定内だ。蟻地獄に自ら入り込んだようなものだな」
「くっ!」
「分かるかな? 最初からお前達の葛藤は、お前達の魂の味付けでしかないのだよ。そして機は熟した。お前達を余の中に取り込む時が来た。もっとも今
少しだけ味付けは必要だがね。外のお友達はもう少し追い込んでやる必要はある。そしてお前自身もだよ。どうだ? 絶望を感じるか?」
「あんたの部下はどうするのよっ!」
結界の中にいれば巻き込まれるはずだ。
まさか死霊術師の手下だけ素通りする術など存在しないはず。
「部下?」
「そうよっ!」
「何をそんなに熱くなる。矛盾だな、敵を心配する必要などあるまい? それに余に部下などいない。必要すらない。目的が叶えば不必要なだけだよ」
「……見捨てるつもりなのね?」
「何か問題が? 君の敵だ、何もそんなに怒る事はないだろう?」
「……」
そう。
怒る必要などない。
死霊術師は胸くその悪い連中であり敵。機会さえあれば私が皆殺しにしてやる。なのに気分が悪いのは……そうね、感性の問題だろう。
仲間殺しは好きではない。
それが例え敵の所業であったとしてもだ。
……。
……まあ、本気で機会さえあれば全滅させますけどね、私が。
死霊術師は人類の敵ですから。
虫の王は続ける。
「はっきり言って余に仲間など不必要なのだよ。崇める者は多いが、それは崇める者の都合だ。余は既に従者など不必要なまでの高みにいるのだ。
部下など不必要なのだよ。四大弟子も、まあ、洒落だな。余の力の一部を授けたが、お遊びでしかないのだよ」
「シロディールには何しに?」
「何でも皇帝が死んだとか。後継者もいないらしいな。権力の座の空白は混乱を招く。そうではないかな?」
「皇帝になるつもり?」
ファルカーもそんなような事を言ってたな、確か。
虫の王の目的は皇帝なる事?
私は思わず失笑した。
「あはは」
「何がおかしい?」
「伝説の死霊術師の祖、虫の王、ガレリオンと唯一互角に渡り合った魔術師……そいつの行く末が皇帝の座とはね。随分と俗な夢なのね」
「全てを得た者は最後に権力を欲するものだよ」
「それはそれは高尚な事で」
「余は今までいくつもの地で同じ事をしてきた。敵を自ら作り、配下を募り、ぶつけ合わせ、そして最後に全てを取り込んだ。この地は最期の地。そうとも、
今回の戦いで必要な魂を得れば余は神へと昇華する。ついに完全なる不死の存在と貸すのだよ。必要な分の魂が今日揃うのだっ!」
「神ね」
呟く。
奴は満足げに笑うものの私は鼻でそれを笑った。不服そうに顔を歪める虫の王。どうやら自尊心を傷付けたらしい。
「何がおかしい?」
「やっぱりあんたは俗っぽいわ。限界ね、それがあんたの」
「何だと?」
「神になる、ね。言っておくけど侵略戦争してたタイバー・セプティムは死後に神格化してタロスとなった、八大神は九大神となった。私に言わせると神様
なんてそんなものなのよ。随分と可愛らしいロマンを追いかけているのね、虫の王マニマルコ」
「貴様っ!」
バッ。
手を私に向けて突き出す。
「……っ!」
身構える。
だけど何も起こらない。虫の王は不敵に笑っているだけ。
何なの?
「余の力を侮らぬ方がよいぞ、小娘。念動の力で黒魂石を砕くなど造作もないのだからな」
「黒魂……駄目っ!」
振り返る。
念動の力で遠隔で持ち上げた黒魂石が宙に浮かんでいた。音もなくナップから奴は黒魂石を抜き取っていた。虫の王は手のひらを握る。
瞬間っ!
ギィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィンっ!
黒魂石が砕けた。
あそこにはお父さんの魂が入ってたのにっ!
「マニマルコっ!」
「怒る必要はない。封じられていた魂を解放しただけだ。もっともこの洞穴は魂は逃げられないようにしてあるがね。後でお仲間共々余が親愛なる
ハンニバル・トレイブンの魂も取り込んでくれよう。お前の魂もな。余は寛大であろう? 慈悲深きであろう?」
「裁きの……っ!」
「無益」
コン。
ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンっ!
杖で地面を小突くと、礫となって周囲を襲う。
飛来する礫が私を打ち倒す。
「何も悲しむ事などないぞっ! 怒る必要も、憤る必要もないっ! お前達はただ絶望に魂を染め上げて余の糧となればよいのだっ! それが義務だっ!」
ガンっ!
迫り来る虫の隠者をハシルドア伯爵が殴り倒す。当初こそ押されていた連合軍ではあったものの次第に劣勢を弾き返しつつある。
奇襲して来たのは所詮はゴーストの群れ。
歴戦の傭兵と戦士、そして魔術を操る者達の敵ではなかった。
虫の隠者、つまりはリッチも数体いた。能力の面ではこの場にいる大半の者を凌駕するものの数では劣っている。圧倒的に少ない。
強力な拳闘士……いや、強力な魔術師のハシルドア伯爵。
歴戦の戦士モドリン・オレイン。
ラミナス・ボラスもまた強力な魔術師。
ゴーストの群れの中に混じっていた虫の隠者3体は彼らは倒した。リッチは強いが絶対数が少ない。そもそもそんなに簡単にリッチになれるのであれば
死霊術師は今頃は帝都を制圧していただろう。絶対数が少ない以上、そして絶対に無敵というわけではない以上、確実に倒していけば問題はない。
ゴーストの群れとそれを仕切った虫の隠者を撃破。
だがその時、アンデッド軍団は再び進軍を開始した。
「ラミナス殿、あれを見てみろっ!」
「……そうか。指揮は連中がしてるのか」
山彦の洞穴がある山の山頂付近で黒い旗を振っている集団が眼に飛び込んでくる。あそこから麓にいる死霊術師の軍団に指示、そして死霊術師の軍団
が連合軍に迫り来るアンデッド軍団を操作しているのだろう。
もちろんそれが分かってもこの状況は変えられない。
「陣形を整えろっ!」
ラミナスが叫ぶ。
ざわざわ。
その時、陣営がざわめく。
敵に臆したわけではない。突然ここに騎兵が現れたのだ。数にして100名。黄色い鎧に身を包んでいた。
「ブルーマ都市軍だな」
スキングラード伯が呟いた。
そう。
黄色い鎧はブルーマ都市軍の鎧。鎧姿の騎兵が2名こちらに向かってくる。ラミナス、オレイン、ハシルドア伯爵の3人の首脳の前に来ると2人は
下馬した。当然その間にもアンデッド群は近付いているし迎撃も続いている。
「ジェイナス・ハシルドア伯爵とお見受けしますが」
「そうだが?」
騎兵の2人は最敬礼した。声を発しているのはノルドの衛兵、そのわずか後ろでは衛兵が直立不動で立っている。その衛兵はカリウス隊長。何度か
フィッツガルド・エメラルダの助けを借りた事がある衛兵隊長。そしてノルドの隊長の名は……。
「自分はブルーマ都市軍の総隊長バードであります」
「そうか。それで何しにここに?」
「我らが遊びに来たと思われますか? ブルーマを素通りとは伯爵もお人が悪い。我らの主であるナリナ・カーヴェイン女伯爵のご指示により我々は
あなた方の指揮下に入る為に参りました。戦いこそ我らの誉れ。是非とも陣に加えていただきたく参上しました。それに」
「それに?」
「カリウスは、いえ、ブルーマは魔術師ギルドの新任アークメイジ殿に借りがありましてな。今度は我らが力になる番です」
「バード隊長」
ハシルドア伯爵は彼の眼を見る。
それから静かに言った。
「この借りはいつか必ず返すとスキングラード伯として約束しよう」
さらに。
ざわざわ。
「おいおい今度は何だよっ! ……んん? バーズか?」
「来たぜ、我が友オレイン」
オークが数十名の戦士を引き連れてやってくる。戦士ギルドのシェイディンハル支部長のバーズが引き入れるだけの戦士を率いて援軍としてやってきた。
そして同道しているのはシェイディンハル都市軍。数は80名。
その軍を引率していると男は叫ぶ。
「シェイディンハル都市軍の隊長ギャラスでありますっ! フィッツガルド・エメラルダに対しての恩義の為、参上しましたっ!」
陣容は一気に膨れ上がる。
600に近い動員兵力となった。後方に陣取りまったく動かない帝都軍の部隊を加えると……。
「おいおいラミナス殿、帝都軍が襲われてるぞ」
「襲われてる?」
ラミナスは眉を潜めて後方を見る。
数体のリッチが帝都軍相手に暴れているのが遠目でも分かった。帝都軍は接近戦に特化した武力集団に過ぎない。魔術に長けたリッチ相手に対しての
対抗手段はないに等しい。成す術もなく陣形は掻き乱され、圧倒され、蹂躙されている。旗が先ほどから振られていた。
「バード隊長、あの旗の意味は?」
「援軍要請ですな。どうされますか?」
「自分は魔術師ギルド所属のラミナス・ボラス。……軍属ではないので旗の意味が分からない。迫り来る敵軍を迎え撃つまでです」
「実に結構ですなっ! 自分は一足先に騎兵部隊を率いて敵軍に突撃しますっ!」
「シェイディンハルの騎兵部隊もお供しましょうか、バード隊長っ!」
活気に満ちる陣営。
豪快にモドリン・オレインは笑った。
「がっははははははははっ! ではその動きに我ら戦士ギルドも連動するとしようっ! バーズ、行くぞっ!」
「任せろっ!」
繋がっている。
繋がっているとラミナスは思った。そしてそれを繋げたのはフィッツガルド・エメラルダ。彼女を中心に纏まっていく。
「マスターもお喜びだろう」
魔術師ギルドを率いる偉大な存在に成る事をマスター・トレイブンは望んでいた。
ただ問題もある。
フィッツガルド・エメラルダは魔術師ギルドだけでは終わらない気がしてきた。ラミナスは苦笑した。
「貴方の娘は大きくなり過ぎますね、マスター」
その時、麓に陣取っていた死霊術師の軍団が動き出した。
全面対決。
フローミルの氷杖を振りかざしてラミナスは力の限り叫んだ。
「突っ込むぞ、進めぇーっ!」
『おうっ!』
山頂付近から旗が振られていた。死霊術師の軍団に号令する旗だ。
旗を振っているのはオーク。
「ハッピーハッピーハンティングっ!」
ゴグロンだ。
さらに闇の一党のシェイディンハル聖域の面々がいる。
この場にいた死霊術師やアンデッド達は一掃された。隠密で敵に接近、一掃するのは彼ら彼女らのお家芸とも言える。簡単に制圧出来た。
「あーあ、退屈」
アントワネッタ・マリーは虫の隠者の死体の上に座って欠伸を噛み殺す。
久方振りの暗殺。
だけどまるで物足りない。
「それで? ヴィンセンテ、あたし達はどうするの?」
「傍観ですよ」
「えー?」
死霊術師の軍団に突撃指示を出したのはヴィンセンテ。総力戦にする事で一気に展開を引っくり返そうとした上での判断だ。このままでは魔術師ギルド
の軍団は数に押されて敗北する。それを察した上で死霊術師の軍団に偽報を送った。双方突撃させて決着を付けさせる為に。
あのまま死霊術師が動かなかった場合、おそらく死霊術師が勝っただろう。
それを覆す為の行動。
「何で傍観するの、ヴィンセンテ? フィーは戦ってるのに。ぶーぶーっ!」
「虫の王が相手だからです」
「だから?」
「私は50年前に奴に会った事があります。奴の前では全ての者が下僕となる。……不用意に手助けに行けば我々は妹の敵となる。それは避けたい」
「まー、フィーなら大丈夫だから心配してないけどね」
「ほう。その根拠は何ですか?」
「あたしの自慢の妹だもん。大丈夫だって」
両軍、激突。
戦いは佳境に向かって進んでいく。